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1部   未来を拓く学術研究
第4章   学術研究をめぐる内外の動向
第3節   海外における学術政策の同行
2   主要先進国における学術政策


学術・科学技術行政システムや学術研究体制は、歴史的背景もあり、国ごとに異なるが、諸外国の学術行政の仕組みや学術研究における大学等の役割、学術政策の動向等を把握することにより、国際的視野に立って我が国の学術政策を見直すこともできる。ここでは、アメリカ、イギリス、ドイツ、フランスの4か国についての調査結果を紹介することとする( 図i-4-5 表i-4-3 )。


(1) アメリカ
(ア) 学術・科学技術行政システム

アメリカは連邦制をとっているが、連邦政府において大学行政を担当するのは教育省であり、情報提供、財政援助等を行っている。また、大学の設置主体は、軍関係等の13の連邦立高等教育機関以外は、州政府や民間団体である。

アメリカの学術・科学技術行政の仕組みは、連邦政府の各省庁や独立機関あるいは州政府が、それぞれの行政目的に応じた研究開発を所轄研究所等で行うとともに、大学に研究を委託し、あるいは助成金を交付するのが基本となっている。また、連邦政府が資金を拠出し、大学が管理運営を委託されている連邦政府財政負担研究センター(FFRDC)も一定の役割を果たしている。

基礎研究費の使用について、大学は1995(平成7)年で59%を占めている。大学にとって最も大きな研究資金拠出者は連邦政府で、60%を占めているが、このような資金拠出者としては、農務省、商務省、国防総省、厚生省、エネルギー省等の各省に加え、独立機関である航空宇宙局等、さらには、自ら研究所を持たず、もっぱら助成金の交付を行う全米科学財団(NSF)がある。なお、現在、大学に対して最も多額の資金を拠出しているのは、厚生省傘下の国立衛生院(NIH)で、連邦政府全体の約50%を占めている。なお、博士課程学生や博士号取得者に対する援助については、NSFとNIHを中心とする連邦政府の奨学金等が大きな役割を果たしている。

大統領府には科学技術政策局が置かれている。同局は職員数30人程度の組織であるが、大統領や各省庁に対して科学技術政策に関する助言等を行うほか、1993(平成5)年に設置された国家科学技術会議(NSTC)(大統領を議長とし、関係閣僚等によって構成され、省庁間の連携を図るもの)及び大統領科学技術諮問委員会(PCAST)(民間の有識者によって構成され、民間の声の反映を図るもの)の事務局の役割も兼ねている。NSTCもPCASTも、国家的見地から連携・協力を図ることを目的とする会議体であり、研究開発の実施、研究費の配分等の機能は有していない。


(イ) 学術政策の動向

戦後、冷戦の影響もあって、連邦政府の各省庁等は、研究開発に積極的に取り組み、大学に対して多大の研究資金を競争的に供給してきた。このような研究資金には人件費や間接経費が組み込まれ、その獲得は、研究者と支援者を含む研究組織、研究者養成、施設設備等に影響する一方、大学においては、我が国の教官当たり積算校費のような経常的な資金が措置されていない場合が少なくない。ただし、このような研究を本格的に遂行しているのは、全米3,600以上の大学のうち、研究大学(Research University)と呼ばれる、研究と大学院博士課程に重点を置いた125校ほどである。

研究組織については、伝統的な学科、センター、研究所等、あるいはFFRDCのほか、特別に組織された研究単位(Research Unit)がある。例えば、NSFの支援による産学協同センターや工学センターは、原則として、5年の連邦政府資金助成期間終了後は、民間資金や自己財源で賄うか、組織を改廃することとされている。

大学の研究費は、これまで着実に伸びてきており、その中で、連邦政府は、戦後一貫して最大の資金拠出者であるが、国防関連支出の相対的減少など、その対象や構成には変化が見られる一方、近年、産業界からの資金提供が増加している。


(ウ) 研究評価

一般的に、基礎的な研究についてはピアレビュー(研究者による評価)により、また、各省庁等の行政目的に応じた研究開発については担当部局ないし担当官の行政的判断により、評価が行われている。例えば、NIHの助成金交付に当たっては、外部専門家パネルでのピアレビューで評点を付けた後、科学者以外の者を含む諮問委員会が審査を行って採否を決定し、また、書面報告及び現地視察による中間評価を実施している。


(2) イギリス
(ア) 学術・科学技術行政システム

大学行政については、教育雇用省が担当している。また、1992(平成4)年、内閣府に科学技術局が設置され、1995(平成7)年に、貿易産業省に移管されたが、これは、高い水準にある基礎研究の成果を産業界に技術移転するための措置とされている。同局の長は、首相が任命する政府主任科学顧問となっている。同局は、研究審議会(RC)を通じて大学等に研究費を配分するほか、年次報告や動向予測等を行っている。なお、貿易産業省を含む各省庁は、それぞれの行政目的に応じた応用研究・開発を所轄研究所等で行っている。

大学に対しては、教育雇用省の高等教育財政審議会(HEFC)を通じて基盤的・経常的な資金が配分される一方、RCを通じて、より競争的な研究資金が配分されるという二元的な制度となっている。HEFCからの資金については、積算上、1995〜96年度で約64%が教育に係る経費、約18%が研究に係る経費とされている。また、RCには、それぞれ研究費の配分等を行う六つの分野別審議会と、共同利用施設を運営する審議会がある。なお、博士課程学生や博士号取得者に対する援助については、RCを通じて支給される奨学金が中心的な役割を果している。

なお、科学技術審議会(CST)は、財界や学界を含む各界の有識者によって構成され、科学技術政策について首相に助言を行うこととされている。


(イ) 学術政策の動向

1993(平成5)年以降、科学技術白書、「技術予測(Technology Foresight)」、年次報告を公表するなど、戦略的対応を重視する中で、近年、産学連携の強化を目指した競争的資金の拡充が図られており、1986〜87年度予算と1994〜95年度予算を比較すると、RC関係の競争的研究資金は105%の増(6.0億ポンドから12.2億ポンド)となっている。また、民間企業による一定額の資金提供を条件にRCの助成金を交付する制度の導入や拡充、「技術予測」に示された優先分野に限定しつつ同様の条件を課す制度の導入等が行われている。


(ウ) 研究評価

hefc関係、rc関係のいずれも、評価が資金の配分に直結するため、相当程度定式化した上で、外部専門家のピアレビューにより基本的な優劣関係の判断を得る方法によっている。ただし、ピアレビューに匹敵するような客観的な指標づくりが試みられている模様である。

HEFC関係については、分野別の評価委員会が学科等を対象に評価を行い、7段階(1995(平成7)年までは5段階)で評価している。RC関係については、各分野の審議会が書面審査とパネル審査の組合せ等により判定した上で、プログラム・マネージャーが最終決定を行うなどの方法によっている。


(3) ドイツ
(ア) 学術・科学技術行政システム

ドイツにおいては、連邦制の下に各州が国家的機能を有しており、各大学の設置管理主体は州政府であるが、大学制度一般などは連邦の事務で、大学に対する学術研究支援など州を越える学術・科学技術の振興については連邦と各州の共同事務とされている。連邦政府においては、1994(平成6)年に教育学術省と研究技術省を統合した教育学術研究技術省が、軍事関係や一部の巨大プロジェクトを除き、ほぼ一元的に学術・科学技術行政を担っている。

研究助成を含む高等教育及び学術・科学技術政策については、連邦と各州の行政協定により設置されている連邦各州教育計画研究助成委員会(BLK)が、同じく連邦と各州の行政協定により設置されている学術協議会(WR)の勧告等に基づいて調整を行うなどとされている。なお、連邦政府の防衛省や経済省が所轄研究所あるいは民間企業等で研究を実施あるいは委託するほか、各州は、大学に対し、基盤的・経常的な教育研究資金を配分し、各州文部大臣会議(KMK)を通じて一般的な調整等を行っている。博士候補者については、各州のほか、連邦政府の援助を受けた民間の財団が、また、博士号取得者については、ドイツ研究協会(DFG)が中心となって奨学金を支給している。

1995(平成7)年に、首相を議長とし、関係閣僚、州の閣僚、学界や産業・労働界の代表によって構成される研究技術革新協議会(rfti)が設置され、重要課題に関する勧告等を行っているが、研究開発の実施、研究費の配分等の機能は有していない。

学術振興・助成を目的とする機関として、DFG、マックスプランク協会、青色リスト学術研究協会等があり、それぞれ大学や傘下の研究所に対し、連邦及び州政府の共同負担による資金を中心に配分・助成を行っている。


(イ) 学術政策の動向

1990(平成2)年10月の統一条約発効後、それまで社会主義政権の下にあった旧東ドイツ地域の大学や研究機関の再編成が行われ、人文・社会科学系の教員が多数解雇される一方、旧西ドイツ地域や外国から教員が採用された。旧東ドイツ地域の研究機関の再編成に当たっては、wrを中心に厳格な評価が行われ、これに基づいて廃止が決定されたものも少なくない。

1996(平成8)年11月、wrは「大学における研究に関する提言」を取りまとめたが、その中で、人事交流、共同研究、ベンチャー企業の設立、特許権の活用等により産学の連携を強化し、大学の知識と技術の移転を進めるべきこととしている。


(ウ) 研究評価

1995(平成7)年から1999(平成11)年までの間に82の青色リスト研究所すべてを評価する作業が進行中であるが、その主体は、外部専門家、wr委員及び連邦・州政府関係者によって構成されるwrの青色リスト委員会である。各研究所ごとに評価グループを設け、実地調査やヒアリングを行った上で評価報告書を作成する。青色リスト委員会は、評価報告書を踏まえて勧告等を作成し、これらを公表する。最終的には、blkが勧告の実施について決定する。

DFGにおいては、4年ごとに選任される外部専門家によって構成される評価委員会が、書面による事前審査を行って、採否及び総合所見を示すほか、採択されたプロジェクトについて、2年後に中間評価を行っている。


(4) フランス
(ア) 学術・科学技術行政システム

政権交代に伴って国家行政組織の再編が行われることが多く、学術・科学技術を担当する組織も幾度かの変遷を経ている。現在は、ミッテラン政権下の1982(昭和57)年に設置された研究技術省を国民教育省と統合した国民教育高等教育研究省(1997(平成9)年6月に国民教育研究技術省に改称)が、シラク政権下の1995(平成7)年に設置され、ほぼ一元的に大学、グランゼコール及び所轄研究所等に研究費等を配分・助成する仕組みとなっており、大学等については、国立科学研究センター(CNRS)が大きな役割を果たしている。なお、大学等の人件費や教育経費は、同省から別途配分される。博士課程学生に対する奨学金については、同省とCNRSが中心的な役割を果している。

科学技術政策全般に関する同省の諮問機関として、研究技術高等審議会(CSRT)が置かれているほか、科学技術研究閣僚会議(CIRST)は、首相を議長とし、関係閣僚等によって構成され、政府の科学技術政策の最高決定機関とされている。また、1995(平成7)年に、各界の有識者から成る戦略動向委員会(COS)が設置され、科学技術政策に関する長期ビジョンの策定や政府に対する助言を行うこととされている。これらの審議会等はいずれも、研究開発の実施、研究費の配分等の機能は有していない。


(イ) 学術政策の動向

フランスにおける研究開発は、公的研究機関が中心的な担い手となっているが、その中でも軍事研究がかなりの比重を占めている。従前においては、教育機能の中心を大学等で、研究機能の中心をCNRSで、という状況であったが、近年、大学等の研究能力の向上が著しく、研究活動の面でCNRSと大学等の連携が強化されている。CNRS等から大学等に交付される研究資金は、プロジェクトではなく研究組織(グループ)を対象としており、4年間の契約により、総括補助として交付される方式を採っている点に特色がある。


(ウ) 研究評価

1984(昭和59)年に設置された国家評価委員会(cne)は、大統領が任命した委員により、各大学等の機関評価等を行っている。また、1989(平成元)年に大統領府に設置された国家研究評価委員会(cner)は、研究機関の機関評価のほか、大きなプロジェクト等の評価を行っている。

なお、最近、CNEとCNERが共同で、生命科学分野における大学と研究機関の相互関係について評価を実施している。

なお、上記(ア)に述べたCSRTは、フランスの研究システム全体の評価を行い、年次報告として取りまとめて議会に提出している。

1-4-5 アメリカ、イギリス、ドイツ及びフランスの学術行政機構

1-4-3 アメリカ、イギリス、ドイツ及びフランスにおける学術研究機関数、研究者数


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