第五節 産業教育

産業教育振興法の制定

 かつて実業教育を主に担ってきた実業学校・青年学校や国民学校高等科は新制度において一部は新制中学校へ、大部分は新制高等学校の全日制又は定時制へ移行された。しかし、戦後の混乱と物資の不足等から義務制となった新制中学校の施設・設備は不十分であり、また、総合制の原則を採ったために独立の職業高等学校は減少した。その結果、職業科への入学志願者は一般に減少し、普通科を希望する者が多くなり、新しく職業に関する学科を設置した総合高等学校の設備も不十分で職業教育の実施は極めて困難な条件の下に置かれていた。

 このような中、昭和二十一年十一月「職業教育及び職業指導委員会」が設置され、職業教育の振興に関する数々の提言を行った。また二十四年五月には文部省に職業教育課が新設され、中学校、高等学校における職業教育を担当することになった。さらに、教育刷新委員会も、二十四年六月「職業教育振興方策」を建議した。

 職業教育に対する国庫補助は戦後の財政改革により、二十五年度から打ち切られた。そこで全国の農業・工業・商業・水産の各高等学校長会は、法律制定による職業教育の振興を目指して二十五年十二月職業教育法制定推進委員会を結成し、全国的に運動を展開した。この運動は、次第に世論の支持を得て、議員立法として二十六年六月産業教育振興法が公布された。

 この法律によって設けられた中央産業教育審議会は、産業教育施設・設備の基準や産業教育の総合計画樹立などについて、答申や建議を行った。

中学校・高等学校の職業教育

 中学校には「職業科」が設けられ、農業・商業・水産・工業・家庭が各々一科目としてその中に置かれ、生徒はそのうち一科目又は数科目を学習することになっていた。その後昭和二十四年十二月局長通達で、職業科は「職業・家庭科」に改められ、その内容は、実生活に役立つ仕事を中心として構成されることとなった。なお中学校における職業指導を振興するため、二十八年関係省令の改正により中学校に職業指導主事を置くことが規定された。

 高等学校の学科は、二十三年一月高等学校設置基準によって普通教育を主とする学科と専門教育を主とする学科とに分けられ、後者は更に農業・水産・工業・商業・家庭・厚生・商船等に関する学科に分けられた。

 高等学校の教育課程について文部省は、二十二年四月「新制高等学校の教科課程に関する件」を通達し、更に二十四年一月「高等学校教科課程中職業教科の改正について」を発表した。その後これらは、二十六年七月改訂の学習指導要領一般編(試案)にまとめられた。また教科目の内容は、農・工・商・水産・家庭別に、それぞれ高等学校学習指導要領教科編(試案)で示された。

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