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1部   未来を拓く学術研究
第4章   学術研究をめぐる内外の動向
第2節   各研究分野の動向
2   数物科学系


数学は、歴史的に古典物理学と密接な関係を持ちながら発展してきた。現代数学も、量子統計力学と結合した数理物理学として、高度かつ多様な発展を遂げつつあるが、今や、数学は、あらゆる学問の基礎あるいは基本的な分析道具と言っても過言ではない。現代文明の象徴であるコンピュータも、フォン・ノイマンの数学理論の基礎の上に開発され、発達・普及しており、情報科学・情報理論の発展を支える確率、統計、暗号・符号、カオス等の理論も数学の応用である。

また、例えば、幾何学の結び目理論は、量子統計力学を中心とする理論物理学はもとより、遺伝子DNA(デオキシリボ核酸)の結び目分類として生化学にも応用され、あるいは、解析学、代数学、確率論、統計学等は、経済学をはじめとする社会科学の数理・計量分析手法の発展を可能とし、近年においては、ゲームの理論や線形計画法の応用も進みつつある。

さらに、代数幾何学、複素解析学、微分幾何学が形成されるなど、数学の中の分野同士が刺激し合いながら融合する傾向も見られる。

素粒子物理学においては、物質の究極である素粒子や、素粒子の間に働く4種の力(重力、電磁力、強い力、弱い力)の解明が進められている。その解明のために、重力以外の3種の力について標準模型と呼ばれるモデルが提案されているが、1994(平成6)年におけるアメリカの国立フェルミ研究所での陽子・陽子衝突実験の結果、トップクォークが発見されたため、このモデルの残された大きな課題は、質量の起源の解明につながるヒッグス粒子の探索である。

力の本質の解明については、4種の力のうち重力以外の3種の力についての大統一理論(GUT)や、大統一理論の中でも可能性の高い超対称大統一理論が提案されているが、前者が予言する、陽子が陽電子等に自壊する陽子崩壊の検証や、後者が想定する超対称粒子の探索が、今後の課題である。

また、CP非保存と呼ばれる、素粒子の基本的対称性の破れや、標準模型ではゼロと措定されているニュートリノの質量の検証につながるニュートリノ振動の解明も、今後の課題である。

我が国においては、高エネルギー加速器研究機構における電子・陽電子衝突型加速器を用いたBファクトリー計画や東京大学宇宙線研究所神岡宇宙素粒子研究施設の大型水チェレンコフ宇宙素粒子観測装置(スーパーカミオカンデ)等により、これらの課題に挑戦しているが、アメリカ(スタンフォード大学線形加速器センター(SLAC)等)やヨーロッパ(欧州原子核研究機関(CERN)等)においても、大型加速器を用いたプロジェクトが進行中である。

原子核物理学は、素粒子物理学に比べて、原子核をより巨視的にとらえるアプローチによるものであるが、重イオン同士を衝突させる実験により、宇宙初期と同様の状態とし、高密度核物質、特に高温状態でのクォーク・グルーオンプラズマを生成させて研究することが、今後の大きな課題である。

宇宙物理学においては、ビッグバンに始まる宇宙の進化や構造の解明が進められているが、今や、素粒子物理学と相携えて発展が遂げられつつある。その意味では、加速器等を用いた高エネルギー実験の役割が大きいが、同時に、宇宙線そのものの観測や研究も極めて重要である。

今後の課題としては、太陽から飛来するニュートリノの検出数が理論値の半分程度であるという太陽ニュートリノ問題、超高エネルギーガンマ線源、暗黒物質(ダークマター)等の解明がある。

我が国のスーパーカミオカンデのほか、カナダの重水チェレンコフ検出器(SNO)、イタリアの液体シンチレータ検出器(Borexino)等が、太陽ニュートリノ問題を中心に、これらの課題に挑戦している。

物性物理学は、原子の組合せにより、多様な性質や現象を示す物質を探索し、その仕組みを解明するものであるが、材料科学や生命科学の基礎にもなっている。

近年、注目を集めた新物質としては、銅酸化物の高温超伝導体(一定温度以下で電気抵抗がなくなる性質を持つ物質)や、炭素原子がサッカーボール状や円筒形の安定した分子構造となっているフラーレンやカーボンナノチューブ、あるいは熱平衡状態で安定した準結晶等のほか、メソスコピック系と呼ばれる、半導体加工技術が生み出した、原子と物質の中間的規模の人工物質があり、今後とも、このような新物質の探索から様々な発見がなされよう。

大きな課題としては、相関の強い電子系の超伝導や化学反応等についての理論的研究、あるいは、量子効果の解明が進む中、その応用面への展開がある。また、従来の物理学の枠を超えた非平衡系や複雑系の物理学あるいは科学が発展し、新たなパラダイムの構築が試みられる可能性がある。

金表面上に集合したポルフィリン・フラーレン化合物の単分子膜


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