二 臨時教育審議会の発足

 教育改革についての検討を文部省の下で進めていくのか、それとも文部省の枠を越えて政府全体の取組の中で進めていくのかという点はなお関係者の間に種々の意見もあったが、昭和五十九年二月に行われた第一〇一回国会における総理大臣施政方針演説及び文部大臣の所信において、総理大臣の諮問に応じ、教育改革について調査審議する新たな機関を設けることが示された。教育問題について総理大臣直属の審議機関が設けられたのは第二次大戦前にも数回あり、戦後も教育刷新委員会の例がある。その後は文部省の中央教育審議会が中心となって進められてきたが、臨時教育審議会は政府全体の責任で長期的展望に立って教育改革に取り組むため、総理大臣の諮問機関として設置されることになった。

 五十九年三月「臨時教育審議会設置法案」が国会に提出され、政府原案を一部修正の上、同年八月七日成立、翌八日公布、二十一日施行された。

 同法の概要は次のとおりである。

 (一)社会の変化及び文化の発展に対応する教育の実現を期して教育基本法の精神にのっとり、各般にわたる施策につき必要な改革を図ることにより、教育の目的の達成に資するため、臨時教育審議会を総理府に置く。

 (二)審議会は、内閣総理大臣の諮問に応じ、教育及びこれに関連する分野の諸施策に関し必要な改革を図るための方策に関する基本的な事項について調査審議して答申するとともに、意見を述べることができる。また、内閣総理大臣は、この答申又は意見を尊重しなければならない。答申又は意見は、国会に報告するものとする。

 (三)審議会は、人格識見共に優れた者のうちから、文部大臣の意見を聴き、両議院の同意を得て、内閣総理大臣が任命する二五人以内の委員をもって組織する。また、審議会には、専門の事項を調査審議させるため専門委員を置くことができる。

 法律が施行された八月二十一日に、委員二五人の任命及び会長の指名が行われ、また同年十二月には、二〇人の専門委員が任命された。

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