農業学校規程（抄）（明治三十二年二月二十五日文部省令第九号）

　明治三十二年　勅令第二十九号実業学校令第八条及第十三条ニ基キ農業学校規程ヲ定ムルコト左ノ如シ

　農業学校規程

　第一条　農業学校ハ甲乙ノ二種トス

　土地ノ情況ニ依リ甲種農業学校ノ程度ヨリ更ニ高等ナル農業学校ヲ設置スルコトヲ得

　第二条　甲種農業学校ノ修業年限ハ三箇年トス但一箇年以内延長スルコトヲ得

　第三条　甲種農業学校ノ授業時数ハ実習ヲ除キ毎週三十時以内トス但実習時数ハ農事ノ繁閑ニ応シ適宜之ヲ定ムヘシ

　第四条　甲種農業学校ノ学科目ハ修身、読書、作文、数学、物理、化学、博物、経済、体操並ニ実業ニ関スル科目及実習トス但本項科目ノ外地理、歴史、外国語、法規、簿記、図画及其値ノ科目ヲ便宣加設スルコトヲ得

　実業ニ関スル科目ハ土壌、肥料、作物、園芸、農産製造、畜産、養蚕、病虫害、気候、林学大意、獣医学大意、水産学大意等ヨリ選択シ又ハ便宜分合シテ之ヲ定ムヘシ

　第五条　甲種農業学校ニ入学スル者ノ資格ハ年齢十四年以上学力修業年限四箇年ノ高等小学校卒業又ハ之ト同等以上トス但外国語ヲ試験科目ニ加フルコトヲ得

　第六条　乙種農業学校ノ修業年限ハ三箇年以内トス

　第七条　乙種農業学校ノ授業時数ハ実習ヲ除キ毎週二十七時間以内トス但実習時数ハ農事ノ繁閑ニ応シ適宜之ヲ定ムヘシ

　第八条　乙種農業学校ノ学科目ハ修身、読書、習字、作文、算術、理科、体操並ニ実業ニ関スル科目及実習トス但本項科目ノ外地理、歴史、経済、図画及其他ノ科目ヲ便宜加設シ又土地ノ情況ニ依リ短期ノ教授ヲ必要トスル場合ニハ修身及実業ニ関スル科目ノ外一科目若クハ数科目ヲ欠クコトヲ得

　実業ニ関スル科目ハ土壌、肥料、作物、農産製造、家畜、養蚕、病虫害、気候等ヨリ選択シ又ハ便宜分合シテ之ヲ定ムヘシ

　第九条　乙種農業学校ニ入学スル者ノ資格ハ年齢十二年以上学力修業年限四箇年ノ尋常小学校卒業以上ニ於テ之ヲ定ムヘシ

　第十条　甲種農業学校ニハ予科ヲ附設スルコトヲ得

　第十一条　予科ノ修業年限ハ二箇年以内トス

　第十二条　予科ノ授業時数ハ毎週三十時以内トス

　第十三条　予科ノ学科目ハ修身、読書、習字、作文、算術、地理、歴史、理科、図画、体操トス但外国語ヲ加フルコトヲ得

　第十四条　予科ニ入学スル者ノ資格ハ年齢十二年以上学力高等小学校第二学年修了以上ニ於テ之ヲ定ムヘシ

　第十五条　農業学校ニハ簡易ノ方法ニ依リ農業ニ必要ナル事項ヲ教授スル為別科ヲ設クルコトヲ得

　第十六条　修業期一箇年以内ノ乙種農業学校ノ教場及別科ノ教場ハ随時必要ノ地ニ分設スルコトヲ得

　第十七条　甲種農業学校ニ於テ卒業ノ後特ニ農業ニ関スルー科目若クハ数科目ヲ専攻セントスル者ノ為ニ専攻科ヲ置キ又更ニ高等ノ農業学校ニ入ラントスル者ノ為ニ補習科ヲ置クコトヲ得

　第十八条　専攻科及補習科ノ修業年限ハ各二箇年以内トス

　第十九条　甲乙面積ノ農業学校ノ学科及第二十六条ノ学校ノ学科ヲ一校内ニ併置スルコトヲ得

　第二十条－第二十五条　略

　第二十六条　蚕業学校、山林学校、獣医学校及水産学校ノ学科目ハ左ノ如シ

　甲種ノ学校ニ在リテハ修身、読書、作文、数学、物理、化学、博物、経済、体操並ニ実業ニ関スル科目及実習トス但本項科目ノ外地理、歴史、外国語、法規、簿記、図画及其他ノ科目ヲ便宜加設シ獣医学校ニ在リテハ数学、物理、博物、経済ヲ欠クコトヲ得

　乙種ノ学校ニ在リテハ修身、読書、習字、作文、算術、理科並ニ実業ニ関スル科目及実習トス但本項科目ノ外地理、歴史、経済、図画、体操及其他ノ科目ヲ便宜加設シ又土地ノ情況ニ依リ短期ノ教授ヲ必要トスル場合ニハ修身及実業ニ関スル科目ノ外一科目若クハ数科目ヲ欠クコトヲ得

　甲乙両種学校ノ各学科ノ実業ニ関スル科目ハ左ニ掲クル事項ヨリ選択シ又ハ便宜分合シテ之ヲ定ムヘシ

　一　蚕業学校ニ在リテハ蚕体解剖生理及病理、養蚕及製種、製糸、桑樹栽培、気候、農学大意等

　一　山林学校ニ在リテハ造林及森林保護、森林利用、森林測量及土木、測樹術及林価算法、森林経理、気候、農学大意等

　一　獣医学校ニ在リテハ解剖及組織、生理、薬物及調剤法、蹄鉄法及蹄病論、内科、外科、寄生動物、畜産、衛生、獣疫、産科、剖検法等

　一　水産学校ニ在リテハ水産動植物、漁撈、製造、養殖、地文及気象、漁撈製造用諸機械大意、漁船構造及運用等

附則

　第二十七条　本令ハ明治三十二年四月一日ヨリ施行ス

　第二十八条　明治二十七年文部省令第十九号簡易学校規程ハ本令施行ノ日ヨリ廃止ス