一 社会教育審議会の答申

 昭和四十年代を迎えた我が国は、経済の高度成長に伴って社会構造や国民意識が急激に変化し、これに対応する社会教育の在り方が問われるようになった。工業化、都市化の著しい進展が地域社会の変容をもたらし、地縁性に依存していた幾つかの社会教育活動に変化の兆しが見え、他方、高学歴化、経済的・時間的余裕の増大、あるいは技術革新その他社会の変化がもたらす刺激などによって、国民の学習需要がとみに高まってきた。

 このため、文部大臣は、「急激な社会構造の変化に対処する社会教育のあり方について」社会教育審議会に諮問し、四十六年四月、同審議会より答申があった。

 同答申は変化の激しい社会における社会教育の採るべき方向として、次のような提言を行った。

 (一)今後の社会教育は、国民の生活の多様な機会と場所において行われる各種の学習を教育的に高める活動を総称するものとして広くとらえること

 (二)家庭教育、学校教育、社会教育の三者の有機的役割分担を確立し、また、人々の生涯にわたる学習を支える多様な機会と場を提供する社会教育の役割を確認するなど、生涯教育の観点から体系化を図ること。

 (三)人間性の回復と生きがいを目指す学習内容を重視するとともに、社会教育に関する団体活動、地域活動、あるいはボランティア活動を促進するなど、内容・方法の多様化、高度化を図ること。

 生涯教育理念に立脚した同答申は、都市化しつつある社会を視野に入れた新たな社会教育行政への転換を促したものである。文部省では、この答申を重要な指針として、新しい社会教育振興方策を講じてきた。

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