二 昭和六十年の理産審答申と学習指導要領の改訂

 昭和五十年代後半に入ると、情報・通信技術の飛躍的発達を背景に、あらゆる産業分野における情報化の進展をはじめ、エレクトロニクスやバイオテクノロジー等の先端技術を中心とした技術革新やサービス経済化などが進展するとともに、高等学校への進学率は九〇%を超え、生徒の能力・適性等はより一層多様化するようになった。このため、高等学校教育としては基礎・基本を重視しつつ専門教育の充実を図り、また教育課程の大幅な多様化・弾力化を行うなど、時代の変化に適切に対応した職業教育が求められるようになった。このような状況を受け、理科教育及び産業教育審議会は、六十年、「高等学校における今後の職業教育の在り方」について答申を行った。

 この答申においては、1)情報化、サービス経済化、バイオテクノロジー、新素材への対応(情報に関する基礎的科目等時代の進展に対応した科目の新設など)、2)教育課程の多様化・弾力化(特色ある教育課程の編成など)、3)職業教育実施に当たっての協力・連携の推進(学校・学科間の協力、地域社会等との結び付きなど)、4)普通科における職業教育の充実等について提言が行われた。

 文部省においては、これらの提言を具体化し、「福祉科」、「国際経済科」等の新しい学科のモデル例や、情報やバイオテクノロジーに係る教育の基本的な考え方や指導内容等について関係者に提示した。また、平成元年の学習指導要領の改訂においては、「農業情報処理」、「水産情報処理」、「家庭情報処理」及び「看護情報処理」を新たに設けるなど教育内容の改善や科目構成の見直しを行うとともに、「情報科学科」、「産業技術科」、「福祉科」など新しいタイプの学科や複数の専門分野にまたがる学科を設置者において積極的に設置できることを明確に示した。また、問題解決能力や自発的・創造的な学習態度を育成するための学習を一層重視し、看護を除く職業に関する各教科に新しい科目として「課題研究」を設けた。

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