ここからサイトの主なメニューです
前(節)へ  次(節)へ
1部   未来を拓く学術研究
第2章   学術振興の基本施策
第2節   学術研究の推進を担う研究組織の機能を高めるために
2   研究組織の弾力化・流動化



(1) 研究組織の新たな展開

学術研究は、研究者の自由な発想を源泉として、人文・社会・自然科学のあらゆる分野にわたって行われているが、研究内容の多様化、複合化等が進展している状況の中で、研究組織が常に活性化した状態を維持できるよう、文部省では、国立の大学等について、研究組織の弾力化・流動化等を積極的に推進している。


(ア) 大部門制の導入

学術研究の多様化、複合化等に対応するため、従来の研究組織(通常、教授1名、助教授1名、助手2名で構成される研究部門)より規模が大きく、隣接分野が緩く結び付いた組織(いわゆる大部門制)によって研究を推進することが適当な分野が増えてきている。

そこで、昭和53年度以来、従来の2以上の研究部門を1の研究部門に統合することにより研究動向等に的確に対応できると判断されるものについて、大部門制への改組を行ってきており、平成9年度には金沢大学がん研究所(10部門→3大部門)、九州大学応用力学研究所(15部門→3大部門)を改組し、新たな学術研究の展開を図っている。

このような研究組織の改善により、

1) 隣接の研究分野の教官によって研究部門を編成することにより共同研究が容易となる
2) 新分野、境界領域の学問への対応が容易となる
3) 優秀な研究者の適時的確な配置が容易となる
4) 組織的な国際協力等が容易となる

などの効果が生じている。


(イ) 流動的な研究組織の設置

近年、学術研究の多様化・総合化・大型化の急速な進展、学際的な研究の重要性の増大、研究組織の活性の維持に対応するため、研究組織の弾力化とともに研究者の流動性の促進が重要な課題となっている。

このため、文部省では、研究組織自体はある程度恒久的なものであるが、そこで行われる研究課題や研究者は一定期間ごとに入れ替わる流動的な研究組織の整備に努めている。近年では、東京大学先端科学技術研究センター(昭和62年度設置)、筑波大学先端学際領域研究センター(平成6年度設置)、東北大学学際科学研究センター(7年度設置)、名古屋大学理工科学総合研究センター(7年度設置)などを設置し、学際領域の研究や萌芽(ほうが)的・先端的研究の推進に寄与している。

また、特定の研究プロジェクトチームに対し、一定期間に限り、集中的に研究できる共同研究の場を提供するものとして、平成9年度、大阪大学先導的研究オープンセンターを設置した。同センターでは、特定の研究プロジェクトの終了時には他の研究プロジェクトチームに研究の場を明け渡すこととしており、流動的な組織運用が期待されている。


(ウ) 研究者の流動化を促進するための研究部門の整備

研究組織の活性化には、研究者の流動化の促進を図ることが重要であることから、文部省では、客員研究部門、流動研究部門、寄附講座・寄附研究部門の整備を図っている。

客員研究部門は、定員配置が固定化された研究組織では対処することが困難な学際領域の研究や、関連する学問分野が複雑に交錯する研究等を進めるため、学問体系の流動化や、これに伴う、いわゆる開かれた研究の要請に対応して、固有の定員を配置せず他大学等の研究者を充てる研究部門であり、平成9年度現在、171研究部門が設置されている。

流動研究部門は、他の国立大学等の既存の研究部門等の研究者を、その定員とともに一定期間、大学等の枠を超えて共同研究を実施する研究所等に移行し、設置される研究部門であり、平成9年度現在、岡崎国立共同研究機構分子科学研究所に3研究部門、九州大学有機化学基礎研究センターに2研究部門が設置されている。

寄附講座・寄附研究部門は、大学等に、寄附者が希望する講座や研究部門が開設されるものであり、平成9年6月現在、26国立大学に48講座等が設置されている(1-3-4参照 )。


(エ) 共同利用化の促進

大学等における研究体制については、特に研究手段や研究手法の高度化等に伴い、多くの研究分野で研究者が共同して研究を進める研究組織の必要性が高まるとともに、その有効性が発揮されている。

このため、文部省としては、学術研究の動向、社会的要請等を考慮しながら、現在、14の大学共同利用機関(特定の国立大学に設置しない独立した機関)、20の共同利用附置研究所及び26の全国共同利用施設(特定の国立大学に設置された機関)を整備し、共同研究体制の一層の推進を図っている。

平成9年度には、

1) 加速器科学の分野において、高エネルギー加速器研究機構(大学共同利用機関)の設置、
2) a力学の分野において、九州大学応用力学研究所の共同利用附置研究所への改組、
3) 病理学の分野において、千葉大学真菌医学研究センター(全国共同利用施設)の設置

を行った。


(オ) 国際的な研究拠点の整備

天文学、加速器科学、宇宙科学、核融合研究等の分野における学術研究は、大型の研究設備を必要とすることから、これらの研究を中心的に担う大学共同利用機関等は、我が国の中核的研究拠点のみならず、国際的な研究拠点として、世界各国の研究者とともに活発な研究活動を展開している。

これらの国際的な研究拠点の整備は、「科学技術基本計画」においても重要な政府全体の施策として位置付けられているが、文部省では、我が国の学術研究水準の向上や世界の学術研究の進展につながるものとして、積極的かつ重点的に推進している。

平成9年度においては、素粒子物理学分野のみならず、原子核物理学分野や中間子・ミュオン科学分野等を含めた加速器科学分野における総合的な研究拠点として、高エネルギー加速器研究機構を創設した。また、ハワイに建設を進めている大型光学赤外線望遠鏡に係る研究拠点としての体制を整備するため、国立天文台ハワイ観測所を設置した。さらに、宇宙科学研究所、核融合科学研究所等の研究拠点について研究体制の整備を図っており、これらの機関において、各分野の基礎研究が積極的に推進されている。

ハワイに建設されている大型光学赤外線望遠鏡「すばる」


(2) 研究者の任期制の導入

一般的に、我が国の大学や研究機関は、研究者の流動性に乏しく、研究の場が固定されているため、画一的・同質的な者が構成する研究環境の中で、とかく発想が似通ったり、相互の批判や競争の機会が少なくなるなど、研究者の独創性の涵養(かんよう)や研究の活性化が妨げられている面があるといった指摘もある。

そのため、研究者の流動性を高め、大学等における研究の活性化を図る一方策として、それぞれの大学等の判断により任期制を導入できる選択的任期制を内容とする「大学の教員等の任期に関する法律」が、第140回通常国会(平成9年)で成立した。この法律においては、次の三つのいずれかに該当するときは、任用される者の同意を得て任期付きの任用ができることとされている。

1) 多様な人材の確保が必要な教育研究組織の職に就ける場合(流動型)
2) 主として研究を行う助手の職に就ける場合(研究助手型)
3) 特定の計画に基づき期間を定めて教育研究を行う職に就ける場合(プロジェクト対応型)

なお、国立試験研究機関等の研究公務員についても、研究活動の活性化を図る観点から、新たな雇用の仕組みとして、一定の場合における任期制を導入するため、同国会で「一般職の任期付研究員の採用、給与及び勤務時間の特例に関する法律」が成立した。


前(節)へ  次(節)へ

ページの先頭へ   文部科学省ホームページのトップへ