序説

 明治五年に学制を公布して近代教育制度を創始してから、本年は百二十年目に当たる。この間、我が国の教育は、量的にも、また質的にも著しい発展を遂げ、経済社会の発展の基礎となってきた。

 しかし、今日までの教育の歩みは決して平坦(たん)な道のりではなく、百二十年の間に、我が国は幾多の教育課題に直面し、その都度解決を図りつつ教育を整備・拡充してきたのであって、数次の大きな改革も経験している。

 本書は、学制公布百二十年を記念し、教育のみならず学術・文化・スポーツを含め、文部省の施策を中心に年代を追って記述することにより、この間の教育・学術・文化・スポーツがどのような経過をたどって発展してきたのかを明らかにし、今後の一層の発展に資することを目的としている。

 昭和四十七年には学制百年史が文部省から刊行され、学制公布以来百年間の教育・学術・文化の発展過程をまとめているので、本書の編集に当たっては、学制百年史の成果の上に立ち、昭和四十七年から現在までの二十年間の記述に重点を置くこととし、昭和四十六年までの記述は学制百年史の内容を精選・集約することを基本方針とした。したがって、昭和四十六年までの詳細については、学制百年史を参照されたい。

 記述に当たっては、まず、学制百年史に倣い、第二次世界大戦後の占領期における教育改革をもって時代を区分し、幕末維新期から昭和二十年の終戦までを第一編とし、次いで昭和二十年の終戦後から昭和四十六年までを第二編とした。

 第一編は、近代教育制度の発足と拡充の時期であり、これを更に三区分し、幕末維新期を序章、明治五年から大正五年までを第一章、大正六年から昭和二十年の終戦までを第二章とし、これに第三章として学術・文化を加えた。

 第二編は、戦後教育改革と教育制度の発展の時期であり、これを更に、昭和二十年の終戦から二十七年の独立までの第一章と昭和二十七年から四十六年までの第二章に分け、学術・文化を第三章とした。

 次いで、昭和四十七年以降現在までを第三編とし、教育・学術・文化・スポーツの進展と新たな展開について記述した。この時期は、昭和四十六年に出された中央教育審議会答申「今後における学校教育の総合的な拡充整備のための基本的施策について」及び同年の社会教育審議会答申「急激な社会構造の変化に対処する社会教育のあり方について」を受けて、文部省において種々の施策を実施に移した時期であり、また、その後も臨時教育審議会をはじめとして各種の審議会等から数々の改革提言がなされ、これを受けて教育改革が推進されてきた時期である。このため、第一章において、この時期の教育改革の流れをまとめて記述し、その上で、第二章以下において、学校段階別及び分野別に二十年間の発展過程を詳述した。最後に結語を記し、戦後四十五年を視野に入れ、特に将来の課題を含めて最近二十年間の歩みをまとめた。また、資料編には、最近二十年間のものを中心に基本的な資料を収録した。

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-- 登録:平成21年以前 --