一 青少年教育の振興

 昭和四十年代以降に見られた我が国社会の急激な変化は、人間形成上、重要な時期にある青少年に対して様々な影響を与え、青少年教育への関心を高めた。このため、社会教育審議会をはじめとして、各方面から提言が行われた。

  四十六年の「急激な社会構造の変化に対処する社会教育のあり方について」の社会教育審議会答申は、少年教育に関し、家庭の教育条件の悪化、自然環境からの 隔絶、有害な図書・映像等の氾(はん)濫、交通災害、各種公害の激増など、少年の望ましい成長を阻害する要因の増加を踏まえ、家庭、学校及び地域における 教育は、生涯教育の観点に立って、それぞれに独自の役割を発揮しつつ調和を保って進められるべきだと提言した。また、青年教育に関し、進学率の上昇、青年 人口の都市への集中、余暇時間の増大、現実的、感覚的な考え方の蔓(まん)延などの課題を示して、時代の進展に対する知識・技術の習得とともに、社会的陶 冶(や)などの機会を拡充する必要性を指摘した。

  これを受けて特に、社会教育審議会は、四十九年に「在学青少年に対する社会教育の在り方について」の建議を行った。建議は、青少年期において豊かな人間形 成を図るためには、従来の学校教育のみに依存しがちな考え方を改め、家庭教育、学校教育、社会教育の三者が相互に協力し合うことが重要であり、特に学校教 育と社会教育の連携(学社連携)の必要性を強調した。

  さらに、同審議会は、五十六年に「青少年の徳性と社会教育」に関して答申した。答申は、青少年の徳性の涵(かん)養を広く青少年の人間形成を図るという立 場でとらえ、各時期ごとに達成しなければならない発達上の課題を示した。この課題を達成するためには、家庭、学校、地域がそれぞれの教育力を強化し、その 上で連携、協力することの大切さを再度強調し、これを前提に、社会教育が強化すべき分野として団体活動、施設の利用活動、奉仕活動などの実践活動、自然と 触れ合う活動、外国の青少年との交流活動を挙げている。

 文部省は、これらの答申等を重要な指針として、変化の激しい社会における青少年教育の振興方策を講じてきている。

  なお、近年、週休二日制など社会一般に休日が拡大傾向にある。このため、青年の余暇活動の充実が課題になるとともに、学校週五日制が具体のものとなってき た。この動きを踏まえて、平成四年二月、青少年の学校外活動に関する調査研究協力者会議は、「休日の拡大等に対応した青少年の学校外活動の充実について (審議のまとめ)」を発表した。同まとめは、青少年の人間形成にとっては日常生活での生活体験・活動体験を豊富にすることが必要であるとの認識に基づき、 学校週五日制に伴う休日の拡大等は学校外におけるこの種の活動の基盤強化につながるものとしてとらえ、そのためには自由に選択できる多様な活動の場や機会 を整備すべきだと述べている。

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