一 公立学校の施設整備

公立学校施設整備のための国庫負担(補助)制度の改善

 公立学校施設整備については、昭和四十年代後半以降、相次いで国庫負担(補助)制度の改善が図られた。まず、小学校の施設について、「義務教育諸学校施設費国庫負担法」の改正により、四十七年度及び四十八年度に、それぞれ、校舎及び屋内運動場の新増築の負担率が従前の三分の一から二分の一に引き上げられ、懸案となっていた中学校との均衡が図られた。また、児童生徒急増市町村の小・中学校校舎新増築については、四十八年度の同法改正により、負担率が二分の一から三分の二に引き上げられ、その後の延長を経て、児童生徒の急増への対応が図られてきた。

 さらに、養護学校施設の整備についても、都道府県立養護学校に係る負担率の引き上げが図られ、四十七年度には、養護学校未設置県の解消のため新設校の負担率が三分の二に引き上げられ、四十八年度には、すべての都道府県立の養護学校建物の新増築についての負担率が三分の二に引き上げられた。

 このほか、学校水泳プール、学校給食施設等については、それまで体育施設整備費、学校給食施設整備費等として計上されていたが、五十三年度から公立文教施設整備費に計上されることとなり、着実な整備が図られることとなった。

 なお、四十七年の沖縄の復帰に伴い、重要な課題となっていた沖縄県の学校施設の整備については、本土との格差是正を図るため、四十七年度から五十一年度までの五か年間の整備計画に基づき約五六万㎡が整備されるなど、年々整備が図られてきた。また、四十六年に制定された「沖縄振興開発特別措置法」に基づき、公立小・中学校等の建物に対する負担率が引き上げられ、養護学校小・中学部を含む義務教育諸学校の校舎及び屋内運動場の新増築に対する負担率は一〇分の九に改善された。また、いわゆる提供施設に係る小・中学校の代替借用校地の購入費についての補助制度が設けられるなど、施設整備が促進されてきた。

 このような国庫負担(補助)制度の改善と児童生徒の急増に伴う量的整備の需要の増大から、公立学校施設整備費予算額も五十五年度まで急激に増加したが、その後、児童生徒数の減少や国の厳しい財政事情等から、年々縮減していくこととなった。しかし、老朽鉄筋校舎の改築事業等を中心に、市町村等の計画事業量が増加傾向にあることを勘案し、平成三年度概算要求から設定された「生活関連重点化枠」の活用等により、平成三年度及び四年度においては予算の増額が図られることとなった(表5参照)。

表5 公立学校施設の整備状況(高等学校以下)

表5 公立学校施設の整備状況(高等学校以下)

高校急増対策と過大規模校の解消

 昭和四十年代後半以降における重要課題として、進学率の向上等に伴う高等学校新設への対応の問題がある。このことについては、四十九年度から地方財政措置の拡充により対応してきたが、五十一年度には、生徒数の急増に対処するため、公私立高等学校建物の新増設について三分の一を国庫補助する制度が設けられた。その後所要の改善が図られてきたが、生徒数の減少傾向に対応して、六十三年度をもって国庫補助制度は廃止されるに至った。

 もう一つの重要課題は、児童生徒の急増に伴う過大規模校の解消に向けた施策の充実である。過大規模校については、かねてから教育指導上及び管理運営上の問題点が指摘され、文部省としても、その解消を指導してきたが、基本的な教育条件の整備として学校規模の適正化を図ることが急務とされた。このため、四十六年度に発足させた児童生徒急増市町村に対する小・中学校用地取得費補助制度を六十一年度から「児童生徒急増市町村等公立小中学校規模適正化特別整備事業費補助金」に改めることにより、児童生徒急増市町村以外の市町村についても、三一学級以上の過大規模校の分離に必要な用地取得費を補助対象とすることとした。

特色ある学校施設づくり

 学校施設の整備に当たっては、引き続き量的整備の確保に努めるとともに、温かみと潤いのある学校環境づくり、教育内容・方法の変化に対応した学校環境づくり、地域の住民の利用を考慮した学校施設づくり等の観点から、質的整備が必要とされるようになってきた。このため、五十七年度以降、屋外学習環境を整備するための屋外教育環境整備事業、学校開放のための施設を設けるためのクラブハウス整備事業(いずれも五十七年度から)、中・高校の集団宿泊研修のためのセミナーハウス整備事業、教育環境の改善・建物の耐久性の確保を図るための大規模改造事業(いずれも五十八年度から)、多様な学習指導方法への対応等のための多目的スペースの整備(五十九年度から)、木の教育研修施設への補助の創設(六十一年度から)、部活動の充実・発展に資するための部室整備事業(六十三年度から)、情報化教育の推進を図るためのコンピュータ教室整備のための措置(平成二年度から)など各種の施策が講じられてきている。

多様な施設計画

 昭和五十年代に入り、施設計画面においても従来の画一的計画から多様な計画へと大きな変革期を迎えることとなった。

 我が国の経済の発展とともに、国民の文化に対する関心も高まり、公共施設にも文化的要素を付加する機運が高まった。また、五十四年、自由民主党文化振興に関する特別委員会において、文化振興の一方策として、国・地方公共団体が建設する施設に文化的要素を加えるよう提言された。

 このような背景の下、文部省においても、創造的で心豊かな児童生徒の育成に資するような文化的環境づくりを推進するため、五十七年以降数次にわたり学校施設の文化的環境づくりに関する指導書を作成し配布した。

 学校教育においては、従来の一斉指導のみでなく、児童生徒の特性に配慮した多様な学習指導方法が必要とされるとともに、地域の人々へ学校開放が求められるようになった。豊かで潤いのある環境づくりとともに、これらに対応する施設づくりを総合的に推進するため、六十三年、教育方法等の多様化に対応する施設の在り方を示すとともに、その具体化のための手引書を発刊した。

 六十二年の臨時教育審議会第三次答申では、生涯学習基盤整備の具体的方策としてインテリジェントスクール構想が提唱され、これを受け文部省では、学校等教育施設とともに、文化スポーツ施設の活用を図り、地域における質の高い学習環境づくりを推進するため、平成二年、その施設計画の考え方を示すとともに、具体的計画策定に関し地方公共団体へパイロットモデル研究を委託した。

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