一 教育の量的拡大に伴う質的変化

 戦後の新しい学校制度の下で、教育の民主化と機会均等の理念の実現を目指して、教育の量的拡大は目覚ましい進展を見せた。

 義務教育については昭和三十年代前半までにほぼ定着し、小学校児童数及び中学校生徒数は、出生数の動向に対応して変動した。すなわち、小学校児童数は、第一次ベビーブームの影響を受けて三十三年に戦後最大となり、その後四十三年までは減少を続けたが、以後増加に転じ、五十六年には第二次ベビーブームによるピークを迎えた。また、中学校生徒数についても同様に、三十七年及び六十一年にベビーブームの影響によるピークを迎えている。

 一方、高等学校については、ベビーブームの影響に併せ、経済成長を背景とした進学率の急激な上昇により、三十年代後半に生徒数は急激に増加し、四十一年から四十七年までは緩やかに減少したが、以後六十年代前半にかけて増加を続け、高等学校はほとんどの青少年が学ぶ国民的な教育機関として定着した。

 こうした教育の量的拡大は、当然に教育の質的変化をもたらし、四十年代後半からの二十年間の学校教育は、量の拡大に伴う質の変化にどう対応するかが大きな課題となってきた。この間の初等中等教育に関する施策に基本的な方向を示したのは、一つは四十六年の中央教育審議会の答申であり、いま一つは六十年から六十二年の臨時教育審議会の答申であった。

 まず、四十六年の中央教育審議会答申では、初等中等教育改革の基本構想として、人間の発達過程に応じた学校体系の開発とその先導的試行、学校段階の特質に応じた教育課程の改善、多様なコースの適切な選択に対する指導の徹底、個人の特性に応じた教育方法の改善、公教育の質的水準の維持向上と教育の機会均等の保障、幼稚園教育の積極的な普及充実、特殊教育の積極的な拡充整備などについて様々な提言が行われた。

 また、四次にわたって出された臨時教育審議会答申では、個性重視の原則、基礎・基本の重視、創造性・考える力・表現力の育成、選択の機会の拡大、教育環境の人間化、生涯学習体系への移行、国際化・情報化への対応を基本原則として、初等中等教育に関しては、六年制中等学校・単位制高等学校の創設、徳育の充実、教育内容の改善、高等学校の修業年限の弾力化、教科書制度の改革、高等学校入学者選抜方法の多様化・個性化、就学前教育及び障害者教育の振興、学校の活性化に向けての開かれた学校など多岐にわたる改革の提言が行われた。

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