二 社会教育施設の整備充実

社会教育施設の整備

 国民の自発的な活動を基盤とした多様な社会教育活動に着目するようになった昭和四十年代中ごろからの社会教育行政は、その拠点としての社会教育施設の整備充実を一つの特色とし、公民館の新改築、図書館・博物館の整備が急速に進められた。

 一方、社会教育の多様化は、活動内容の高度化・専門化を求める動きともなって、これにこたえる新しい社会教育施設が次々と誕生した。青少年教育施設については、既に三十年代に、公立青年の家の整備費補助が開始されるとともに、国立青年の家の整備が進められてきた。また、少年たちが、恵まれた自然環境の中で仲間と宿泊生活を送りながら様々な生活体験に挑戦する教育基地としての少年自然の家が新しく構想され、四十五年度から公立少年自然の家整備費補助が開始されるとともに、その成果を踏まえ、学制百年を記念して国立少年自然の家の整備が進められることとなった。婦人教育施設としては、公私立の婦人会館等の設置が進められていたが、五十年代に入り、社会の進展、生活の変化などによる婦人の学習活動の高まりにこたえ、婦人教育の総合センターとして国立婦人教育会館が埼玉県嵐山町に新しく設置された。このほか、視聴覚センター(四十八年度)及び社会教育の複合施設としての県立総合社会教育施設(五十三年度)の整備に対する補助が行われている。平成四年度からは、社会の変化に対応して、社会教育施設がより高機能化、多機能化するよう社会教育施設活性化支援事業も開始されている。

公民館

 終戦直後、我が国独自の社会教育施設として構想され、全国的な普及が図られた公民館は、都市化などによって変容した地域連帯意識を再構築する推進拠点として、また、高まってきた人々の生涯にわたる学習の支援拠点として、その役割が増してきた。文部省は地方公共団体の要望にこたえて、公民館整備費に対する補助金の増額を図った。また、公民館における母と子の読書活動や公民館事業の開発に対する奨励補助を昭和五十一年度から始めるなど、活動の充実にも努めている。

 平成二年現在、公民館数は一万七、三四四館、利用者数(元年度間)は二億三、〇〇〇万人であり、昭和五十年と比較し、施設数で一・一倍、利用者数で二・六倍となっており、利用者数の増加が目立っている。

図書館及び博物館

 戦前からの歴史を持つ図書館及び博物館は、戦後法制上の整備が行われ、新しい充実の方向をたどった。昭和四十年代以降、生涯学習社会を迎えて、人々の学習要求が高度化するとともに、人間性の回復を求めて文化に対する関心が増大してきた。地方公共団体はこのような要望にこたえ、図書館や美術館、歴史博物館などの博物館の整備を急速に進めており、文部省も施設整備費に対して助成を行ってきた。

 また、文部省は、四十七、四十八年に図書館のネットワークに関する研究を市町立図書館に委嘱するとともに、四十九年度から郷土資料に関する総合目録の作成、巡回文庫用自動車や資料の購入、点字図書や視覚障害者用録音テープの作成等に対する助成制度を創設し、図書館活動充実のための先導的開発を試みている。博物館については、五十二年度からは市町村内の博物館資料の調査と目録作成、巡回展や講習会の開催などに対する補助を、また、五十四年度からは、科学や創作活動を中心にした子ども博物館の整備費に対する補助を始めた。なお、博物館の発展に資するため、四十八年には、「公立博物館の設置及び運営に関する基準」を告示し、平成三年度からは博物館を整備する民間事業者への日本開発銀行等による低利融資制度が発足した。

 二年現在、図書館数は一、九五〇館、利用者数(元年度間)は、七、六〇〇万人で、昭和五十年と比較し、施設数で一・八倍、利用者数で三・三倍となっている。また、博物館(登録博物館・博物館相当施設)数は七九九館、利用者数は一億三、〇〇〇万人で、五十年と比較し、施設数で二・〇倍、利用者数で一・四倍となっている。なお、博物館類似施設を加えた博物館数の二十年間の推移を見ると、四十六年の施設数は三七五館、平成二年のそれは二、九六八館である。

国立科学博物館

 国立科学博物館は、自然科学等に関する資料を収集・保管・展示するとともに、調査研究、研修、普及等の活動を行っている。特に近年は、自然史科学研究の中心施設として多くの研究成果をあげるとともに、昭和五十八年には世界でも余り例を見ない植生を重視する生態植物園としての性格を備えた筑波実験植物園を開園し、また、六十三年には館蔵標本を活用して研究・研修を行う新しい試みを持った新宿分館研修研究館を開館した。一方、たんけん館やサイエンス・シアターの創設など、教育的視点に基づく展示内容の刷新とともに、ボランティア制度の導入など教育活動の飛躍的な拡充を見ている。

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-- 登録:平成21年以前 --