三 第三次の幼稚園教育振興計画と条件整備

 その後の核家族化、少子化、都市化等幼児を取り巻く環境の変化は、幼児の生活にも大きな影響を与え、家庭や地域社会において幼児による集団での遊び、自然との触れ合いをはじめとする直接体験等、幼児期の大切な学習の機会や場が得にくくなり、三歳児から幼稚園に就園させたいとする要請が高まってきた。また、昭和六十二年度の文部省の調査によれば、幼稚園の未設置市町村は全市町村の二八・九%に当たる九四八市町村であった。

 文部省はこのような社会の変化や父母の要請等を踏まえ、平成三年度を初年度とし十三年度当初までの十年間で三歳児を含め、入園を希望するすべての幼児を就園させることを目標とする第三次の幼稚園教育振興計画要項を策定した。各市町村においてはこの要項の趣旨に沿って幼稚園教育振興計画を定め、各都道府県においてはこの各市町村の計画に基づいて都道府県としての幼稚園教育振興計画を定めるよう要請した。そして、この計画の円滑な推進を図るため、三年度から幼稚園就園奨励費補助金の対象を新たに三歳児まで拡大した。

 また、二年度から実施された幼稚園教育要領の趣旨に沿い、一人一人の特性に応じ行き届いた教育を推進するため、二年度から、幼稚園が一学級の定員を三五人以下に引き下げることに伴って園舎の増築が必要となる場合の経費を補助対象とした。さらに、三五人学級の実現のための措置として公立幼稚園の運営費に関する地方交付税の算定基準を改善し、私立幼稚園の経常費助成費補助の補助単価も改善した。

 なお、幼稚園と保育所との在り方については、昭和六十二年の臨時教育審議会第三次答申において、「幼稚園・保育所は就園希望、保育ニーズに対応できるよう、それぞれの制度の中で整備を進める」、幼稚園については、保育所の整備が進んでいない地域などにおける時間延長、保育所については、幼稚園の整備の進んでいない地域などにおける私的契約による幼児の入所など、「両施設の運用を弾力的に進め、家庭や社会の要請、変化に柔軟に対応する」等の提言が行われた。前述の第三次の幼稚園教育振興計画は、この答申の趣旨を具現化するために策定したのである。

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