四 著作権制度の新たな展開

技術革新への対応

 複写機器の発達普及に伴う文献コピーの増大に対応するため、昭和五十年代初めから長年にわたる関係者間の調整と準備を経て、平成三年九月には著作者等に代わって企業などのコピー利用者との間で著作権処理を行うことを目的とする集中的権利処理機構として日本複写権センターが発足した。なお、複写問題に関しては出版者にも新しい権利を認めるべきかどうかが課題となっている。また、録音・録画機器の発達普及に伴う私的録音・録画行為に関する報酬請求権制度の問題も早急な解決が迫られている。今後、情報のデジタル処理技術及び伝達手段の高度化・多様化の進展に対応して、著作権制度における権利の在り方や権利処理の在り方などについても多角的な検討が必要となってきている。

国際著作権制度の新たな展開

 近年、著作権や工業所有権など人間の知的創作活動から産み出されたものに対する権利(知的所有権)に対する関心が国際的に高まっている。従来、国際著作権制度は、ベルヌ条約を所管する世界知的所有権機関(WIPO)等を中心として進展してきたが、昭和六十一年からの関税及び貿易に関する一般協定(GATT)ウルグアイ・ラウンドにおいてコンピュータプログラムの保護、貸与権の導入等著作権制度も議論の対象となるなど、既存の条約の枠組みを超えた新たな展開も生じてきている。WIPOにおいても、新たにベルヌ条約議定書の作成作業に入るなど、著作物の利用実態の変化などに対応するための検討が始められている。

 また、アメリカは、産業貿易政策の主要な柱の一つとして、知的所有権の国際的な保護の確立を位置付け、多国間交渉のみならず、二国間交渉においても、レコードの貸与権などの様々な要求をするようになってきている。さらに、欧州共同体(EC)は、市場統合の基盤整備のために域内の著作権制度の調和のための作業を進めている。こうした多端な動きの中で、我が国としても、著作権の適切な国際的な保護について多面的な対応が必要とされてきている。

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