一 乳幼児期の家庭教育の充実

家庭教育学級の充実

 家庭教育の振興については、昭和三十九年度から、両親等を対象とする家庭教育学級の補助が開始されていた。その後、四十六年の社会教育審議会答申「急激な社会構造の変化に対処する社会教育のあり方について」は、生涯教育の課題の一つとして乳幼児期における家庭教育の重要性を指摘し、同審議会は、この答申を具体化するため、四十九年に「乳幼児期における家庭教育の振興方策について」建議した。これを受けて、五十年度から乳幼児を持つ親を対象とし、託児にも配慮をした「乳幼児学級」の補助を開始することとなった。

 また、五十六年度から主として新婚・妊娠期のこれから親になる者や未婚の男女を対象とした「明日の親のための学級」、六十一年度から女性の社会進出に伴う共働き家庭の増加に対応するための「働く親のための学級」、さらに平成元年度から、思春期の子供を持つ親を対象とした「思春期セミナー」の開設に補助を開始するなど、社会状況の変化とそれに伴う新たな課題に対応した学習機会の充実に努めてきた。家庭教育学級は年々増加し、二年度の家庭教育学級の開設数は、二万七、〇〇〇学級、参加者数は一九〇万人に達している。これらの家庭教育学級は、三年度からは社会教育活動総合事業の中で実施されている。

相談体制の整備

 乳幼児を持つ母親等の学習機会の一つとして、昭和四十七年度から都道府県に対して家庭教育(幼児期)相談事業の補助を開始した。この事業は、「届ける社会教育」の先鞭(べん)を切ったもので、はがき通信、巡回相談、テレビ放送から成り、相互に関連を持ちながら親の相談等に応じる個別学習に特色があった。この事業は、平成元年度から電話相談など内容を更に充実させ、すこやか家庭教育相談事業に発展した。

 昭和五十年代に入り子供の自殺や校内暴力等少年の問題行動が顕著になってきたこともあり、国際児童年を期して五十四年度から地域における家庭教育の在り方を総合的に研究し、資料の作成・配布を行う家庭教育総合セミナーの助成を開始した。五十九年度からは同セミナーの内容を各地域の指導的立場にある者の研究協議を行うことを中心とした家庭教育総合推進事業とし、平成三年度にはすこやか家庭教育相談事業と統合し、家庭教育充実事業として総合的に実施できることとした。

 家庭や地域の教育力の低下に伴う諸問題は、我が国に限らず多くの国で共通に見られる現象であり、五十八年に国立婦人会館においてOECD・CERI家庭教育国際セミナーが開催された。

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