一 健康教育の推進

 戦後、学校教育法において、健康、安全で幸福な生活のために必要な習慣を養い、心身の調和的発達を図ることが学校教育の目標の一つとして掲げられ、積極的に健康の保持増進を図っていく方向が示された。そして、教科体育・保健体育や特別活動などにおける保健教育・安全教育や給食指導、学校保健法・学校給食法等に基づく健康等に関する管理面など、学校保健、学校安全及び学校給食のそれぞれの分野で、施策の拡充が図られ、児童生徒の健康の保持増進、体位の向上、さらには国民の食生活の改善等にかなりの成果をあげてきた。

 こうした中で、生活水準の向上、食生活を含む生活様式の変化等を背景として、児童生徒の身長、体重など体格は著しく向上し、また、疾病等の面では感染症が急減したが、一方で、体力の伸びが体格の伸びに必ずしも伴っていない傾向が見られるようになり、また、う歯、近視、更に肥満傾向の増加などが指摘されるようになった。

 加えて、近年の都市化、情報化等を背景とした生活様式や生活環境の著しい変化は、児童生徒の身体的活動の減少や精神的負担の増大、偏食・欠食などの問題を生じさせてきており、また、登校はするもののほとんどを保健室で過ごす保健室登校の問題も指摘されている。他方、保健医療の進歩等により、国民の平均寿命が伸び、高齢化社会が到来している。

 このような状況を背景として、昭和六十一年四月の臨時教育審議会第二次答申において、社会の変化に対応して生涯にわたり健康な生活を送る基礎を培う観点から、心身の健康を自ら保持増進するために必要な能力・態度を育成する健康教育の重要性が指摘された。

 文部省では、この答申を踏まえ、平成元年の学習指導要領の改訂において、体育・保健体育をはじめとする各教科や道徳、特別活動を通じて健康教育の一層の充実を図った。また、昭和六十三年七月には、健康教育の中心的分野である学校保健、学校安全及び学校給食の総合的推進を図るため、文部省機構改革の一環として、学校保健課と学校給食課を統合し学校健康教育課を設置した。

 また、健康教育推進のための基本的方策等について検討するため、平成元年三月、保健体育審議会の学校保健及び学校給食両分科審議会の下に「健康教育特別委員会」を設置し、現在、学校教育及び社会教育にわたる健康教育の指導内容の充実や指導体制の強化を図るための施策について審議を行っている。さらに、元年度には初めての「健康教育推進研究指定校」を指定し、第一回目の全国健康教育研究協議会を開催するとともに、財団法人日本学校保健会に「健康教育に関する手引書作成委員会」が設けられた。

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