(四) 教育刷新委員(審議)会(抄)

 第一回建議事項(昭和二十一年十二月二十七日建議)

 一 教育の理念及び教育基本法に関すること

 一 教育基本法を制定する必要があると認めたこと。

 二 教育理念は、おおよそ左記のようなものとして、教育基本法の中に、教育の目的、教育の方針として、とりいれること。

 1 教育の目的

 教育は、人間性の開発をめざし、民主的平和的な国家及び社会の形成者として、真理と正義とを愛し、(個人の尊厳をたっとび、勤労と協和とを重んずる、心身共に健康な国民の育成を期するにあること。

 2 教育の方針

 教育の目的は、あらゆる機会とあらゆる場とを通じて実現されナければならない。

 この目的を達成するためには、教育の自律性と学問の自由とを尊重し、現実との関連を考慮しつつ、自発的精神を養い、自他の敬愛と協力とによつて、文化の創造と発展とに貢献するように努めなければならないこと。

 三 教育基本法には、この法律の制定の由来、趣旨を明らかにするため、前文を付することとし、その内容はおおむね左のようなものとすること。

 1 従来の教育が画一的で形式に流れた欠陥を明らかにすること。

 2 新憲法の改正に伴う民主的文化国家の建設が教育の力にまつことを述べ、新教育の方向を示すこと。

 3 この法律と憲法及び他の教育法令との関係を明らかにすること。

  4教育刷新に対する国民の覚悟をのべること。

 四 教育基本法の各条項として、おおむね左の事項をとりいれ、新憲法の趣旨を敷えんすることともに、これらの事項につき原則を明示すること。

 1 教育の機会均等

 2 義務教育

 3 女子教育

 4 社会教育

 5 政治教育

 6 宗教教育

 7 学校の性格

 8 教育の身分

 9 教育行政

 五 前項に示した教育基本法の各条項の内容については総会、各特別委員会の審議の結果をとり入れること。

 六 文部省において、右の趣旨に則って、教育基本法案を作成されること。

 二 学制に関すること一 国民学校初等科に続く教育機関について

 1 国民の基礎教育を拡充するため、修業年限三カ年の中学校(仮称)を置くこと。

 2 右の中学校は、義務制とすること、全日制とすること、男女共学にすること。

 3 校舎は、独立校舎とすること。

 4 校長及び教職員は、専任とすること。

 5 各市町村に設置すること。

 6 教育の機会均等の趣旨を徹底させるため、国民学校初等科に続く学校としては、右の中学校のみとすること。

 7 右の中学校制度は、昭和二二年四月からこれを実施すること。

 8 右の実施に関しては、適当な経過的措置を講ずること。

 二 中学校に続くべき教育機関について

 1 三年制の高等学校(仮称)を設ける。但し、四年制五年制のものを設けても差支えないこと。

 2 右の高等学校には、全日制のものと定時制のものとあること。

 3 右の高等学校は、必ずしも男女共学でなくてもよいこと。

 4 右の高等学校は、普通教育並びに専門教育を行うものとすること。

 5 男女十八歳未満の者は、一カ年一定時間の普通教育を受けるものとすること。

 三 高等学校に続く教育機関について

 1 高等学校に続く学校は、四年の大学を原則とすること、但し、大学は三年又は五年としてもよい。

 2 大学には研究科又は研究所を設けることができること。この研究科又は研究所は、大学を卒業して後特に学問の研究をなす者を収容するものとすること。

 四 教員養成について

 教員の養成は、綜合大学及び単科大学において、教育学科を置いてこれを行うこと。

 三 私立学校に関すること

 私立学校の基礎を確実にするには、学校経営主体の健全な発達を助成し、これに公共的民主的性格を付与するため、これを民法法人とは別個の特別法人とすることが望ましい。

 このためには、学校法人法を制定し、次の諸点を考慮すること。

 1 教育上支障のない限り、収益を学校経営に使用する目的をもつて、収益を伴う事業を行うことができること。

 2 理事には教育者側の代表を含めること。

 3 評議員会を設置して、理事会の諮問に応じ又は理事会に意見を具申することができるような民主的方法を講ずること。

 4 教職員を法令によって公務に従事する職員とみなすこと。(留保)

 5 免税免租その他の財政的援助を与えることができるようにすること。

 6 法人に対する主務官庁の解散権、役員に対する主務官庁の解任権を認めること。前項の処分については訴願訴訟の双方を認め、訴願又は訴訟が提起されたときは、処分の執行を停止すること。

 7 私学団体より選ばれた代表者を含む委員会を作り主務官庁の監督について諮問に応じ又は意見を具申することができるようにすること。

 8 主務官庁のなす監督については、第三特別委員会の決定する線に沿うこと。

 四 教育行政に関すること

 一 教育行政は、左の点に留意して、根本的に刷新すること。

 1 従来の官僚的画一主義と形式主義との是正

 2 教育における公正な民意の尊重

 3 教育の自主性の確信と教育行政の地方分権

 4 各級学校教育の間及び学校教育と社会教育の間の緊密化

 5 教育に関する研究調査の重視

 6 教育財政の整備

 二 右の方針にもとづき、教育行政は、なるべく一般地方行政より独立し且つ国民の自治による組織をもつて行うこととし、そのために、市町村及び府県に公民の選挙による教育委員会を設けて教育に関する議決機関となし、教育委員会が教育総長(仮称)を選任してこれを執行の責任者とする制度を定めること。これらの機関は、一般に管内の学校行政及び社会教育を掌り、学校の設置、廃止、管理、教育内容、人事、教育財政等の権限を持つが、一般地方行政、特に地方財政と関係する点も深いから、実施に当つては円滑な運営を特に考慮すること。一般教育機関に関する事項については、府県単位では狭少にすぎるため、又各府県の間の教育内容、教育財政の不均衡を是正し人事の適正を図るため、数府県を一単位として、地方教育委員会及び地方教育研究所を設ける。地域内の各府県の教育委員会の委員が地方教育委員会委員を選任するものとし、基礎を地方の公民に置き、又地方教育研究所は、現実に即して教育に関する調査研究を行い、その成果を市町村及び府県教育当届に勧奨するものとする。なお、中央においても、文部大臣の諮問機関として、中央教育委員会を設け、重要問題の審議に当るものとする。

 三 機関を図示すれば、左の通りである。

 1 市町村機関

 2 都道府県機関

 3 地方機関

 参考 教育財政
 1 教育委員会に対して、その地方の教育費として必要な金額を府県又は市町村の一般財政に計上することを請求する権限を認めること。
 2 義務教育の経費は、地方において負担することを適当とするも、地方財政の現状に鑑みて、当分の間その大部分を国庫負担とすること。
 3 地方教育委員会に対して、府県の教育費の不均衡を是正する基金を国庫より支出すること。
 4 従来地方教育費の増額すべきことを考慮して、地方の財源を養うための適当な租税種目を地方に委譲すること。
 5 国及び地方公共団体は、教育の経費に充当するために、基本財産を保有することに努めねばならないこと。
 第二回建議事項(昭和二十二年一月七日建議)
 六・三義務教育制度昭和二十二年度実施について 略
 第三回建議事項(昭和二十二年四月十一日建議)
 一 私学の振興に関すること
 二 新制高等学校の程度に関すること
 三 現在の高等専門学校における専攻科の併置について
 四 新制大学の課程及び転学に関すること
 五 教員の資格に関すること
 以上略
 六 教員の身分待遇及び職能団体に関すること
 一 教員の特殊な使命に鑑み、教員の身分を保障し待遇の適正をはかり以つて、教員をして、その職責の遂行を完からしめるため、政府は速かに教員身分法(仮称)を立案すること。
 二 教員身分法の立案に当つては大体次の諸点を考慮すること。
 1 本法の目的
 教員の特殊な身分を考え、官公私立学校を通じて教員の種類、任用、資格、分限、服務、懲戒、給与その他の待遇について一般公務員に対する特則を設けること。
 2 教員の定義及び身分
 右の教員は学校教育法の定める学校の教員をいうのであって、官公私立の学校を通じて教員はすべて特殊の公務員としての身分を有するものとすること。
 3 教員の区分及び種類
 教員には等級を分たず小学校、中学校及ぴ高等学校には学校長、教諭及び助教諭を大学には大学長、教授、助教授及び助手(仮称)等を置くものとすること。
 4 任用資格
 教員は一定の教員資格を有し、一定の欠格事由のない者の中から任用するものとすること(第八特別委員会の審議の結果をとり入れること)。
 5 任用手続
 教育行政機講に関する審議(第三特別委員会の審議)の結果をとり入れること。
 6 身分の保障
 教員は刑法の宣若若しくは懲戒処分又は教員審査委員会の結果による場合の外は、一定の事由によるものでなければその意に反してその職を免ぜられることはないものとすること。
 7 休職の制限
 教員は一定の事由によるものでなければ、その意に反して休職を命ぜられることはないものとすること。
 8 減俸の制限
 教員は懲戒処分による場合の外は、その意に反して減俸せられることはないものとすること。
 9 転職及び転任の制限
 教員は懲戒処分又は教員審査委員会の結果による場合の外は、その意に反して転職を命ぜられることはないものとすること。
 教員は配置の適正を期するため必要ある場合にかぎり転任を命ぜられることがあるものとすること。
 10 教員の審査
 不適当な教員を整理し又は教員の不適正な配置を排除するため教員はすべて任命後一定期間毎に教員審査委員会に付せられるものとすること。
 右の外一定の必要ある場合には教員は随時審査に付せられることがあるものとすること。
 11 教員服務規律
 官吏服務規律に準ずると共に教員の特殊性に鑑み一定の特別を設けること。
 12 研究及び教育の自由の尊重
 13 再教育又は研修の機会の賦与
 14 懲戒の方法及び懲戒罰
 懲戒は教員審査委員会の議により行うものとし、懲戒罰は免職、転職、減俸、けん責等とすること。
 15 俸給、昇給、恩給
 官吏と同等とする外職務の性質に鑑み、教員には職務俸として一定額以上の研究費を支給すること等の特例を設けること。
 三 教員は、その特殊な身分に基き労働組合法による組合とは別に、職能団体として左のようた教育者の団体(仮称教育者連盟)を作ることが望ましい。
 1 目的
 教育者としての品位を保ち、研究と修養に励み、教育者相互の切さと扶助により、職能の向上と福祉の増進を期し、学生及び社会への貢献をはかり、以つて教育の振興に寄与すること。
 2 組織
 小学校、中学校、幼稚園については、市(六大都市においては区にも)、町村(数ケ町村が結合しても可)単位として、これを組織し、高等学校、大学については都道府県単位にそれぞれこれを組織し、これ等の団体を連合して都道府県の団体を作り、更に各部道府県の団体を連合して全国的の団体を作ること。
 3 構成員
 現職の教員を原則とする。
 4 教員身分法との関係
 右の目的、組織、構成員等については簡明に教員身分法の中に規定すること。
 なお、教員審査委員会は、教育者連盟より選出した若干名の委員を加えて構成すること。
 四 教員が教育者連盟とは別に労働組合法による教員組合を組織することは妨げないが、教員組合が止むを得ず争議行為を行う場合においても、なるべくストライキはこれを回避することが望ましい。
 七 文部大臣と教員組合との間に締結した労働協約について
 さきに文部大臣と全教協及び教全連との間に締結された労働協約について、教育刷新委員会は、左のような内閣総理大臣宛建議をすること。
 昭和二十二年三月文部大臣と全日本教職員組合協議会並びに教員組合全国連盟との間に締結された労働協約は、本委員会が第三特別委員会並びに第六特別委員会の報告に基きて採択せる方針と趣旨を異にする点少からず、且づ日本教育会改組の方針とも適合せざるものあるを以って、政府は教育行政組織並びに教員の身分待遇及び教育者連盟に関する本委員会の決議の趣旨に基きて適当に差処し、速かに教育行政の民主化並びに教員の身分待遇の適正化及び智能の研磨徳操のかん養等教員の職能の向上の実現方に努力せられむことを望む。
 第四回建議事項(昭和二十二年六月十六日建議)
 義務教育延長に伴う緊急措置について 略
 第五回建議事項(昭和二十二年七月二十三日建議)
 文教施設の整備に関すること 略
 第六回建議事項(昭和二十二年十一月六日建議)
 一 教員養成に関すること(その一)
 一 小学校、中学校の教員は、主として次の者から採用する。
 1 教育者の育成を主とする学芸大学を修了又は卒業したる者
 2 綜合大学及び単科大学の卒業者で教員として必要な課程を履修した者
 3 音楽、美術、体育、家政、職業等に関する高等専門教育機関の卒業者で、教員として必要な課程を兼修した者
 二 高等学校の教員は、主として大学を卒業した者から採用する。
 三 幼稚園の教員は、大体「一」に準じて採用する。
 四 盲学校、ろう学校の教員並びに養護教員は、大体「一」に準ずる。
 五 現在の教員養成諸学校中、適当と認められるものは学芸大学に改める。但し、臨時措置に関しては、別に対策委員会を設けてこれを審議する。
 六 教員養成諸学校の教員養成のためにする学資支給制指定義務制は廃止する。教員の配当計画について、別に考慮する。
 七 教員の養成に当たる学校は、官公私立のいずれとすることもできる。
 八 教育者の育成を主とする、学芸大学の前期を終了したものは、小学校教員となることができる。右の者は後日、希望によつては復学して後期の課程を修めることができる。復学せずに通信教授または所定の講習会を完了したものは、考査の上、その大学の卒業者とすることができる。
 九 以上の教員養成諸制度が充実するまでの応急措置として、取りあえず、現在制度の大学専門学校の卒業者が多数教職につくよう、また現在すでに退職し、あるいは転職している有資格者が再び教職につくよう特に勧誘することを文部当局に希望する。
 十 教員の再教育については、組織的制度を設けることを文部当局に希望する。
 十一 教員資格に関しては別に考慮する。
 二 教員養成に関すること(その二)
 一 教員検定の方法
 大学の課程を修了又は卒業した者を定期間教諭試補として実務につかせ、教員として必要な事項について指導研修させ、所定期間終了後教員検定委員会が左記の資料等に基いてその人物、学力、身体について検定し合格者に教諭免許状を授与する。
 1 出願者の報告
 2 関係教員の意見を徴して作製した在職学校長の意見書
 3 卒業学校長からの人物、学力、身体についての調査書
 二 教諭試補期間
 1 教職課程を履修した者は実務従事期間六カ月
 2 教職的課程を履修しなかつた者は教職的課程に関する相当期間の教育修了後実務従事期間六カ月
 但し臨時措置として
 (1) 教職的課程を履修した者は、実務従事期間六カ月
 (2) 教職的課程を履修しなかった者は、実務従事期間一カ年
 三 音楽、美術、体育、家政、職業等に関する高等学校(五カ年以上)又は高等学校専攻科(二カ年以上)の卒業者は「一」に準ずる。
 四 教員検定委員会
 教員検定委員会は都道府県にこれを設け、都道府県内の小学校、中学校、高等学校及び幼稚園の教員の資格を検定する。但し当分の間高等学校の教員資格は中央教員検定委員会が検定する。
 都道府県教員検定委員会は、都道府県監督庁に属し教育関係職員及び学識経験者を以つて構成する。
 五 助教諭の資格は高等学校卒業以上とする。
 第七回建議事項(昭和二十二年十一月二十四日建議)
 六・三制義務教育制完全実施について 略
 第八回建議事項(昭和二十二年十二月八日建議)
 第一回建議中「学制に関すること」の追加
 「二 学制に関すること」
 1 幼稚園を学校体系の一部とし、それに従つて幼稚園令を改正すること。
 尚五歳以上の幼児の保育を義務制とすることを希望する。
 2 学齢児童は心身に異常があつて特別の方法によりその能力に応じて有効なる教育を受けられる状態にあるときは、就学の義務の猶予又は免除されないこと。
 3 右の就学の義務の猶予又は免除は地方長官が児童鑑別所の鑑定に基いてこれを決定すること。
 第九回建議事項(昭和二十二年十二月二十七日建議)
 大学の地方委譲、自治尊重並びに中央教育行政の民主化について
 一 現在の国立綜合大学を除き全面的に地方に委譲することは、左記の理由により不可能である。但し現在において地方に委譲することが、適当なるものについてはこれを実行し尚将来、都道府県の実力の充実に応じ適当と認められるものは、でき得る限り地方に委譲することとし同時に教育の官僚的統制と中央集権を避けその民主化を図る方法を講ずること。
 二 大学を地方に委譲することを不可能とする理由左の如し。
 1 都道府県又は市に設置される地方教育委員会は日本の現状から考えて大学の任務遂行の理念について十分な理解を持つ水準に到達しているとは考えられず、且つ又地方政治的利益本位的事情に動かされ易く、大学の自由とその自治を保障することが困難であり、中央で所管する以上の危惧の念が生ずる。
 2 日本の大学、高等、専門学校は官立、公立、私立を問わず従来常に全国的な視野に立ち、全国的な需要に基いて配置されて来た。今、官立学校を一挙に地方に委譲する場合には日本の国土計画乃至優秀な社会人、職業人の養成計画などに全面的な見透しが不可能となり地方によつて非常な偏頗化を生ずるおそれがある。
 3 都道府県及び市の財政面から見て地方費によつて大学を維持することは極めて困難である。たまたまその地に所在するゆえを以つて現在の国立大学、高等、専門学校をその地方に委譲することは、義務教育又は高等普通教育におけるが如き共通的一般性がないため一般の税制改革地方分与税の改正によつてもその維持は困難である。
 目下教育に関する財政は六・三制の遂行にも困難を感じて居り、これ以上の負担をかけることは地方に混乱を来すおそれがあり、ひいては大学の健全な発展と向上は期待出来ない。
 三 大学の自由を尊重しその運営の自治を認めること。
 四 教育を民主化し且つ広く国民文化の向上を図るため中央教育委員会を設置すると共に、新たに文化省(仮称)を設け学校教育、杜会教育、体育、学術、芸能、宗教その他文化に関する一切の事項を管掌し、現在の文部省はこれに統合すること。
 五 中央教育委員会の組織及び権限は左の如くする。
 1 組織
 中央教育委員会の定員は十五名とし、その選任は左の如き方法に依ることとする。
 (1) 委員中六名については、各都道府県内の教育委員会の委員の中より二名ないし正名(県の大小に準じ)の選挙人を選挙し、この選挙人が十二名の中央教育委員候補者を選定し、文化大臣(仮称)はその内より六名を指名する。
 地方教育委員会委員は中央教育委員会委員を兼ねることができない。
 (2) 中央委員中二名は、衆議院及び参議院より、その議員中より、各一名ずつを指名する。
 (3) 委員中七名は文化大臣(仮称)これを推薦し、国会の承認を得ること。
 中央教育委員の任期は四年とする。但し、1号委員中の三名及び3号委員中の三名の最初の任期は二年とする。
 委員は重任することができる。
 2 権限
 文化大臣(仮称)は左記の事項について中央委員会の審議を経ることを要する。
 (1) 学校教育に関する基本方針
 (2) 学校施設の基準
 (3) 教員資格の基準
 (4) 社会教育及び文化事業に関する基本方針及び援助
 (5) 教育予算の大綱及び国庫補助
 (6) 国立学校の設置廃止
 (7) 官公立、私立大学に関する重要な事項
 (8) 委員会は一般に教育文化に関し、その意見を文化大臣(仮称)に建議することができる。
 第十回建議事項(昭和二十二年十二月二十七日建議)
 一 私学振興に関すること
 二 現在の高等学校並びに高等専門学校措置に関すること 以上略
 第十一回建議事項(昭和二十三年一月三十一日建議)
 大学の地方委譲に関すること
 一 現在並びに将来地方に委譲するを適当と認める大学は大体次の諸項に該当するものである。
 1 全国にわたつて同種の学校が存在し、その地方出身の学生が多数を占めるもの。
 2 学校の性格上著しく地方的特色を帯びるもの。
 3 大学の種類にかかわらず地方が委譲を希望するもの。
 二 大学の地方委譲の場合は府県が連合して経営することを認めること。尚一般に日本の現状においては相当の国庫補助を必要とする。
 三 本決議の具体的措置については地方の実状に応じ、その時期及び方法を慎重に考慮するものとする。
 第十二回建議事項(昭和二十三年二月七日建議)
 中央教育行政機構に関すること
 一 学芸省(仮称)設置の根本方針
 従来の文部省は、教育省たるの感が深く、科学、技術、芸術その他教育以外の文化の方面は、ともすると閑却される傾きがあったが、われらはさきに日本国憲法において民主的で文化的な日本国を建設することを内外に宣言したのであって、これがためには左記事項を根本方針として新たに学芸省(仮称)を設置し、これに伴い文部省を廃止することが必要である。
 (一) 学芸省は、科学、技術、芸術、教育その他文化の均整のとれた向上と普及とについて、適切な奨励とあっせんを行う。
 (二) 学芸省は、所管行政については、できうる限り民意を尊重して、国民の創意と活動とを期待し、いやしくも科学、技術、芸術、教育その他文化の実体に干渉を加うることがあつてはならない。
 (三) 学芸省は、その所管行政の運営に当っては厳正公平な独立の立場を保ち、いやしくも、一部の社会的又は政治的勢力によって動かされるようなことがあつてはならたない。
 (四) 学芸省が文化の向上及び普及のために必要とする経費は、国費の分配に当つては、優先的に確保するという原則を確立する。
 二 学芸省の権限
 学芸省の権限は左の如きものとする。
 (一) 学芸省は、科学、技術、芸術、教育、その他文化の向上及び普及に関する事務を所管する。
 (二) 学芸省は、所管行政については、さきに本委員会で決議したところに従い、その基本的事項については、中央教育委員会(仮称)の審議を経ることとする。
 (三) 学芸省は、思想、良心、宗教、言論、出版等の精神活動の自由に関する基本的人権の保障に、不断の関心を払い、科学、技術、芸術、教育その他文化の実体に干渉してはならない。
 (四) 科学、技術、芸術、教育その他文化に関する行政は原則としてこれを学芸省に総合して国民に対する行政の窓口を単純化し、各庁問の権限の重複又は争議のごときことをなからしめる。
 三 学芸省の組織
 学芸省には、大臣官房のほか、
 (一) 文化一般に関する事項を所管する局(例えば文化局)
 (二) 人文科学及び自然科学に関する事項を所管する局(例えば科学局)
 (三) 運動競技、体育等に関する事項を所管する局(例えば体育局)
 (四) 文化に関する各種統計及び調査を所管する局(例えば統計調査局)
 (五) 教育に関する事務的事項を所管する局(例えば教育事務局)
 (六) 教育施設の保全拡充に関する事項を所管する局(例えば教育施設局)等の数局を置く。
 備考 略
 第十三回建議事項(昭和二十三年二月二十八日建議)
 労働者に対する社会教育について 略
 第十四回建議事項(昭和二十三年四月八日建議)
 一 外国著作権の使用について
 二 文化財の導入について
 三 学徒並びに一般文化関係者の海外渡航について 以上 略
 第十五回建議事項(昭和二十三年四月十二日建議)
 一 社会教育振興方策について
 一 国は、教育費の優先支出について考慮し、地方公共団体は、学校教育費とともに社会教育費を飛躍的に増額する。
 二 社会教育関係の立法を急速に実現するとともに、これを裏づける予算的措置を講じ、国費、地方費の継続支出により、社会教育の物的並びに人的条件を整備する。
 三 公民館
 イ 公民館は、市町村の区域を単位として、これを設置し、市町村全住民のための公民教育及び産業指導を行い、かねて健全なる社交娯楽の発達をうながし、もつて社会生活の向上と産業の振興を図ることを目的とすること。但し、都市においては、設立区域を限定しない。
 ロ 公艮館の運営は、市町村公民館委員会をして、これに当らせること。
 ハ 公民館職員に一定の身分を与えること。
 二 公民館は、当該市町村内の社会教育関係団体の事業の連絡調整に当り、それぞれの機能を十分発揮せしめるようにすること。
 ホ へ 略
 四 学校
 イ 学校に、事情の許す限り自発的にその施設を活用し、教職員の協力を得て、当該地域内の住民に対し教育上の成果を及ぼしその文化と教養の向上につとめること。
 ロ 学校は、事情の許す限り、社会教育のためにその施設を開放すること。
 ハ 大学及び高等学校は、公衆のための社会教育の講座を開設すること。
 二 定時制高等学校の設置されていない町村においては社会教育の方法により、公民教育及び職業教育を実施すること。
 五 社会教育団体
 イ 国及び地方公共団体は、社会教育の事業を行うことを主たる目的とし、民主的に構成された営利団体でない団体を社会教育団体として認めること。
 ロ 社会教育団体は、財団又は社団法人とすること。
 ハ 国及び地方公共団体は、社会教育団体の活動を助成奨励すること。
 ニ 社会教育団体の財産又は寄附金等に対しては、課税を免ずることが望ましい。
 ホ 国及び地方公共団体は、その事業を社会教育団体に委託実施させることができる。
 ヘ 社会教育団体に対しては、民法による監督以上の監督をすることができる。
 ト 市町村の実情によっては、社会教育一般にわたる事業の実施に当るため、全住民の総意により、社会教育を行う団体を設置することを適当とする。
 二 ユネスコについて 略
 第十六回建議事項(昭和二十三年四月十七日建議)
 大学の自由及び自治の確立について
 一 学問の教授及び研究の中心機関である大学は、その使命を達成するためには、大学の自由と自治を確立する必要がある。大学は従来の如き政府の官僚的統制と圧迫を排すると同時に、学問に対する理解を欠く社会的勢力の干渉を防止しなければならぬ。もとより大学の自由が無責任に流れ、或は自治がその範囲を逸脱するが如きことはあつてはならないのであつて、これがためには、その適正な運営を保障する方法を講ずる必要がある。
 二 以上の見地から国立大学における教育研究と主要な人事と、予算その他経営について以下の措置を適当とする。
 (A) 大学の教育及び研究については、教授会(綜合大学にあつては、評議会にも併せ含む。)が審議すること。
 (B) 教授、助教授の任免に関しては、さきに本委員会が決議した教員に関する身分法に基くこととし、その任免に関しては、教授会が選定した者について当該大学長の具状に基き主管大臣が発令すること。
 (C) 学長は、当該大学の教授及び一定範囲の助教授その他の職員によつて、選定された候補者についてさきに本委員会が決議した中央教育委員会の議を経て、主管大臣が任命すること。学部長は、当該学部の教授の中から、教授会によつて選定された者について、当該大学長の具状にもとづき主管大臣が任命する。
 (D) 予算の作製、施設その他大学の運営については中央教育委員会の議を経て、主管大臣が実施監督すること。
 三 更にわが国立大学の自治的経営をして有効ならしめるために大学に、教授会或は評議会のほかに、「商議会」(カウンシル)を設け、学外の高い学識経験ある者の若干名と当該大学の教授の若干名と学長を以つて組織し、主として前記(D)に関する事項を審議するのを適当とする。
 商議員の員数は、概ね五名乃至二十名とし少くともその半数は学識経験ある者をもつて当てる。学識経験者たる商議員は、大学がその候補者を推薦し、主管大臣が中央教育委員会の議を経て任命し、教授たる商議員は、教授会(綜合大学にあつては評議会)が推薦した者を主管大臣が任命すること。
 商議員の任期は、三年とし一年毎にその三分の一ずつを改任すること。
 備考
 公立大学については、本案第二項及び第三項に準ずること。
 第十七回建議事項(昭和二十三年四月二十六日建議)
 教育行政に関すること(二)
 -教育委員会制度の実施について-
 教育行政制度の改革は、わが国教育刷新の重大要件であり、本委員会は、さきにその第一回建議において、これに関する意見を発表しているが、その実施については現下内外諸般の実情に鑑み、特に左の諸項によつてこれをなすことが適当である。
 一 教育委員会は、これを議決権と執行権をもつ行政機関とし、教育の専門家たる教育長(仮称)を選任してその事務を総轄せしめる。
 二 教育委員会は、左記の建議の通り、これを都道府県、市町村及び特別区に置くことを原則とするけれども、現在の一般経済的、財政的情況、地方民主化の実情並びに六・三制の実施情況等を考慮して漸進的にこれを実施することを必要とする。
 1 当分の間都道府県、市及び特別区のみに教育委員会を置き町村には、これを置かないけれども、従来の学務委員のような方法その他適当な方法によりできるだけ民意の反映につとめること。
 2 教育委員会委員の選挙は、当分の間次の方法によること。(但し、解職請求の制度を考慮する。)
 都道府県の教育委員会委員については、都道府県会議長、都道府県内の市長の互選による者一人、都道府県単位の町村長会長、都道府県内の大学長、高等学校長、中等学校長、小学校長の互選による者一人、教員組合の選出する者一人、並びに都道府県知事が産業経済関係二人、文化関係一人、労働関係一人、婦人一人を議会の同意を得て選任した者計十人の選考委員により、定員の三倍の候補者を選び、これについて一般投票を行う。
 市区委員会については、これに準ずること。
 三 委員の数は七人乃至十一人とすること。
 四 委員の任期は四年とし、二年ごとに半数交替をなすこと。
 五 教育委員会の予算案編成及び予算執行の権限を確立すること。
 六 教員の人事については、教員需給の調節、都道府県内の人事交流及び教員俸給の負担関係等から見て、都道府県委員会が、その任免権をもつことを必要とする。但し、地方の実情に即するため市区教育委員会の具申権はこれを認める。(五大市については都道府県に準ずる。)
 七 委員会の発足に当つて、都道府県及び市区において設置経営すべき学校については、実情に即するよう適当に措置すること。
 八 法律が成立しても、その実施までに適当の期間をおいて、十分啓蒙宣伝をなすこと。
 第十八回 建議事項(昭和二十三年五月八日建議)
 文化財の保存について-主として国宝等の保存問題-略
 第十九回建議事項(昭和二十三年七月五日建議)
 学校教育と宗教との関係 略
 第二十回建議事項(昭和二十三年七月十九日建議)
 科学研究者養成に関すること 略
 第二十一回建議事項(昭和二十三年七月二十六日建議)
 大学の国土計画的配置について 略
 第二十二回建議事項(昭和二十三年八月二日建議)
 一 私立学校法案について
 公立学校法案に対する教育委員会法の施行に伴い、私立学校に対しても、都道府県私学教育委員会を設置する必要がある。よつて、この際左記事項を内容とする私立学校法を至急制定すること。
 一 各都道府県教育委員会と併列して、都道府県私学教育委員会(以下私学教育委員会という)を設け、高等学校以下の私立学校及び私立の各種学校の教育行政を所掌させること。
 二 私学教育委員会は、私立学校の代表者のうちから、それらの代表者によつて選挙された者三名、私立学校在学幼児、児童、生徒の保護者の代表者のうちから、それらの代表によつて選挙された者一名、都道府県議会の議員のうちから、議会において選挙された者一名及び学識経験者のうちから都道府県知事が都道府県の議会の同意を経て任命した二名をもつて組織すること。
 三 私学教育委員会の権限は、私立学校(私立の各種学校を含む)の設置廃止の認可を行うこと、閉鎖を命ずること、及び設備、授業の変更を命ずること、並びに教科用図書の検定、教職員の免許状の発行・私学教育委員会規則の制定改廃等の事項にすること。
 四-六 略
 二 日本芸術院について 略
 第二十三回建議事項(昭和二十三年八月十四日建議)
 青少年社会教育の振興について 略
 第二十四回建議事項(昭和二十三年八月三十一日建議)
 一 社会教育と宗教との関係について
 二 家庭教育と宗教との関係について
 以上 略
 第二十五回建議事項(昭和二十三年十月二十五日建議)
 所謂低俗文化の排除について 略
 第二十六回建議事項(昭和二十三年十一月十九日建議)
 大学法試案要綱について
 議案中大学の目的(第一条)については学校教育法の規定によるべく又国立大学の所在地組織、或は設置(第二条乃至第四条)は別に制定さるべき大学の設置に関する法律に於いて、又大学の職員(第五条)は教育公務員に関する法律に於いて、又学位(第十条)は、学位に関する法令又は大学基準に関する法令に於いて又財政については特に研究する必要があるから別に規定することとし、本案は主として「国立大学行政機関に関する法律」として立案されるを適当と考える。
 第一 国立大学教育委員会
 さきに本委員会が決議した中央教育委員会とは別に国立大学に関する重要事項を審議決定するため国立大学教育委員会(「中央審議会」に相当するもの)をおく。
 一 組織
 二十名の、国立大学教育委員会は左の通り構成される。
 (イ) 国立大学の選出によるもの七名(うち三名は国立大学長の選挙によるもの、他の四名は全国を数地区に分ち教授、助教授の選挙によるもの)
 (ロ) 日本学術会員の推せんによるもの二名
 (ハ) 衆議院文部委員会から任命されたもの二名
 (ニ) 参議院文部委員会から任命されたもの二名
 (ホ) 学識経験者のうちから国会の承認により文部大臣が任命するもの七名
 二 任期四年とする但し専任を妨げない。
 三 権限
 (イ) 大学教育に関する一般方針の決定
 (ロ) 大学の申出に基き大学の予算並びに大学の施設の改善に関する経費の配当について決定する。
 (ハ) 大学の申出に基き大学の授業料、検定料、入学金等に関し決定する。
 (ニ) 学部大学院並びに研究所の設置廃止について決定する。
 (ホ) 学長は当該大学が自ら定める方法により選定された候補者について決定する。
 (ヘ) 学部長は当該学部の教授会によつて選定された者につき当該大学長の申出に基き決定する。
 (ト) 学部長以外の部局長は評議会によつて選定されたものにつき、当該大学長の申出にもとづき決定する。
 (チ) 教授、助教授は教授会が選定した者について当該大学長の申出に基き決定する。
 (リ) 大学の申出に基き大学の商議員及び評議員を決定する。
 (ヌ) 大学の申出に基き大学に入学する学生数を決定する。
 四 報酬
 他の公務員として俸給の支給を受けていない者には相当の報酬を与えるようにする。
 第二 商議会
 各国立大学に、さきに本委員会が決議した商議会をおく(「監理委員会」)に相当するもの。
 一 構成
 (イ) 当該大学の全国的又は地方的事情を考慮して大学の申出に基き国立大学教育委員会が決定するもの。
 (ロ) 同窓会のうちから大学の推薦により国立大学教育委員会が決定するもの。
 (ハ) 大学の評議会が自ら定めた適当な方法により選出した教授
 (ニ) 職権により当該大学の長
 商議員の員数は概ね五名乃至二十名の範囲に於いて当該大学の組織及び規模に応じて伸縮性を持たし、且つ少くとも半数はイ、ロの者を以つて当てる。
 二 任期
 四年とする。但し重任を妨げない。
 三 権限
 商議会は左の事項につき審議勧告する。
 (イ) 予算案の作成
 (ロ) 教授料検定料、入学等に関する金額及び徴収方法
 (ハ) 学部大学院研究所の設置廃止
 (ニ) 大学の重要な施設の運営改善
 (ホ) 当該大学に入学すべき学生数
 (ヘ) その他大学の組織及び行政に関する一般方針
 第三 学長
 一 選任
 大学内外の適任者につき大学が自ら定める方法により選定した者に基き、国立大学教育委員会が決定する。
 二 任期
 三年乃至六年とし各大学に於いて定める。
 但し、重任を妨げない。
 三 権限
 学長は校務を掌り所属職員を統督する。特に次のような権限を有する。
 (イ) 国立大学教育委員会が決定した事項の処理
 (ロ) 教授会又は評議会によつて定められた一般方針の運営
 (ハ) 商議会が勧告した事項の処理
 (ニ) 学部長その他の部局長、教授、助教授の任命につき教授会又は評議会の議を経て申出ること。
 その他の職員を任免し又は任免につき申出ること。
 (ホ) 適当な経理組織の保持及び年度予算の作成
 (ヘ) 学籍簿及び記録の適当なる制度の保持
 (ト) 国立大学教育委員会、商議会及び文部省に対し年度報告を書面により提出すること
 第四 教授会及び評議会
 教授会
 一 構成
 学部長(単科大学に於いては学長)及び全教授を以つて構成する。必要により助教授その他の職員を加えることができる。
 二 権限
 学部の組織及び行政に関し、学術及び行政に関し、学術及び経済の両面の一般方針を定める。特に次のような事項を審議する。
 (イ) 学部長、教授又は助教授として推薦すべき候補者の選定
 (ロ) 教育及び研究に関する施設の設置及び廃止に関する答申
 (ハ) 学生の入学及び卒業の認定
 (ニ) 入学を許可する学生数に関する答申
 (ホ) 学科の種目及び編成、専攻科目、教授方法に関する方針の決定
 (ヘ) 学生の健康、福祉及び指導機関に関する方針の決定
 (ト) 学生団体及び体育を含む学生の活動に関し、正当に選挙せられた学生代表者と協力してその方針を決定すること。
 (チ) その他学部の重要事項
 評議会
 数個の学部を置く大学は大学評議会を置くことができることとする。
 一 構成
 学長、学部長、学部から選ばれた教授若干名を以つて組織する。必要により研究所長その他の職員を加えることができる。
 二 権限
 大学全体の組織及び行政に関し学術及び経済の両面の一般方針を定める。特に次のような事項を審議する。
 (イ) 学部、大学院、研究所等の設置廃止
 (ロ) 学部に於ける学科及び講座の設置及び廃止
 (ハ) 学部長以外の部局長として推薦すべき候補者の選定
 (ニ) 学長として推薦すべき候補者選定に関する規則の制定
 (ホ) 大学内部の規則の制定
 (ヘ) 国立大学教育委員会の決定した事項及び商議会から勧告のあつた事項
 (ト) その他大学全般に共通する重要な事項
 評議会を設けない大学に於いては評議会の権限は教授会が行う。
 第二十七回建議事項(昭和二十四年一月十八日建議)
 二年又は三年制の大学について
 大学設置委員会における新制大学申請校の審査の状況に鑑み、暫定措置として、次の条件のもとに二年又は三年制大学を設けることができる。
 (一) 二年又は三年制大学には、四年制大学とは異つた名称(例えば短期大学)を附すること。
 (二) 前記の大学は、完成教育として、その基準を定めること。
 (三) 特別の場合には、四年制大学は前記大学の卒業生をその履修課程を考慮し、又は試験の上、適当な学年にこれを編入することができること。
 (四) 二年制大学に対し、後期二年のみの大学を設け、また二年制大学が旧制高等学校の温存となるようなことは認められないこと。
 第二十八回建議事項(昭和二十四年二月十九日建議)
 外国語教育について 略
 第二十九回建議事項(昭和二十四年五月十四日建議)
 六・三制完全実施に関する建議 略
 第三十回建議事項(昭和二十四年六月十一日建議)
 職業教育振興方策について
 あらゆる国民は職業によつて各自の生活を営むとともに、社会国家の要請に寄与しゆかねばならないから、職業教育の重要なることは言をまたないところである。ことに産業を復興しわが国経済の自立を期することは新日本建設の上に最も肝要であつて、職業教育振興の要、真に今日より急なるはない。
 しかるに新教育制度の実施により一般教育の点においては画期的刷新が行われ、進歩改善の跡を見るが職業教育に関しては大いに見劣りせられるものがあり、職業教育軽視の風潮すら生じつつあるは甚だ遺憾とするところである。
 新制中学においては職業科の教育は混乱を来し、新制高校においては普通科教育に偏して職業教育は衰微の傾向を示している。定時制高校並びに技能者養成の制度も一般に利用されるに至らず職業における教育もまた不振を極めている。
 さらに戦災校における実習実験施設はいまだに復旧せられず、新設校における設備は不完全の域を脱しない。特に憂うべき職業学科担任教員及び実業高校普通科担任教員の能力不足と意気そ喪とであって、急きょ再教育の要がある。
 新教育制度の一環として職業教育振興のために左記の事項につき積極的方策を講ずることを要望する次第である。
 一 新制中学における職業科の教育はその普通教育機関たるの使命に鑑み、職業生活に関する理解と勤労愛好の精神とを養うことに主眼を置き専ら職業人たるの根幹を培うことに力めること。
 上級学校における生徒並びに父兄の普通科教育偏重の傾向に鑑み、特に新制中学において職業補導の徹底を期すること。
 二 新制高校の画一化を避け職業教育に重点を置く単独校を多数設置すること。
 綜合高校においても職業科目を軽視することなく教科内容を充実し必要なる施設を整備すること。
 新制高校に一年乃至二年の専攻科設置を奨励すること。
 戦災高校における実習実験設備を速かに復旧すること。
 三 新制高校における職業教育を効果的ならしめるため、企業又は産業団体との共同教育組織を設くる途をひらくこと。
 四 定時制高校の教育をして完成教育の実を挙げしめるため、実情に即し職業科目中心の教科課程を編成すること。
 定時制高校分校設置基準を緩和し、容易にこれを設置し得るよう改めること。
 定時制高校と技能者養成所との提携を密にし、労働者は定時制高校の課程を技能者養成の一部と認め文部省は技能者養成に対し単位制クレヂットを与える措置を講ずること。
 五 企業又は産業団体に於ける職業教育に協力するため学校は聴講制度、委託学生制度、特別開放講座、巡回講師制度等を設け、また実習場及び、実験室を公開利用せしめること。
 六 文部省は新制高校並びに新制中学の職業科教員の養成、並びに確保につき至急根本計画をたてること。
 職業科教員の現職教育のために研修制度を完備し、長期講習、通信教育、公開講座等の施設を講ずること。
 七 政府は職業教育の振興につき実業教育に関する国庫補助を強化し、その他必要なる法律的並びに予算的措置を講ずること。
 備考 第三十回建議事項は教育刷新審議会第一回総会採択のものである。
 第三十一回建議事項(昭和二十四年七月二十五日建議)
 新学制完全実施について
 -定員定額制について-
 教育刷新委員会は先に第九十六回総会の採択に基き、主として建築予算に関する建議を行つたが、新学制を完全に実施するためには、なお予算処置上、解決すべき幾多の問題が山積している。特に、教員の定員定額の問題は、全国的にまたがる極めて重要な問題である。
 現行の定員定額制は教育界の実態を十分に認識せず、かつ教育者の教育活動の可能範囲を深く考慮することなく算定されたものである。各府県における実情が明らかにこれを証明している。このたびの定員定額の定め方により新学制の充実を望み得ないことはもとより、現在の教育水準を維持することすら不可能ならしめるほどに教員の不足を余儀なくされている。
 かくては新教育の進展は到底期せられない。
 本審議会は政府がこの実情を認識して、左のような処置をとられることを要望する。
 定員定額の算定基準及び配分に関して、再検討修正の要があること。
 即ち予算編成上の計算基準は新教育の遂行を可能ならしめるものであること。さらにこれを教育現場の実情に即するよう配分すること。
 第三十二回建議事項(昭和二十四年十月二十九日建議)
 公立学校の標準教育費等について
 一 公立学校の標準教育費等に関する法律案を作成すること。
 二 この法律は、公立学校(大学は除かれるであろう)の標準経費の確保、基準単価の算定等に関する基本原則を定め、教育の機会均等と教育費に対する国民の負担の均衡を図りあわせて教育委員会の自主性を高めることを目的とすること。
 三 都道府県及び市町村に標準教育費の支出義務を負わせること。
 もとより都道府県及び市町村が右の標準教育費の額を超えて教育費を支出することは望ましい。
 四 基準単価は学校の種類、規模、構成、土地の状況その他特殊な事情を考慮して相当数の群に分類された教員費、学用品費、設備費、維持費、新規建築費等の生徒一人当りの標準単価とし、これに基いて都道府県及び市町村の標準教育費を算出すること。
 五 文部大臣は、市町村の教育委員会及び都道府県の教育委員会が算出した標準教育費を精査して地方財政委員会に報告すること。
 地方財政委員会が各都道府県及び市町村の標準行政費を算出するに当つては、教育費については、前項の報告を基礎としなければならないこと。
 六 義務教育にかかる職員の給与の負担は、当分の間都道府県の負担とすること。
 第三十三回建議事項(昭和二十五年十月三日建議)
 一 免許法認定講習について
 二 優良教員の養成確保に関する対策について以上 略
 第三十四回建議事項(昭和二十六年二月十日建議)
 教育財政問題について
 まえがきおよび 一 就学前教育財政問題 略
 二 義務教育財政問題
 義務教育の振興は憲法上の義務に基くものであり、平和国家再建のための根幹国策である。しかるに、六・三制実施に必要な予算の計上も極めて不十分であり、かつ義務教育費確保の保障もされない状況にあることは、まことに遺憾である。かくては教育の機会均等の理想は実現されず、教育界に多大の不安と動揺を招来し、ためには六・三制教育に暗影を投じている。
 この事態に対処し、憲法に規定する教育の機会均等と義務教育無償の原則に基き少くとも最低の義務教育費を確保するため左の処置を講ずべきである。
 (一) 経営費の確保について
 1 公立学校の最低標準教育費確保等に関する法律案を作成すること。
 2 この法律は、公立学校(大学は除かれるであろう)の標準経費の確保、基準単価の算定等に関する基本原則を定め、教育の機会均等と教育費に対する国民の負担の均衡を図り、あわせて教育委員会の自主性を高めることを目的とすること。
 3 都道府県及び市町村に標準教育費の支出義務を負わせること。もとより都道府県及び市町村が右の標準教育費の額を超えて教育費を支出することは望ましい。
 4 基準単価は学校の種類、規模、構成、土地の状況その他特殊な事情を考慮して相当数の群に分類された教員費、学用品費、給食費、設備費、維持費、新規建設費等の生徒一人当りの標準単価とし、これに基いて都道府県及び市町村の標準教育費を算出すること。
 5 文部大臣は、市町村の教育委員会及び都道府県の教育委員会が算出した標準教育費を精査して地方財政委員会に報告すること。
 地方財政委員会が各都道府県及び市町村の標準行政費を算出するに当つては、教育費については前項の報告を基礎としなければならないこと。
 6 義務教育無償の方針を堅持し、教科書の無償配布等の実施容易な部面については直ちにこれを実現し、できるだけすみやかに全部面にわたつてその実現を期すること。
 7 義務教育にかかる職員の給与の負担は当分の間都道府県の負担とすること。
 (二) 学校施設の整備費について
 本経費の財源は、半額国庫負担とし、半額は地方起債として左の基準により年度計画を樹立して急速に整備すべきである。
 1 すみやかに教育上要求される最低基準までの整備のための実施計画を樹立して実行にうつすとともに、まず緊急には不正常授業解消のため、一人当り○・七坪の整備をはかること。
 学校施設の整備は、教育上少くとも一人当り小学校○・九坪、中学校一・二坪の分の整備が必要であるから、これを今後四、五年のうちに実現するため、基礎的の実施方策をたてなければならない。
 とりわけ緊急の措置として、過剰学級授業、二部授業、仮教室授業等の不正常授業を解消するため、一人当り○・七坪の整備を行わねばならない。
 文部省の補助方針は、昭和二十四年度においては、市町村所在の小・中学校をプール計算して一人当り○・七坪を計上するという立場に立っていた。さらに、昭和二十五年度には、この方針の無理を若干改正して、組合立学校、独立中学校、通学困難な特殊学区等の単位の分離を少しくみとめたようであるが、これをさらにすすめて学校単位に○・七坪までの整備を緊急に計らねばならない。
 2 危険校舎等の改築を急ぐこと。
 現在四〇年以上の老朽校舎は約二三三万坪(約七七〇万平方米)であり、これらの中には戦時中改築補修を怠ったため、使用危険状態になつているものが約四四万坪あるので、この改築修理を促進しなければならない。
 3 戦災、災害の復旧促進をはかること。
 戦災をうけた小学校の面積は一、四三二、九一五坪にのぼるが、その復旧状況は自力建築を含めて、昭和二十五年三月末においてその三分の一にしかすぎない。すみやかに復旧の計画を樹立しなければならない。
 なお、戦後度重なる風水害、震災等の災害を受けて復旧にくるしんでいるところが多いが、その復旧については十分に補助を要する。
 4 屋内運動場の整備充実をはかるべきこと。
 寒冷積雪、あるいは長期降雨の地方では児童の保健上屋内運動場の整備が必要である。
 5 新しい教育の実施については、必要な設備の充実整備をはかること。
 現状における教育設備は、ほとんど机と椅子とを整備しかけたのみであり、教室もわずかに普通教室が出来たのみで、特別教室の施設はほとんど出来ておらず、新教育に必要な基本的設備はほとんど欠けているので、これより国庫より補助して充実しなければならない。
 6 学校施設に対して積極的防災対策を講ずること。
 火災、風水害等に対し、積極的に学校施設を防護しうるよう、国庫より補助をし、かつ、技術的助言をあたえ、防災対策を至急に講じなければならない。
 7 盲ろう学校整備を推進すること。
 盲ろう教育義務制の趣旨、児童福祉法、身体障害福祉法等の精神にかんがみ、盲ろう学校の充実に努力しなければならないが、種種の事情により、その整備が一般公立小学校に比して不十分であるので、その整備を一そう推進する要がある。
 8 起債確保の必要
 学校施設整備の財政計画の一環として、補助金と同額の起債を確保するだけでなく、単独事業分や校地買収費、整地費等に対しても起債を確保することは、すこぶる重要である。なお、預金部資金利用の場合の起債の利率は今なお六分五厘という相当の高率であるから、これを低くすることが必要である。
 9 これまで新制中学校の建築は公共事業費の支出は、経済安定本部より認証される前に竣功または着工されたものには行かたいことになつているため、補助金を期待しながらも、その手続きを十分理解しないで、あるいは待つことのできない緊急事情にせまられて工事をしたため、補助金を得られなかつたいわゆる認証外工事については、至急に何分かの対策を講ずべきである。
 10 中学校設備充実のための国庫補助
 中学校の校舎建築は逐年相当程度に進歩してきたのであるが、その内容設備については、ほとんど顧みられるいとまがたく、極めて貧弱で、ほとんど皆無の状態である。すなわち標準設備付けに要する経費は全国中学校の統計三五、四七三、〇二五、二六〇円であるのに対し、現在保有設備評価総額(補修費を含む)はわずかに四・一%にすぎない。
 校舎の整備に伴つて、各教科の内容にもつとも適合した設備を施すことは、中学校教育の効果をあげるために一日もゆるがせにできないことである。しかるに中学校の設置義務を負う市町村は、今なお校舎の整備に追われ、設備の充実に必要た経費は当分支出できない現状である。従つて、これに必要な経費の一部に対し国庫補助を行い、内容設備の充実を奨励促進する必要がある。
 三 高等学校教育財政問題 略
 四 国立大学財政問題 略
 五 社会教育財政問題 略
 六 文化教育財政問題 略
 七 直轄並びに民間研究機関の財政問題 略
 八 学徒の奨学並びに厚生援護財政問題 略
 九 私学振興財政問題 略
 十 教育費財源問題
 義務教育、高等学校教育、大学教育、社会教育、その他に関する財政編成の基本的構想は、前記各項決議中に叙述したとおりである。これに基き、所要額を累算すれば、けだしぼう大の額に上ることと察せられるが、これに要する財源は次の方針に従い、これを確保するよう最善を尽されることを要望する。
 一 国家財政上、文教費が不十分な現状に顧み、今後その編成に際しては教育費に優先順位を与える方針に基き、文教費と他の諸経費とを合理的に調整あんばいし、文教費の増額を計ること。
 二 学校教育その他文教に要する所要経費については、前記各決議に叙述した方針に基き、所要経費の推計をたて、その緩急に応じ支出の優先順位及び年次計画を適宜確立し、これに基く経費を確保すること。
 三 教育費の重要性及び緊急性にかんがみ、租税等一般財源の外に、特別財源について攻究すること。
 (一) 六・三制の完成、国立大学の充実、戦災災害復旧等に要する建築費、設備費のごとき巨額な臨時的支出をまかなうために、国の負担分については、見返資金の一部を充当する等の方法を攻究し、地方自治体の負担分については、地方債による財源の増加を計り、預金部資金によりその引受けを行う等の方法を講ずること。
 (二) 特に急速充実を計ることを必要とする地方自治体の教育事業については、前記各決議に列記せるとおり平衡交付金以外の特別補助の拡充を行うこと。
 四 義務教育費の地方自治体の財政に占める地位がきわめて重要であるのにかんがみ、この点に特に留意して地方税源の附与および平衡交付金の増額について考慮すること。
 なお、地方自治体の教育費用のため、学区制及びその財源措置については、第二次米国教育使節団の勧告もあり、かたがたその実行可否につき特別審議会を設けて審議し、その可能な場合には、その決定に従い財政計画を樹立すること。
 むすび 略
 第三十五回建議事項(昭和二十六年十一月十二日建議)
 中央教育審議会について 略

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