五 平成元年の学習指導要領

 平成元年の学習指導要領の改訂においては、昭和三十三年度に道徳の時間が設けられて以来初めての大幅な改善を行った。その重点としては以下の点が挙げられる。1)道徳の内容の再構成。小・中学校共通に、道徳性を、主として自分自身に関すること、主として他の人とのかかわりに関すること、主として自然や崇高なものとのかかわりに関すること、主として集団や社会とのかかわりに関することの四点からとらえ、その視点から内容項目を分類整理して示し、発展的・系統的な指導が一層充実するよう配慮した。2)道徳の内容の重点化。全学年で道徳の内容を網羅的に指導することを改め、児童生徒の道徳性の発達段階に応じて、例えば、小学校低学年ではしつけなどの基本的生活習慣、中学年では日常の社会規範を守る態度、高学年では公共に尽くそうとする態度、また、中学校では人間としての生き方の自覚などに留意して、内容を精選し重点的に示した。3)全体計画の作成等の強化。各学校において必ず道徳教育の全体計画を作成することとし、学校の教育活動全体を通じて行う道徳教育と道徳の時間との関連を深め、指導の効果を高めるようにした。また、例えば、国語科では道徳性を養うことに資する教材が取り入れられるよう、教材選定の観点を示すなど、各教科等の特質に応じた道徳教育の充実を図った。4)学校・家庭・社会の連携の重視。学校は家庭や地域社会と連携を深め、豊かな道徳性の育成を図るよう配慮することとした。

 こうした新学習指導要領の趣旨の具体化を図るため、文部省では、従来から行っている道徳教育の施策に加えて、平成二年度から新たに教員のための指導資料として、道徳教育推進指導資料(指導の手引とビデオ資料)の作成配布を行った。

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