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1部   未来を拓く学術研究
第4章   学術研究をめぐる内外の動向
第2節   各研究分野の動向
8   生命科学系


医学を含む生命科学系全般について、遺伝子解析や操作を中心とする分子生物学的手法を用いた研究が盛んに行われており、このような手法により、基礎生物学から臨床医学まで通じる一種の共通的基盤が形成されつつある。

植物の葉緑体やミトコンドリア(動植物の細胞質内にある、呼吸作用にかかわる粒状の小体)はもとより、ヒトの遺伝子の解析も進み、遺伝子や分子の進化についての研究も進展している。医学においても、がんやエイズを含め、疾患遺伝子の解明、遺伝子診断や遺伝子治療が行われている。もっとも、遺伝子操作には倫理問題が絡み、社会的合意の形成を要するケースもあるものと思われる。アポトーシス(細胞死)の分子メカニズム等の、免疫系細胞を中心にした、細胞機能の分子学的理解が進んでいるほか、実験動物の個体レベルでのクローニングや微量DNA増幅技術、発生工学の手法を用いたモデル動物作製等が行われている。

医学においては、今後、がんのほか、脳や老化のメカニズムの解明に向けての研究がかなり行われるものと思われるほか、プリオン病(タンパク質性感染粒子プリオンが引き起こす狂牛病(ウシ海綿状脳症)等)を含む感染症への取組が期待されている。臨床医学においては、遺伝子治療に加え、内視鏡、超音波、脳血流測定等の発達による画像診断の精度の向上に伴う非侵襲的(身体的負担の少ない)手術等が、治療学の進歩に寄与している。

一方、生物有機化学においては、昆虫、微生物等の微量生理活性物質の解析が、生化学や分子生物学と融合する形で進み、今後は、病害虫防除技術への応用が期待されている。また、化学、生化学、分子生物学の各手法を総合的に取り入れた糖鎖工学、タンパク質工学の発展も期待されている。

複合的な分野である食品・栄養学においては、機能性食品(特定の生体調節成分の機能が発揮されるように作られている食品)の開発や、がん、老化、成人病、アレルギーの発生に対する食品成分の機能についての研究が進むものと思われる。

生態学においては、各種における生態現象を自然淘汰(とうた)による適応進化の結果ととらえる進化生態学が発展する一方、種の間の相互作用等を対象とする群衆生態学において、従来の競争・捕食関係から、むしろ共生・協調関係に焦点を当てた研究が盛んに行われ、成果を上げている。また、生物多様性に関する研究も進んでいる。今後は、生物多様化と生態系の自己組織化との関係の解明が課題であるほか、気候変動を含む地球規模の変動に対応した、大規模な生態系モデリングの構築も必要となろう。


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