二 教育課程の改善

 中央教育審議会答申の提言のうち、学校体系の開発のための先導的試行については、なお検討すべき課題も多く、具体的な実施には至らなかった。しかし、その他については、おおむね提言の線に沿って、具体的施策として実施に移された。また、臨時教育審議会答申の提言についてもその後、単位制高等学校の創設、定時制・通信制課程の修業年限の弾力化、教科書制度の改革、教育内容の改善などその具体化が図られた。

 これらの二つの答申は共通して、教育内容と教育方法の改善の必要性を指摘しているが、教育の質の向上のためにカリキュラム改革が重要であることは、つとにOECDの教育大臣会議でも指摘されており、一九七〇年代、八〇年代を通じて、多くの先進諸国において教育改革の一環としてカリキュラム改革が重視された。我が国でもこうした動向を視野に入れ、学校教育の質の向上を目指して、この二十年間に二度にわたって、教育課程の全面的な改訂を行った。なお、厳密には、学習指導要領の改訂等は、教育課程の基準の改訂であるが、本章では便宜上、教育課程の改訂と略記する。

 特に昭和五十年代の教育課程の改訂は、学校生活における「ゆとりと充実」の実現を目指すものであった。それまでの教育課程が科学・産業・文化などの進展に対応して、教育内容の充実を図り、国際的にも高い学力水準を達成させたが、反面、学習内容の量的な増大を来し、また程度も高くなり過ぎているとの指摘を招いた。五十二・五十三年の学習指導要領の改訂は、このような状況を改善するために行われたものであり、知識の伝達に偏りがちな状況を改め、自ら考え主体的に判断し行動できる児童生徒の育成を目指して、教育内容の精選と授業時数の大幅な削減が行われた。

 また、六十年代に入って行われた教育課程の改訂は、臨時教育審議会答申が指摘する個性重視、生涯学習、変化への対応等を踏まえ、特に二十一世紀に向かって国際社会に生きる日本人の育成を図ることを目指すものであった。平成元年に幼稚園教育要領及び小・中・高等学校の学習指導要領が全面改訂されたが、ここでは生涯学習の基礎を培うという観点から、社会の変化に主体的に対応できる心豊かな人間の育成を図ることが基本とされた。

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