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1部   未来を拓く学術研究
第2章   学術振興の基本施策
第1節   学術研究を支える基盤を整備・強化するために
4   学術研究に不可欠な情報や資料の整備


我が国の学術研究の進展に伴い、その成果として生み出される学術情報は急激に増大してきており、これらの学術情報は、関連分野の研究動向を的確に把握し、研究者間の相互交流を深めるなど、研究者が研究活動を活性化し、優れた研究成果を生み出す上で極めて重要な資源となっている。

高度情報化社会において、我が国の学術研究の更なる振興を図るために、飛躍的に増加・多様化する学術情報を、研究者のニーズにこたえ迅速・的確に提供するとともに、我が国の優れた研究成果を国内外に広く普及させることが一層強く求められている。

また、大学等において長年にわたる学術研究活動を通じて収集された動植物、化石等の学術資料は、研究教育活動に不可欠な素材である。特に、各種系統生物は、近年の生命科学の著しい発展に伴い、生物学、医学、薬学、農学等の諸分野の研究推進に極めて有用な生物遺伝資源として、その重要性はますます高まっている。

このため、文部省では、ネットワーク、データベースなどの学術情報流通体制や生物遺伝資源などの学術資料の収集・保存・提供体制の整備・充実に努めている。


(1) ネットワークの整備
(ア) 学術情報ネットワーク(SINET:Science Information Network)

近年における学術研究の高度化に伴い、コンピュータネットワークを利用した学術情報の流通が飛躍的に増大するとともに、その内容が多様化している。学術研究を更に発展させるためには、学術情報を迅速・的確に収集し、国内外に発信する情報基盤としてのネットワークを整備・充実させることが必要である。

このため、文部省では、学術情報センターを中心に全国の大学等の間を結ぶ、学術情報ネットワークの高速化、国際接続の拡充を進めている。その接続機関は、平成9年3月現在で大学364(国立89、公立38、私立237)、その他の機関249の計613機関で、着実に増加している。

また、回線速度の高速化についても充実を図っており、主要幹線の一部を150 mbps【用語解説】 とするとともに、アメリカ、タイ、イギリスと接続されている国際回線については、特に混雑が著しいアメリカとの間を、平成9年10月から、これまでの6mbpsから45mbpsに増強した(1-2-15 )。

1-2-15 学術情報ネットワークの構成概念図


(イ) キャンパス情報ネットワーク(学内lan)

大学等の学内の各種コンピュータ間を接続する、キャンパス情報ネットワークは、移転予定の大学を除くすべての国立大学や大学共同利用機関に整備されている。現在は、音声や動画などのマルチメディア情報の円滑な流通に対応するため、 ATM【用語解説】 交換機の導入が進められており、これまでに58国立大学等に導入されている。今後は、すべての国立大学等のATM化を引き続き進めることとしている。

また、私立大学等についても、学内LANや情報処理関係設備等の情報基盤の整備に対する助成を推進している。


<Mbps(メガビット/秒:Mega bit per second)>

1Mbpsは1秒間に100万ビット(新聞約5ページ分)が伝送可能な回線速度。


<ATM(非同期転送モード:Asynchronous Transfer Mode)>

文字、音声、動画像等の大容量のデータを扱うマルチディア情報通信に適した、最新の超高速通信方式


(2) データベースの整備

コンピュータネットワークの著しい進展やマルチメディア技術の進歩に伴い、電子化された情報の重要性が格段に高まっている。特に、検索・加工・分析・発信が可能なデータベースは、学術研究の手段として極めて有用であり、必要な時に必要な情報が入手できるよう、「体系化」され「検索が容易である」という特徴を持つデータベースの整備は、学術研究発展の基盤として極めて重要である。そのため、我が国においても、世界的に貢献するデータベースの整備が急務となっている。

現在、大学等が作成しているデータベースは、学術情報センターの「学術情報データベース実態調査報告書」(平成8年度)によると、総数2,016件で、このうち公開されているものは、約半数の989件である。

文部省では、大学等の研究者や学会等が作成するデータベースに対して、科学研究費(研究成果公開促進費:平成9年度予算額12億8,500万円)により助成を行うとともに、そのうち事業化が可能なものについて、当該分野の中核となる機関に予算措置(9年度予算額5億8,400万円)を行っている。

今後とも、学術審議会学術情報部会が平成9年6月に取りまとめた「学術情報データベース整備の推進方策について(中間まとめ)」等を踏まえて、研究成果公開促進費の拡充等を進めるとともに、制度の改善について検討を進めることとしている。


(3) 大学図書館における電子化の推進

大学図書館は、大学の教育研究活動の基盤組織として極めて重要な役割を果たしているが、近年におけるマルチメディア技術の進展やインターネットなどの普及を背景に、情報提供の在り方等について大きな変革を迫られている。

文部省では、科学技術基本計画や学術審議会の答申・建議等を踏まえ、大学図書館における電子化に努めているが、その主な施策は次のとおりである。

1) 学内LANを活用した情報提供を推進するため、平成7年度から6年計画で、すべての国立大学附属図書館にCD-ROMサーバーシステムを整備し、電子的情報資料の収集と提供サービスの充実を促進。
2) 大学図書館において、従来から集積してきた図書や雑誌等の紙媒体資料を収集・保存及び提供する現有機能との調和を図りつつ、電子図書館的機能を整備する先導的なプロジェクトを奨励・支援。平成9年度には、筑波大学及び京都大学のプロジェクトを推進。なお、奈良先端科学技術大学院大学においては、新たな試みとして、他大学の図書館とは異なり、図書を電子資料として持ち、学内LAN上で検索、閲覧サービスを行うための電子図書館を8年度から運用。
3) 学術情報センターにおいては、平成6年度から3年計画で、学会誌等を電子入力し、ネットワーク上で提供するための電子図書館システムの研究開発を実施。また、9年4月から、情報処理学会など29学会の学会誌を対象に電子入力し、提供サービスを実施。

なお、大学等における電子図書館的機能の充実への取組は、始まったばかりであり、技術的・予算的な面や著作権の問題など、解決すべき課題は広範多岐にわたる。将来的には、すべての大学が理想的な形態を目指すとしても、現時点では、体制の整った大学が、それぞれの実情に応じ、研究者等のニーズを踏まえるとともに、学内の関係組織と連携しながら、実施可能な部分から取り組むことが重要である。


(4) 研究成果の普及

学術研究の成果は、従来から図書・学術雑誌の刊行、研究発表集会等での発表などにより公開され、近年におけるネットワークの発展に伴い、研究者の論文等がインターネットを通じて国内外に発信されるようになり、自然科学分野を中心に拡大の方向にある。このような研究成果の公開は、我が国の学術研究の成果の普及に資するとともに、学術の国際交流に大きく寄与している。

このようなことから、文部省では、学会誌・論文集の刊行、学術的に価値の高い優れた学術図書の刊行、学術図書の外国語への翻訳等及び研究成果を国内外に迅速かつ広く普及させるためのデータベースの作成等に対し、科学研究費により助成を行っている。

さらに、昭和61年度から、文部省の支援により「大学と科学」公開シンポジウムが開催されている。このシンポジウムは、科学研究費等による最新の研究成果や研究動向を広く普及・紹介するための公開発表の場であり、社会の各方面から関心の高いものを取り上げ、第一線の研究者による研究発表や、参加者との意見交換の場を提供している。

「大学と科学」公開シンポジウムポスター


(5) 学会活動の充実

学会は、同一分野の研究者が自主的に組織する団体であるが、大学等の個々の研究組織を超えた、研究発表・討論、情報交換あるいは人的交流の場として重要な役割を果たしている。特に、国内外の研究者による共同研究などの協力・連携が進展する中で、学会は、我が国の学術情報の発信機能を備えている点で、学術研究体制の重要な基盤の一つを構成している。

学会が行う主な事業は、最新の優れた研究成果を発表する学会誌・論文集の刊行、研究発表集会、学術集会、学術講演会などの開催等であり、近年、海外に送付される外国語による学会誌・論文集の刊行や国際会議の開催が増加するなど、国内外における研究成果の公開と普及を通じて学術研究の進展に大きく寄与している。

文部省では、このような学会が行う学会誌・論文集の刊行、データベースの作成、青少年や社会人を対象とする学術シンポジウムや国際会議の開催、学術用語の標準化等に要する経費を助成している。また、学会活動を行う公益法人(学会法人)について、一定の要件の下に 特定公益増進法人【用語解説】 に認定するなどの支援を行っている。


<特定公益増進法人>

教育又は科学の振興、文化の向上、社会福祉への貢献など、公益の増進に著しく寄与する法人として、所得税法施行令及び法人税法施行令で定められている法人。

特定公益増進法人に対する寄付については、寄付者が個人の場合は寄付金控除が認められ、法人の場合は一般の寄付金の損金参入限度額と同額のまでの損金参入が別枠で認められている。


(6) 学術用語の制定・普及

難解で多様な学術用語を整理統一し、平易簡明なものにすることは、学術研究の進展とその普及にとって極めて重要であり、学術情報流通の基盤として重要な意味を持つ。

このため、文部省では、昭和22年以降、関係学会の協力を得て、学術審議会の答申・建議に基づき、各専門分野ごとに学術用語を制定し、それぞれ「学術用語集」として編集・刊行するなど、その普及に努めている。これまでに、化学、電気工学、農学、心理学など30分野の学術用語を制定しており、そのうち、天文学、計測工学、図書館情報学など15分野については、改訂を行っている。


(7) 生物遺伝資源の収集・保存・提供

近年における生命科学の著しい発展に伴い、系統生物は、遺伝子の共通性により生物遺伝資源として重要視されており、ヒトの生命機構の解明、病因の解析、健康の保持、食料問題や環境問題の解明につながる貴重なモデルとして、必要不可欠な研究素材となっている。

このため、平成8年6月に行われた学術審議会学術資料部会の報告「学術研究用生物遺伝資源の活用について」に基づき、9年度に、我が国における生物種ごとの系統保存事業に中心的な役割を果たす「生物遺伝資源センター」及び各種生物遺伝資源に関する情報の総合的な収集・発信、系統保存に関する総合的調整を行う「生物遺伝資源情報総合センター」を新設・整備した。これらのセンターが、国内における個別研究者・研究機関の間の相互連携を強化するとともに、生物遺伝資源の供給を円滑に行うことにより、先導的な生命科学研究の進展が大いに期待される。今後とも、研究ニーズや系統保存事業・研究活動の実績などを考慮し、必要とされる生物種の資源センターを整備することとしている。


(8) 動物実験施設の整備

医学、薬学等の研究においては、実験動物の確保、動物実験のための施設・設備及び動物の飼育管理の向上・改善を行い、実験精度の向上等を図る必要がある。このため、昭和42年5月に行われた学術奨励審議会学術資料分科会の報告「大学における動物実験の改善について」に基づき、46年度から、医学部を有する大学において近代的な集中管理型の動物実験施設の整備を進めている。施設の目的は、

1) 常に再現性のある精度の高い動物実験を行うための環境の提供、
2) 良質な実験動物の集中的な飼育管理、
3) 実験動物の開発研究、
4) 動物実験実施者・学生への指導・教育

である。

近年、生命科学の進展に伴い、実験の目的や内容など、施設を使用する研究者側のニーズは多様化・高度化する傾向にある。また、国内外の研究水準の向上に伴い、実験の精度にますます厳密さが求められるとともに、動物実験が安全かつ適切に行われるよう配慮することが重要となっている。また、遺伝子工学、発生工学技術の進展により、動物個体の遺伝子操作が可能となり、遺伝子導入マウスや遺伝子欠損マウスの作製が行われている。これらの遺伝子操作動物は、脳科学研究をはじめとする生命科学の推進を図るために不可欠な研究素材となっている。

文部省では、学術審議会学術資料部会が平成9年7月に取りまとめた「遺伝子操作動物の保存と供給及び開発について(報告)」を踏まえ、遺伝子操作動物に関する保存、供給、開発及び教育訓練を行うセンターの整備を推進することとしている。


(9) ユニバーシティ・ミュージアムの整備

大学において長年の学術研究の所産として生成され、また研究課題に沿って体系的に収集された動植物、化石等をはじめとする学術標本は、学術研究に不可欠な具体的な形を持った資料であり、多面的な情報を有している。これらの資料は、近年、DNA分析やアイソトープ分析などの新しい分析法や解析法が開発されたことに伴い、異なる研究分野における別の角度からの研究教育の資源としての重要性が高まっている。

欧米においては、数多くの大学が豊富な学術標本を収蔵したユニバーシティ・ミュージアムを設置しており、学術標本の多面的な研究はもとより、学術情報の発信・受信基地として活発に機能している。

このような欧米の大学の実態を踏まえ、学術審議会学術資料部会報告「ユニバーシティ・ミュージアムの設置について」(平成8年1月)においては、大学等の学術標本を整理、保存、公開・展示し、その情報を提供するとともに、これらの学術標本を対象に組織的に独自の研究教育を行い、また、「社会に開かれた大学」の窓口として、人々の多様な学習ニーズに対応できるユニバーシティ・ミュージアムの設置が必要であると提言されている。

文部省では、この提言に基づき、平成8年度に東京大学総合研究博物館、9年度に京都大学総合博物館を設置した。今後とも、学術標本を活用した研究教育実績、その保有・整理状況及び地域性等を考慮しながら、ユニバーシティ・ミュージアムの整備を推進することとしている。

東京大学のユニバーシティ・ミュージアム


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