一 教頭職の法制化

 教頭は、明治以来学校に置かれている職であるが、戦前と異なり、戦後は法令上の位置付けはなされていなかった。しかしながら、学校においては、引き続き教頭は置かれており、学校の経営管理の複雑化等に伴い校長の職務が繁忙を極めるようになり、校長を助ける教頭の役割の重要性が認識され、その法的地位の確立が課題となってきた。このため、昭和三十二年十二月の学校教育法施行規則の一部改正により、学校には特別の事情のあるときを除き教頭を置くものとし、教頭は教諭をもって充て、その職務としては校長を助け、校務を整理する旨の規定が新設された。

 しかしながら、この規定では「教頭は、教諭を以って、これにあてる。」とされており、この「あてる」の意義が必ずしも明確でなく、公立学校の場合、教頭は独立の職ではなく、教諭に教頭という特別の職務を付加する一種の職務命令として取り扱われたため、教頭選任の際に職員団体に介入の口実を与えるとともに、その取扱いが服務監督権者である市町村教育委員会によって異なり、身分の安定が期待できないといううらみがあった。

 このようなことから、教頭をその地位と職務内容に応じて教諭とは別の独立した職として法律上明確に位置付けようとする教頭法制化が検討され、そのための法案が四十三年の国会に提出されて以来数度にわたり提出されてきたが、与野党の対決法案となったため容易には成立しなかった。そして、四十九年の第七二回国会においてようやく学校教育法の一部を改正する法律として成立し、同年九月に施行された。同法では、1)学校には、教頭を置かなければならない。ただし、高等学校以外は、特別の事情があるときは、これを置かないことができる、2)教頭は、校長を助け、校務を整理し、及び必要に応じ児童生徒の教育をつかさどるとともに、校長に事故あるときはその職務を代理し、校長が欠けたときはその職務を行う旨規定されている。こうして、教頭は、学校教育法上、独立した職としての設置とその職務を規定されることとなった。

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