二 地域活動の展開

地域連帯意識の形成

 我が国の工業化の進展は、第二次、第三次産業従事者の飛躍的増加を招き、「職」と「住」の分離をもたらし、地域における共同性や連帯心が希薄化する傾向が見られるようになった。このため、政府は各般にわたるコミュニティ政策や定住圏その他の地域圏構想を公にし、新しい地域連帯意識の形成に努めてきた。

 文部省でも、地域における学習・文化の拠点として成果をあげてきた公民館の整備を積極的に支援し、一方では郷土教材制作を奨励するとともに、共通の学習関心で結ばれる各種の学習活動が醸し出す新しい連帯意識に強い関心を寄せた。また、社会連帯意識の涵養を直接の目的とした学習活動も増加の傾向を見せていたが、これらの動きと並行して、人々が自ら地域作りに参加する活動が芽生えてきた。これらは地域活動と総称され、盛んになってきた学習活動とともに、昭和五十年代に登場してきた「まちづくり」、「むらおこし」などの運動の中核になった。

地域活動の展開

 文部省は社会連帯意識の涵養に関する実践的研究を市町村に委嘱し、その成果を踏まえて婦人ボランティア活動等の奨励策を講じてきたが、昭和五十二年度からは青少年健全育成PTA活動への補助を始めた。PTAは、家庭、学校、地域社会を結ぶ教育的な役割を担う団体であり、その特色を発揮して地域の教育力を活性化する先導的な活躍を期待したわけである。

 また、各種の社会教育関係団体は、それぞれ創意の下に独自の活動を展開してきているが、その後の社会的な動きを反映して、国際的な事業や社会参加活動も盛んになり、文部省は求めに応じて必要な支援を行ってきた。

 他方、高齢者が永年にわたって蓄えた知識・技能や経験を積極的に社会に役立てる方途を開き、高齢者の地域社会への貢献を促すとともに、社会教育における指導者の充実を期すため、五十三年度から高齢者人材活用事業への助成方策を創設した。また、五十九年度からは、これにボランティア活動等の事業を加え、高齢者の社会参加を支援している。その後、国民各層の社会参加は多彩な展開を見せ、六十一年度間の社会教育施設におけるボランティア活動参加者は、延べ約三五〇万人に上っている。

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