二 OECD事業への参加・協力

 経済協力開発機構(OECD)は、昭和三十五年十二月に、先進諸国間の経済協力を目的として設立された組織であるが、貿易・経済政策など狭義の問題に限らず関連する教育、科学技術、労働、社会政策などその他の広範な分野についても、主として社会経済的観点から取り上げて国際的な協力・比較研究・情報交換等の活動を活発に行ってきた。我が国は、三十九年四月にこれに加盟した。

 教育の分野では、主として政策・課題の比較研究や情報交換が行われてきたが、文部省はOECDの各種事業について、各種国際会議への専門家の派遣、日本での会議の開催、共同研究事業等への参加、事務局への職員の派遣などにより、積極的に参加・協力してきた。OECDの主要事業の一つに各国の政策レビューがあり、教育、科学技術、社会科学などを含む種々の分野について加盟各国の政策レビューが行われているが、四十五年には、OECDによる我が国の教育政策レビュー(加盟国教育政策の調査・研究及び審議)が行われ、国内的にも高い関心を集めた。また、五十一年には、我が国の社会科学政策レビューも行われている。

 OECDの教育関係組織としては、教育政策について情報交換等を主たる任務とする「教育委員会」と、教育課題の比較研究活動等を主たる任務とする「教育研究革新センター(CERI)」が設けられているが、これらの定例会合が毎年開催されるほか、加盟各国の教育政策に共通する中長期的な課題について審議・検討するため、教育委員会閣僚レベル会合(教育大臣会議)が数年に一度開催されている。

 教育大臣会議は、これまでに三回開催されており、教育の拡大期における「機会均等」の問題(五十三年)、拡大期後に問題となった「教育の質」(五十九年)、そして、「生涯学習」に向けての世界的な動きを受けて、「すべての人々のための質の高い教育訓練」(平成二年)についてそれぞれ議論が行われた。

 OECDの教育事業がこれまで対象としてきた分野は、「教育と経済の関係」、「教育の質の向上」といった一般的な課題から、カリキュラム改革、教員の養成・研修、学校経営、高等教育、留学生教育、特殊教育、幼児教育、外国人教育、職業・技術教育、環境教育など個別の課題に至るまで多岐にわたっている。具体的な例としては、教育委員会においては、「社会経済の発展に果たす高等教育の役割」、「労働者の継続教育訓練」、「職業教育訓練の役割の変化」等があり、CERIにおいては、「カリキュラムと学習の革新」、「教育インディケーター」、「危機に立つ子供と青少年」、「環境と学校のイニシアティブ」、「教員の質」、「教育と新情報技術」、「環太平洋地域研究組織」等がある。

 また、OECDの科学技術の分野では、科学技術政策の情報交換等を主たる任務とする「科学技術政策委員会(CSTP)」が設置されており定例会合が毎年開催されているほか、科学技術政策委員会閣僚レベル会合(科学技術大臣会議)がこれまでに八回開催されており、「経済成長と社会開発への科学技術の寄与」(昭和六十二年)、「一九九〇年代の科学技術政索―国内的側面と国際的側面の相互関係」(平成四年)等、科学技術政策の中長期的課題について議論した。

 OECDの科学技術事業としては、加盟国を対象とする「科学技術政策レビュー」の実施、「バイオテクノロジー研究に関する政府の政策に関する調査」の取りまとめ、大学における学術研究を中心とする「研究評価の現状に関する調査」等がある。

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