二 芸術家の研修と顕彰

 我が国の芸術水準の向上と飛躍を図るためには、国際的な評価の下で創造力を発揮し得る人材をはぐくみ続けなければならない。このため、文化庁では、優れた資質を有する若手芸術家等に一定期間の研修の機会を提供する各種の研修事業を実施してきたが、平成二年度からは、これらを芸術フェローシップとして再編し、その拡充を図ってきた。

 昭和四十二年度に開始した「芸術家在外研修制度」は各分野の新進芸術家を一年間海外に派遣し、研修させるものであったが、その後、四十六年度には二年派遣、五十四年度には三か月間の特別派遣、平成四年度には三年派遣の各プログラムが設けられ、これとともに、研修員数が拡大された。四年度までに六〇〇名を超える芸術家が世界各国に派遣され、帰国後、その多くが我が国芸術活動の中核的な担い手として、第一線で活躍している。

 また、昭和五十二年度から、各分野の新進芸術家に国内の専門研修施設における研修や個人指導を受ける機会を与えるため、「芸術家国内研修制度」が開始され、平成二年度までに計五〇〇名近い者が研修を受けた。この制度は三年度に拡充・再編され、「芸術インターンシップ制度」という新たな名称の下、特定の研修施設における研修に加えて、自己研鑽を含めた研修活動を行うことができるようになった。

 さらに、二年度から開始した、海外の有望若手芸術家を招へいする「海外芸術家招へい研修制度」は、内外の若手芸術家相互の接触の機会を増加させ、我が国の芸術家の創造意欲に刺激を与えて有意義なものとなっている。

 一方、芸術家の創作意欲を喚起する上で優れた芸術家の業績を適時顕彰することは重要である。特に、将来の飛躍が期待される若手芸術家の顕彰は、新たな芸術創造の展開の契機ともなり、その芸術活動を支える上で大きな役割を果たしている。

 芸術家の顕彰事業としては、戦前戦後から続く文化勲章・文化功労者、日本芸術院、芸術選奨等の制度に加え、昭和五十三年度に「舞台芸術創作奨励特別賞」が設けられ、音楽、演劇等舞台芸術各分野における独創的で優秀な創作作品の作家を顕彰することになった。また、六十年度には、媒体芸術(映画、ラジオ、テレビ及びレコード)の分野における芸術活動の水準向上とその発展に資することを目的として、「芸術作品賞」が設けられた。

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