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2部   文教施策の動向と展開
第1章   教育改革の推進
第2節   教育改革への取組
2   第16期中央教育審議会の活動



(1) 「21世紀を展望した我が国の教育の在り方について」の審議

中央教育審議会は、文部大臣の諮問に応じて教育、学術又は文化に関する基本的な重要施策について調査審議し、これらに関して文部大臣に建議することを任務としている。

文部省は、平成7年4月、第15期中央教育審議会を発足させ、「21世紀を展望した我が国の教育の在り方について」諮問を行った。同審議会は、

1) 今後における教育の在り方及び学校・家庭・地域社会の役割と連携の在り方、
2) 一人一人の能力・適性に応じた教育と学校間の接続の改善、
3) 国際化、情報化、科学技術の発展等社会の変化に対応する教育の在り方、

の3点を主要な検討事項として審議を進め、8年7月、1)及び3)の審議の成果として、第一次答申を取りまとめた。この答申は、「ゆとり」の中で子どもたちに「生きる力」をはぐくむことを基本に、

ア) 学校の教育内容を厳選し、家庭や地域社会における教育を充実すること
イ) 教育改革の一環として21世紀初頭を目途に学校週5日制の完全実施を目指すこと
ウ) 国際化、情報化、科学技術の発展、環境問題に対応して学校教育を改善・充実すること

などについて提言を行っている。

第15期中央教育審議会は、第一次答申後、2)を中心に審議を進めてきたが、平成9年4月に任期を終了し、第16期に審議を引き継いだ。第16期中央教育審議会は、同年6月に第二次答申を取りまとめ、大学・高等学校の入学者選抜の改善、中高一貫教育、教育上の例外措置、高齢社会に対応する教育の在り方について提言を行った。この答申の特色としては、次の四つを挙げることができる。

第一に、「ゆとり」の中で子どもたちに「生きる力」をはぐくむことを理念としつつ、形式的な平等の重視から個性の尊重への転換を目指している。

第二に、一人一人の能力・適性に応じた教育を展開していくという考え方に立って、これまでの教育制度や入学者選抜の在り方などを見直し、実行可能な最大限の改善策を種々提言している。このうち、教育制度については、複線化構造を進め、画一的なシステムを柔軟なものにすることを基本に提言している。また、入学者選抜の改善については、選抜方法・尺度の多様化など、具体的な改善策を提示している。

第三に、子どもや保護者、地方公共団体の選択の幅を広げることに資し、規制緩和の方向にも沿うものとなっている。

第四に、教育改革の実現に向けて、保護者をはじめとする国民各層の意識(横並び意識、同質志向、過度に年齢にとらわれた価値観等)の改革を強く訴えている。

以下では、第二次答申の概要を紹介する。

(ア) 一人一人の能力・適性に応じた教育の在り方

第二次答申は、第一次答申の理念を引き継ぎ、今後の教育について、「ゆとり」の中で「生きる力」をはぐくむことを目指し、個性尊重という基本的な考え方に立って、一人一人の能力・適性に応じた教育を展開していくことが必要であるとしている。そして、こうした認識に立って、我が国の教育の在り方を見直し、形式的な平等の重視から、個性の尊重への転換が必要であると指摘している。

また、一人一人の能力・適性に応じた教育を実現する上で、教育における子どもたちの選択の機会や、学校・地方公共団体等の裁量の範囲の拡大が必要であるとしている。

さらに、国際化、情報化、科学技術の発展、高齢化などの社会の変化に適切に対応するためには、個性的・創造的な人材の育成が不可欠であるが、同時に、思いやりや社会性、倫理観、正義感等の豊かな人間性や伝統・文化の尊重など、時代を超えて変わらない価値のあるもの(不易)を重視することが大切であるとしている。

(イ) 大学・高等学校の入学者選抜の改善

答申は、過度の受験競争の緩和を図るためには、大学・高等学校の入学者選抜の改善を図るとともに、学(校)歴偏重社会の問題を是正することが必要であるとし、具体的な提言を行っている。

(a) 大学入学者選抜の改善

答申は、大学入学者選抜について、まず、ペーパーテストによる学力試験の偏重を改め、選抜方法の多様化や評価尺度の多元化を推進すべきであるとしている。このため、例えば次のような具体的な提言を行っている。

1) 総合的・多面的な評価など丁寧な選抜を行う(調査書、小論文、面接等の活用)
2) ボランティア活動など様々な活動経験を評価する(学校外の団体からの推薦や自己推薦の活用等)
3) 専門高校等を対象に学校を指定した推薦入学の枠を設定する
4) 地域を指定した枠を設定したり、推薦入学を実施する取組を導入・拡大する
5) 各大学・学部において複数の選抜基準を導入する
6) 4月入学を基本とする一方で、秋季入学を拡大する

また、「ゆとり」の中で「生きる力」の育成を目指す初等中等教育の改善の方向を尊重することが重要であるとし、高等学校の調査書の一層の活用、思考力を問う出題や総合問題の出題、英語におけるリスニングの導入、推薦入学の拡大などを提言している。

大学入試センター試験と個別試験の在り方については、センター試験の問題作成に高校関係者の協力を得ることや、センター試験が一定水準に達していれば、各大学で学力試験以外の資料により選抜する取組などを推進することを提言している。また、「分離・分割方式」に関して、影響力のある特定の大学に対して、後期日程の募集人員の比率の拡大を求めている。

こうした入学者選抜の改善のためには、様々な条件整備が必要であり、答申は、我が国の大学の特性を踏まえたアドミッション・オフィスの整備、ゆったりとした入試日程の確保、入試に関する外部評価の導入などを提言している。

さらに、入学者選抜の改善とともに、高等教育を柔らかなシステムとしていくことが重要であり、答申は、単位互換の推進、編入学等の拡充や社会人入学の拡大などについて提言している。

(b) 高等学校入学者選抜の改善

高等学校入学者選抜については、中・高等学校間のハードルを低くするという観点から、1点差刻みで合否を決するのではなく、学力試験で一定以上の点数を得ていれば、他の資料により選考を行うことや、学力試験の実施教科の取扱いを多様化することなどについて提言を行っている。

また、選抜方法の多様化や評価尺度の多元化を進めるための方途として、同一高校において複数の選抜基準を導入したり、子どもや保護者の自己申告書を選抜資料として活用することなどが盛り込まれている。

さらに、「生きる力」の育成を目指し、自ら学び、自ら考える教育へ転換を図ろうとしている中学校以下の教育を尊重することが大切であるとし、調査書の適切な活用や推薦入学の推進などを求めている。

こうした入学者選抜の改善とともに、高校教育の多様化と柔らかなシステムの実現を図ることが必要であることから、総合学科の整備や転編入学の枠の拡大などについて提言を行っている。

(c) 学(校)歴偏重社会の問題

答申は、学(校)歴偏重社会の問題の是正のためには学校・企業・親などが、それぞれの立場で取組を進めることが必要であるとし、企業等に対しては、その採用・昇進の在り方の改革(学校名にこだわらない採用の推進、新卒一括採用の見直し等)を求めるとともに、親を含む国民の意識(横並び意識、同質志向、過度に年齢にとらわれた価値観等)の改革が必要であるとしている。

(ウ) 中高一貫教育

答申は、中高一貫教育の様々な利点を挙げるとともに、特に「ゆとり」ある学校生活を送ることを可能にするということの意義の大きさを指摘している。「ゆとり」ある学校生活の中で、子どもたちは様々な試行錯誤をしたり、体験を積み重ねること等を通じて、豊かな学習をし、個性や創造性を伸ばすことがより可能になるとしている。答申は、こうした意義を踏まえるとともに、子どもたちや保護者の選択の幅を広げ、学校制度の複線化構造を進める観点から、中高一貫教育を選択的に導入することが適当とし、次のように具体的な導入の在り方について述べている。

まず、教育内容については、普通科タイプ、総合学科タイプ、専門学科タイプなどの類型が考えられるとしている。また、中高一貫校では、特色ある教育の展開が期待されるとし、例えば、体験学習、地域に関する学習、国際化や情報化に対応する教育、環境に関する学習、伝統文化等の継承のための教育、じっくり学びたい子どもたちの希望にこたえる教育などを軸に据えた学校が示されている。

中高一貫教育の実施形態については、

1) 同一の設置者が中学校と高等学校を併設する(一つの6年制の学校として設置する場合も含む)、
2) 市町村立中学校と都道府県立高等学校を連携する、

といった類型を提示している。

なお、中高一貫教育を導入するかどうか、導入するとすればどのような学校とするのかについては、学校設置者の主体的な判断を尊重することが適当であると述べるとともに、そのための所要の制度改革を行うことが国の役割であると指摘している。

さらに、中高一貫教育の導入に当たっては、受験競争の低年齢化を招かないようにすることが必要であり、入学者を定める際には、公立については学力試験を行わず、抽選、面接、推薦など多様な方法を適切に組み合わせることが適当であるとしている。

中高一貫教育における体験活動

(エ) 教育上の例外措置

答申は、稀有な才能を有する子どもたちに対する教育について、諸外国の状況や「教育上の例外措置に関するパイロット事業」の実施状況を踏まえて検討を行っている。そして、そうした子どもたちについては、現在の制度内の措置では十分に対応できないとし、その才能を一層伸長し、個性を最大限引き出す観点から、18歳未満であっても大学入学資格を認めるよう、制度改革を行うことが適当であるとしている(これを踏まえ、平成9年7月に関係省令等を改正)。

具体的には、対象分野について、当面、数学と物理に限ることが適当であるとしている。また、対象者については、一分野で突出した才能を保持し、将来、学問の新しいフロンティアを開拓する可能性を持つ17歳以上(高等学校在学2年間以上)の者で、全国的にもごく少数の者を想定しており、いわゆる「受験エリート」を対象とするものでない旨を強調している。

なお、いわゆる「飛び級」(小・中・高等学校の各学校段階内において学年を飛び越すこと)については、受験競争の激化を招くおそれが強いことなどから、実施しないことが適当であるとしている。

答申では、こうした例外措置以外にも、優れた能力を持つ高校生のための多様な教育機会として、大学等による科目等履修生の受入れ、公開講座の開催などの取組を充実すべきであるとしている。

さらに、このような取組と同時に、学校教育全体にわたって個に応じた指導を進め、学習の進度の遅い子どもに十分配慮していくことが重要であるとし、個別指導や補充学習、選択履修の時間における反復学習などの取組を求めている。

教育上の例外措置に関するパイロット事業

(オ) 高齢社会に対応する教育の在り方

答申は、急速に進展する高齢化を展望し、高齢社会における子どもたちの教育の在り方について検討することが必要であることから、社会の変化に対応する教育の在り方に関する第一次答申の提言に加えて、この問題を取り上げている。答申は、基本的な考え方として、教育においては、

1) 思いやりの心など豊かな人間性や、高齢者のために行動する意欲・態度の育成、
2) 生涯を通じ学んでいく態度、基礎的な健康や体力の育成、
3) 高齢者が教育の営みに積極的に参加し、子どもたちが高齢者から生きた知識や生き方を学ぶこと、

の三つを掲げ、その上で、学校、家庭、地域社会それぞれにおける取組について述べている。

学校においては、高齢者と触れ合い、交流する体験活動を重視すべきであるとし、幼稚園や小学校における触れ合いプログラムの導入や、中学校や高等学校で介護体験を行うことなどを提言している。また、学校教育において高齢者を活用するために、教育委員会が人材バンク等を整備すること、教員養成段階において介護・福祉等の体験活動を行うこと、学校施設と高齢者福祉施設の連携(施設の複合化の検討など)を進めることなどを提言している。

また、家庭教育を充実して豊かな人間性を育(はぐく)むこと、地域社会において高齢者との触れ合いの機会を充実すること、ボランティア活動を促進することの重要性を指摘している。

複合施設での高齢者との触れ合い(中央区立晴海中学校)


(2) 「幼児期からの心の教育の在り方について」の審議

平成9年8月、文部大臣から中央教育審議会に対して、「幼児期からの心の教育の在り方について」諮問が行われた。この諮問は、

1) 生命を尊重する心、他者への思いやり、社会性、倫理観、正義感等の豊かな人間性の育成が重要な課題であること、
2) 今日の子どもたちには様々な積極面もあるが、幼児期からの心の成長を考える場合、多くの憂慮すべき問題があること(少子化や核家族化等を背景とした家庭の教育力の低下-親の放任や逆に過保護・過干渉、兄弟姉妹の切磋琢磨や祖父母から学ぶことの不足-、地域社会における人間関係の希薄化、大人社会におけるモラルの低下、「ゆとり」のない学校生活、情報機器の普及に伴う間接体験の増加、暴力や性的な情報の氾濫など)、
3) こうした問題を踏まえ、幼児期からの心の教育の在り方について幅広い観点から見直し、社会全体での取組が必要であること、

などの理由から行われたものである。

また、諮問の主な検討事項としては、

1) 子どもの心の成長をめぐる状況と今後重視すべき心の教育の視点、
2) 幼児期からの発達段階を踏まえた心の教育の在り方、
3) 家庭、地域社会、学校、関係機関が連携・協力して取り組む心の教育の在り方、

が挙げられている。

中央教育審議会では、幼児期からの心の教育の在り方について、諮問後1年以内を目途に審議の成果を取りまとめ、広く国民の意見を聴くこととしている。


(3) 「今後の地方教育行政の在り方について」の審議

平成9年9月、文部大臣から中央教育審議会に対して、「今後の地方教育行政の在り方について」諮問が行われた。この諮問は、来年で教育委員会制度発足50周年を迎える今日、地方分権の推進などの理念を踏まえつつ、新しい時代に対応するため、地方教育行政の在り方全体を見通し、改善を図っていくことが必要である、との理由から行われたものである。

諮問の主な検討事項としては、

1) 今後における国・都道府県・市町村の関係及び教育委員会と学校等教育機関の関係の在り方、
2) 教育委員会を中心とする主体的かつ積極的な地方教育行政の展開方策、
3) 地域における学校等教育機関の役割と運営の在り方、

が挙げられている。

中央教育審議会では、教育長の任命承認の廃止や教育委員会の積極的な行政の展開方策については、平成9年度中を目途に取りまとめることとしている。


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