一 芸術鑑賞機会の充実

 地方文化の振興のための施策として最初に採られたのは、舞台芸術鑑賞機会の充実であった。戦後、舞台芸術を公演する相当施設が少なく、また採算性の問題から芸術団体の自主公演が行われにくかったことから、地方での舞台芸術鑑賞の機会は著しく少なかった。文部省は、こうした状況に対し、昭和二十五年度以後、地方公演を実施してきた。その後、地方公演は、三十九年度に地方巡回公演として予算化され、さらに四十三年の文化庁創設を機に飛躍的に拡大されるなどの経緯をたどった後、四十五年度に「移動芸術祭」という新たな事業に組み替えられた。移動芸術祭は、歌舞伎(き)、能楽、オペラ、オーケストラなどの最高水準の舞台芸術を地域に派遣し、数県で集中的に開催するほか、その他の地域でも巡回公演を行うという形で実施するものであった。

 また、この移動芸術祭のほか、四十二年度から「青少年芸術劇場」、四十九年度から「こども芸術劇場」、五十九年度から「中学校芸術鑑賞教室」がそれぞれ開始され、全国の児童、青少年の間に優れた舞台芸術に直接触れる機会を充実してきた。

 さらに、平成元年度からは、東京国立近代美術館フィルムセンターの所蔵する日本映画の名作を全国各地で巡回上演する「優秀映画鑑賞推進事業」を開始した。

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