三 フェローシップ制度の充実

奨励研究員制度

 若手研究者が研究活動の最も活発な時期に研究に専念できるようにするために、生活上の不安を除いて研究を奨励するための資金を交付するフェローシップの制度は、研究者の養成・確保に関して、大学院の整備充実と並んで重要な施策である。戦後の我が国のフェローシップ制度は、既に昭和三十四年、大学院博士課程修了者を対象とするポスト・ドクトラル・フェローシップとして、日本学術振興会奨励研究員制度が発足していた。当初、三六人の採用数でスタートしたこの制度は、その後、対象人員の規模を拡大し、大学等の研究機関の将来の人材確保、我が国の研究活動全体の水準の維持向上のために重要な役割を果たしてきた。

 この間、奨励研究員制度の一部として、五十年からは、特に推進を図る必要のある研究領域の研究促進と後継者の養成を図るため、当該領域の研究機関の研究計画に参加する者を対象とする特定領域奨励研究員制度が、また、五十一年からは、特に推進を必要とする研究分野及び学問上基本的に不可欠であるにもかかわらず、現に研究・教育後継者の得難い研究分野について、大学院博士課程に在学する者を対象とする大学院博士課程奨励研究員制度が発足するなど、制度の多様化の観点からの改善が図られた。

特別研究員制度

 昭和五十年代末には、研究者の高齢化が進み、大学等における研究の活力の低下、将来の研究を担う優れた人材の養成・確保に深刻な影響が懸念されるに至った。奨励研究員制度は、博士課程の修了者が助手等の常勤的職に就くまでの間、研究の継続を保証することにより、特に、大学等の研究人材を短期的に保有する上で大きな役割を果たしてきたが、優れた若手研究者の養成・確保のためには、我が国でも本格的なフェローシップ制度の確立が必要との五十九年の学術審議会答申に基づいて、六十年に日本学術振興会特別研究員制度が発足した。この制度は、博士課程後期の学生を含む若手研究者を、研究者養成の最も重要な時期にあると同時に、現実に第一線の研究にも従事している人材ととらえ、その地位と役割にふさわしい研究条件と処遇を行うことを目的としている。具体的には、採用期間の一年間から二年間への延長、研究奨励金の額の大幅な改善及びその後の支給単価改善方式の確立、博士課程在学者も対象としたこと、採用者に科学研究費補助金の申請資格を与えたこと等の改善が行われた。特別研究員制度については、創設以来、採用人数の増員、申請資格の拡大、研究奨励金の額の改善等が行われ、平成四年においては、総採用者数で一、三〇〇人に達しており、若手研究者の養成・確保のための方策として、大学等において高い評価を受けている。また、博士課程修了の特別研究員では、出身研究室以外の研究室において研究に従事する者が約四割に達するなど、大学等における研究者の流動性を促進する観点からも重要な役割を果たしている。

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-- 登録:平成21年以前 --