二 大学院の規模の拡大と多様化

 大学院の規模の拡大について見ると、新制の大学院は、昭和二十五年に初めて私立の四大学に設置されて以来、順次国公私立大学に開設され、平成三年現在、五一五大学のうち、三二二大学に置かれており、在学者で見ると修士課程六万九、〇〇〇人、博士課程三万人となっており、二十年前と比べるとそれぞれ二・四倍、二・三倍に拡大した。また、大学院における留学生の受入れ数を見ると、三年度一万四、〇〇〇人で「二十一世紀への留学生政策に関する提言」のあった昭和五十八年度と比べると三・五倍と急激な増加を示している。

 国立の新制大学院の設置については、研究水準維持のため、当初は旧制大学の系譜を持つ大学又は学部の上に置くことを原則とし、かなり制限的で慎重な方針が採られてきたが、三十八年の中央教育審議会の答申を受けて以来、社会的要請の高まりつつある高度の専門的な職業人の育成を図るため、いわゆる新制の大学又は学部の上にも修士課程の設置が進められた。また、博士課程の新設、拡充については、学術研究上の必要や社会的要請に対応した大学院の整備が進められ、筑波大学や技術科学大学などの新しい構想の大学に大学院が設置されるとともに、六十年以降、学際領域等の教育研究に対処するため、連合大学院や総合大学院などの工夫により、博士課程の設置も進められた。

 一方、特定の学部に依存する従来の大学院の教育研究組織のほか、学術研究の進展や社会の発展等に柔軟に対応するため、学部段階の組織を全く置かず専ら大学院のみの組織を置くいわゆる独立大学院については、五十一年に制度化され、平成三年現在、四大学(国立三大学、私立一大学)が設置されている。このうち、総合研究大学院大学は、大学共同利用機関の優れた研究機能を活用し、これらの機関を基盤とする独立大学院として昭和六十三年に創設され、平成元年から学生を受け入れている。また近年の著しい科学技術の進展に対応し、情報科学、材料科学、バイオサイエンス等に係る先端科学技術分野の基礎研究を推進するとともに、当該分野の高度の研究者・技術者の養成・再教育を図るため、二年に北陸先端科学技術大学院大学が、また、三年に奈良先端科学技術大学院大学が創設された。

 また、従来の学部、学科の組織編成にとらわれず、広く学内の学部、研究所等と連携し、あるいは専任教員、専用施設による独立の組織を有するいわゆる独立研究科については、昭和四十九年に制度化され、平成三年度までに三九独立研究科(一〇二専攻)、三四独立専攻が設置されている。さらに、社会人の再教育や生涯学習等の需要にこたえるため、専ら夜間に教育を行う夜間大学院や昼夜開講制の実施に配慮する大学院が増えており、平成三年において、夜間大学院は四大学六研究科、昼夜開講制を行っている大学院は四二大学五五研究科一八六専攻となっている。

 なお、今後の大学院の整備については、三年五月に大学審議会から、研究者をはじめ、国際的に通用し得る高度の専門的人材の育成や学術研究の一層の展開による国際貢献等にも寄与するため、1)大学院の教育研究組織の整備、2)大学院学生の処遇の改善、3)留学生の教育体制の整備、4)大学院の量的拡充、5)大学院に関する財政的措置の充実などの答申があり、さらに同年十一月同審議会から、大学院の量的整備について平成十二年(西暦二〇〇〇年)時点における我が国の大学院の規模を全体として少なくとも現在の規模の二倍程度に拡大する必要があることなど、質、量の両面にわたり、大学院の飛躍的充実を図る必要がある旨の答申があり、引き続き、その整備充実が課題となっている。

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