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2部   文教施策の動向と展開
第9章   教育・文化・スポーツの国際化に向けて
第3節   相互理解を進める国際交流
1   留学生交流の推進



(1) 留学生受入れの現状と課題

留学生交流は、我が国と諸外国相互の教育・研究水準を高めるとともに、国際理解・国際協調の精神の醸成・推進に寄与し、特に開発途上国の場合には、その人材養成に協力するなど極めて重要な意義を有する。


(ア) 留学生受入れの現状

我が国の大学等で学ぶ外国人留学生の数は、平成8年5月1日現在で5万2,921人に上っている。これらの留学生のうち、文部省が直接に奨学金を支給する国費留学生は8,051人で、外国政府がそれぞれの国の人材養成を図るため自国の費用で派遣している留学生が1,297人、それ以外の4万3,573人が私費留学生である(2-9-1 )。これらの留学生はその9割以上がアジア諸国の出身であり、中でも中国・韓国・台湾の3か国(地域)で全体の約76%を占めている(2-9-2 2-9-2 )。

2-9-1 留学生の推移(各年5月1日現在)

2-9-2 出身地域別留学整数(平成8年5月1日現在)

2-9-2 出身国・地域別留学生数(平成8年5月1日現在)


(イ) 留学生受入れ10万人計画

文部省では、昭和58年及び59年に取りまとめられた有識者による二つの提言等に基づき、21世紀初頭における10万人の留学生受入れを目途に、体系的な留学生受入れのための施策を総合的に推進してきた。

計画の中間年に当たる平成4年7月には、それまでの進展状況に基づいた有識者による提言が取りまとめられ、留学生のニーズの多様化等に対応した質的充実にも重点を置く必要性が指摘された。


(ウ) 留学生交流の課題

我が国の留学生の受入れ状況については、平成6年までは、10万人計画の想定を上回る人数の伸びを示していたが、近年、伸び悩みの状況が続き、7年には計画の想定を下回り、8年の調査結果では、初めて留学生数が前年度を下回る、926人減の5万2,921人となった。これを在学段階別に見ると、大学院レベルの留学生は依然として着実に伸び続けているものの、学部レベルで伸び悩み、専修学校専門課程では大きく減少している(2-9-3 )。

その理由としては、諸外国における高等教育機関の整備による留学ニーズの変化、最近の我が国の経済不況などの経済的要因等が考えられる。このような留学生を取り巻く諸状況を踏まえ、我が国が今後取るべき留学生政策について検討を行うため、文部省では平成9年1月より「留学生政策懇談会」を開催し、

1) 我が国の高等教育機関のグローバルな視点に立った教育体制の充実、
2) 留学希望者の我が国の高等教育機関へのアクセスの改善及び日本語教育の振興と併せた一貫した施策の推進、
3) 国・地方公共団体・民間の協力による多様な方法での留学生の生活支援、

等に重点を置いて検討を行い、同年7月に第一次報告を取りまとめた。文部省ではこの懇談会の報告に沿って、留学生交流施策の充実を図っていくこととしている。

2-9-3 在学段階別留学生数


(2) 留学生受け入れ体制の整備充実
(ア) 海外における留学情報提供体制等の整備

文部省では、従来から(財)日本国際教育協会の留学情報センターを通じて、内外からの問い合わせに対応してきた。また、平成元年度から海外における「日本留学説明会」を実施しており、9年度には、北アメリカ、アジア(韓国、台湾、中国)等において行われる。

また、更に多くの日本留学希望者、留学関係者に包括的な情報を迅速かつ効率的に提供するために、平成8年4月から(財)日本国際教育協会において、インターネット上に留学情報を提供するホームページを開設している。今後、更に大学その他の関係機関が保有するホームページとの接続を増やすなど、内容を充実させる(アドレス://www.aiej.or.jp/)。

留学生の入学選考については、これまで他国に比べ分かりにくいことなどが指摘されているため、平成9年3月に「留学生の入学選考の改善方策について」と題する有識者の意見が取りまとめられ、書類選考の活用による渡日前の入学許可の普及、研究生制度の運用の見直し、日本留学のための統一試験の改善、情報提供の充実等について提言された。留学生政策懇談会第一次報告においても同趣旨の提言がなされており、文部省としては、これらの提言を踏まえて対応するとともに、各大学における留学生の入学選考の検討・改善を期待している。


(イ) 安定した生活基盤の確立
(a) 国費留学生受入れの計画的整備

国費留学生の受入れに関しては、平成9年度予算において、新規受入れで前年度比250人増の4,445人分の予算を計上している。


(b) 私費留学生への援助の充実

私費留学生に対しては、従来から、学習奨励費の支給、授業料減免措置、優秀な私費留学生の国費留学生への採用、医療費の80%補助等の施策を実施しているが、平成9年度には、学習奨励費の支給人数を8,540人(140人増)に拡充するとともに、学校法人に対し授業料減免を措置するなど、私費留学生が安定した生活の中で勉学に励める環境の整備に努める。


(c) 宿舎の安定的確保

文部省では、国立大学に留学生宿舎の建設(平成8年度末までに5,900戸を整備)を進めるほか、一般学生寮への入居の促進、留学生宿舎建設事業を行う地方公共団体等に対する奨励金の交付、企業が保有する社員寮の提供事業を実施している財団法人に対する助成、 (財)内外学生センターによる指定宿舎制度 【用語解説】等の施策を実施している。


(ウ) 大学等の受入れ体制の整備

文部省では、大学における指導援助体制の整備のため、国立大学に対して、留学生センター及び留学生課の設置をはじめとする人員・経費面での特別の措置を行っている。

一方、私立大学等に対しては、各大学等の受入れ留学生数等を考慮した私立大学等経常費補助金の特別補助を行っている。

なお、平成9年7月より、専修学校専門課程を卒業し、「専門士」の称号を付与された留学生の我が国での就職等が認められる取扱いとなった。


(エ) 短期留学の推進

最近、諸外国において、留学先の大学における学位の取得を目的とせず、母国の大学等に在籍したまま1年間程度留学を行う、いわゆる短期留学が活発化している。例えば、アメリカの ジュニア・イヤー・アブロード・プログラム 【用語解説】、EU諸国の エラスムス計画 【用語解説】、アジア・太平洋地域の umap計画 【用語解説】などがある。

このため文部省では、大学間交流協定等に基づき、母国の大学に在籍したまま、1年間以内の短期間、諸外国から我が国に留学する者及び我が国から諸外国に留学する者を支援する、「短期留学推進制度」を創設した。この制度によって、平成8年度は1,897名の外国人短期留学生を受け入れ、525名の日本人短期留学生を派遣した。

また、我が国の国立大学において、海外から1年間程度の短期留学を希望する学部留学生の積極的な受入れを行うため、英語による短期留学プログラムが、平成7年度以降11大学に設置されている。


(オ) アフターケアの充実

帰国留学生が留学の成果を更に高め、母国において活躍できるように、専門誌・学会誌の送付、短期研修のための帰国留学生招聘(しょうへい)事業、研究支援のための指導教官の派遣等、帰国留学生の希望に応じて援助している。

実習中の留学生(専門学校ヒコ・みずのジュエリーカレッジ)


<(財内外学生センターによる指定宿舎制度)>

私費外国人留学生の宿舎の安定的確保を目的に、(財)内外学生センターが適切な民間宿舎を開拓し、家主との間に私費外国人留学生専用の指定宿舎契約を締結するとともに、家主に対して協力金(指定契約金)を交付する制度である。


<ジュニア・イヤー・アブロード・プログラム(Junior Year Abroad Program)>

ジュニア・イヤー・アブロード・プログラムとは、アメリカの大学においてすでに歴史のある短期留学プロラムの総称である。その形態は大学により様々であるが、一般に、主に大学学部3年次を対象として1学期間若しくは1学年程度の短期間、外国に留学させることによって、異文化体験を深め、視野を広くし、異なる価値観や視点から勉強する経験を与えることを目的とし、留学先で習得した単位は自国の大学での単位に加えることができるように工夫されている。


<エラスムス(The European Community Action Sheme for the Mobility of University Students=ERASMUS)計画>

エラスムス計画とは、EU諸国における各種の人材養成計画、科学・技術分野における加盟国間の人物交流協力計画の一環として行われる、学生交流をも含めた大学間交流の促進計画であり、1987(昭和62)年に創説されたものである。1995(平成7)年にはEUの教育分野の行動計画であるソクラテス計画の一部として統合された。


<UMAP(University Mobility in Asia and the Pacific)計画>

UMAP計画とは、EUにおける「エラスムス計画」をモデルとして、アジア・太平洋地域の大学間の学生・教育者・研究者の交流を促進することを目的に、域内の大学が参加している計画であり、1991(平成3)年にオーストラリア大学長会議によって提唱されたものである。

1994(平成6)年12月には、大阪において第4回UMAP会議が開催され、UMAP活動の一層の組織化を盛り込んだ「大阪宣言」が採択された。また、1996(平成8)年8月にニュージーランドにおいて第5回総会が開催された。


(3) 海外留学援助体制の整備
(ア) 海外留学の現状

近年、我が国の学生等で外国の大学等に留学する者が増加してきている。「ユネスコ文化統計年鑑(1996年版)」によれば、海外に留学した日本人は、主要50か国において約5万9,000人であり、5年前と比較すると約2倍となっている。留学先別に見ると、その中の約8割が欧米諸国となっている(2-9-3 )。


(イ) 海外留学に関する施策

文部省では、大学間交流の促進、国際的視野を有する教員の育成、地域研究者の養成等の観点から、国費による日本人学生の海外派遣制度を設けている。

また、外国政府等の奨学金により、毎年約400人程度の日本人学生等が留学しており、文部省は、その募集・選考に協力している。

このほか、海外留学の大半を占めるのは私費留学であり、文部省では、(財)日本国際教育協会の留学情報センターを通じて、留学希望者がそれぞれの目的に適した留学先の選択ができるよう、適切な留学情報の提供に努めており、同センターでは外国の大学等への留学を希望する学生等のために「海外留学の手引き」を作成・配布している。

2-9-3 ユネスコ文化統計年鑑による日本人留学生の留学先国


(4) 高校生の留学交流

高校生の留学については、平成6年度に外国の高等学校へ3か月以上留学した者は3,998人、海外学習旅行者(語学等の研修や国際交流を目的として、外国の高等学校等に3か月未満の旅行に出た者)は3万2,465人となっている。文部省では、高校生留学の教育上の意義を考慮し、以前から関係機関に対し、安全で有意義な留学ができるよう指導・助言に努めてきており、関係する団体により設立された「全国高校生留学・交流団体連絡協議会」が行う諸事業の支援等を行っている。

また、高校留学関係団体の責任者が一堂に会する「高校生留学等関係団体関係者研究協議会」の開催及び「高校生留学交流研究指定制度」について補助している。

一方、各都道府県教育委員会等の高校留学担当者による「高校生海外留学等推進担当者会議」の開催、「高校生海外留学等研究協力校」の指定等、高等学校における安全で円滑な海外留学の実施及び外国人留学生の円滑な受入れを推進するための実践的な研究を行っている。

さらに、文部省では、留学交流の促進を図るため、

1) (財)エイ・エフ・エス日本協会が行うアセアン諸国及び我が国の都市と姉妹提携関係にあるアジア・太平洋諸国からの日本語専攻高校生の受入れ等の事業、
2) (財)ワイ・エフ・ユー日本国際交流財団が行うアメリカからの日本語専攻高校生の受入れ事業、
3) (財)日本国際教育協会が行う高校生インターナショナル・サイエンス・スクールなどの事業

に対して補助を行っている。

このほか、文部省では、アメリカ、ドイツ、シンガポール及びオーストラリアが行う高校生招致事業の募集・選考に協力している。


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