二 養護学校の義務制実施と養護学校の整備

養護学校義務制の実施

 昭和五十四年四月の養護学校の義務制実施を境に大きく変化したのは、就学猶予・免除者の数である。就学猶予・免除者は、四十七年当時二万人前後、五十三年度には一万人近くあったものが、五十四年度には三、四〇〇人を切っている。就学猶予・免除者数は、以後も着実に減少を続け、平成三年度には一、二〇三人となっている。

 また、義務制実施の前後から、これをめぐる議論の中で、障害の種類と程度に応じた教育を推進するため、就学指導の充実と学校や社会における心身障害児の理解が新たな課題となり、文部省では、巡回就学相談活動事業費補助(五十六年度から)、心身障害児理解推進校の指定(五十四年度から)等の事業を行い、その充実、促進を図った。

国際障害者年と障害者対策に関する長期計画

 昭和五十六年は、国際連合により「国際障害者年」とされ、五十七年には平成四年までの十年間が「国連障害者の十年」と指定された。こうした動きを受け、国内では昭和五十七年三月「障害者対策に関する長期計画」、五年後の六十二年には「同後期重点施策」が決定された。行政の各般にわたる方策の中で、教育関係では、教育内容・方法の改善、学級編制・教職員定数の改善、地域社会の人々との交流の拡大などが提唱され、逐次実施に移された。

早期教育と後期中等教育の充実

 養護学校義務制の実施後の課題の一つは、義務教育前の早期教育の充実と義務教育後の養護学校高等部の整備であった。昭和五十五年に設けられた特殊教育研究調査協力者会議は、五十七年に「心身障害児に係る早期教育及び後期中等教育の在り方」の報告を行った。養護学校高等部は各県において徐々に整備され、平成三年三月現在で養護学校中学部卒業者の進学率は、ようやく七〇%を超えた。なお、盲・聾学校ではつとに九〇%を超えている。医療、福祉関係機関との連携の下における早期教育体制とともに、今後ともその一層の整備が望まれている。

軽度障害児の教育の充実

 養護学校の義務制実施に伴う行政施策の中心は、それまで学校教育の対象とされなかった重度・重複障害児対策であった。こうした中で、特殊学級の児童生徒数は減少を続け、平成三年には七万四、〇〇〇人余となっている。

 軽度の障害児の教育の充実策は臨時教育審議会の第三次答申等においても提唱されているが、かねてからの懸案であった通級による指導の充実については、その方策を探るため「通級学級に関する調査研究協力者会議」を設け調査研究を行った結果、四年三月、言語障害、難聴、弱視等を対象として、通級の制度化等を提言した。

 また、この調査研究協力者会議においては、いわゆる学習障害児問題についても調査研究の対象とし、学習障害に関する基礎的な研究を行うとともに、これを取り巻く特別な援助を必要とする児童生徒を含めて指導方法に関する実践的な研究を実施することなどを提言した。

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