二 学校法人の不適正な運営とその改善

 昭和四十年代後半から五十年代にかけて、学校法人において管理運営に重大な問題のある法人が見られ、大きな社会問題となった。

 この内容は二つに大別されるが、一つは、四十年代後半から五十六年にかけての私立大学医歯学部の一部における入学者選抜の不公正の問題である。これは、学生の入学時に入学許可の条件となっていると認められる高額の寄附金を徴収していたことが特に問題とされ、相当数の大学がその指摘を受けた。もう一つは、五十年代後半に一部私立大学において、私立大学等経常費補助金の不正受領等学校法人の管理運営に著しく適正を欠く不祥事が生じたことである。

 これらの事例の要因として見られたことは、理事会、評議員会等学校法人の管理運営体制及び教授会等の教学運営体制が、適正に機能していなかったことであり、このことについては、管理者が学校法人運営の基礎、基本である私立学校法、寄附行為等を遵守していなかったこと、あるいはそれらについての認識を欠いていたことに起因するものであったことである。文部省においては、問題を起こした学校法人については、学校法人自らの運営改善を求める一方、管理運営に著しく適正を欠く場合には、私立大学等経常費補助金の返還や打切りの措置を講ずるとともに、理事体制の刷新等厳正な指導を行ってきた。そして、入学者選抜の公正確保については三度にわたる通知を発出し、また、学校法人の管理運営については、五十八年、文部事務次官通達により、管理運営全般の再点検、適正化等を求めた。

 また、五十九年度には、私学の不祥事を未然に防止するとの観点から、広い識見を有する者による「学校法人運営調査委員制度」(委員定数二〇名以内)を設置し、毎年度文部大臣所轄学校法人の一定数を調査し、必要な指導・助言を行ってきており、近時においては、学校法人の管理運営が著しく適正を欠く事例は少なくなっている。

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