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1部   未来を拓く学術研究
第4章   学術研究をめぐる内外の動向
第2節   各研究分野の動向
1   人文・社会科学系


人文・社会科学は、広く人類文化に関する学問であり、その対象も、人間の精神活動、社会現象あるいは広く文化・文明に及ぶため、そのすべてに共通する動向を示すことは不可能であり、ここでは、特筆すべきいくつかの特徴的な傾向について記述することとする。

例えば、歴史学、政治学等に見られる、学問や研究テーマの細分化、個別化の進展に対し、むしろ総合性、学際性を追求する傾向が顕在化しつつある。実践的な政策立案や問題解決を指向する政策学あるいは政策科学と呼ばれる新分野も誕生し、経済学と他の社会科学との融合や、社会科学と、情報科学等の自然科学との融合が見られる。また、例えばクローン(遺伝子組成が同一の細胞や個体)研究のように、倫理や規範にかかわる問題を内包し、自然科学と人文・社会科学の対話や協力が社会的に要請される局面も生じている。

社会科学の中でも、自然科学的アプローチを多く取り入れている近代経済学においては、自然科学における大きな動向と軌を一にして、非線形動学の数学理論やコンピュータによる大規模シミュレーション(模擬実験)等を基礎に、動的な相互依存関係をとらえる複雑系システム理論へと統一的に発展する傾向を見せている。なお、コンピュータの普及や情報科学の発達は、人文・社会科学の各分野、例えば、経済学、社会学、心理学、地理学、文化人類学において、計量的手法を高度化させ、現実追求・説明力を向上させるばかりでなく、例えば、言語学、文学、宗教学、考古学、文献学において、原典資料等のデータベース化、cd-rom(コンパクトディスクを用いた読み出し専用メモリー)による画像処理、音響処理等により、効率的かつ体系的な研究を可能としている。

なお、社会の情報化に伴い、計算機科学あるいは情報科学を基盤としながらも、人文・社会科学系も取り込んだ学際的・総合的な領域としての「情報学」が形成される可能性がある。

もっとも、例えば、文学や語学においては、言語の占める比重が大きく、海外への情報発信という点で大きな制約があるものもあるが、全般的には、国際比較研究の実施等により、紹介型・輸入型から情報発信型・輸出型を志向する研究者が増えている。

人文・社会科学の多くの分野において、冷戦構造の終焉(しゅうえん)、高度情報社会の展開、資源・エネルギー、食糧、環境等の地球規模の問題をはじめ、時代の変化に敏感に対応した取組が見られ、これに伴い、国際化や学際化・総合化が促進されている。法律学において、最近、国際経済法、国際人権法、EU(欧州連合)法の3学会が設立されたことも、このような研究者の関心の動向の表れと思われる。

総合的な取組を指向する代表的な分野として、地域研究がある。地域研究においては、学際的・融合的傾向を強め、より組織的あるいはネットワーク形成型の体制をとりつつ、実践的な研究も増えているが、最近の特徴的な傾向の一つは、アジアという視角から総合的なアプローチをとろうとする研究の進展である。

内外の動向の変化に伴い、人文・社会科学における新規分野の開拓も進むものと思われるが、その総合化や国際化を促進するため、基盤や拠点の整備等の支援策を講じる必要があるとの声もある。


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