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1部   未来を拓く学術研究
第1章   学術振興の基本的考え方
第1節   学術研究の意義・役割
1   学術研究の本質


学術研究は、真理の探究という人間の基本的な知的欲求に根ざし、新しい法則や原理の発見、分析や総合の方法論の確立、新しい知識や技術の体系化、先端的な学問領域の開拓などを目指して行われる普遍的な知的創造活動である。これは、研究者の自由な発想と自主的な研究活動を源泉として、人文・社会科学から自然科学までのあらゆる学問分野にわたり、大学やこれと一体的な研究所を中心に推進されている。このような学術研究の成果は、人類の知的共有財産・公共財として、それ自体優れた文化的価値を有するとともに、その応用や技術化を通じて日常生活を支え、豊かにする役割を果たし、人類・社会の発展の基盤を成すものである。

学術研究が基本的には国によって支えられるべきものであることは、このような学術研究の性格によるものである。経済協力開発機構(OECD)の科学技術政策委員会(CSTP)・科学システムグループ(GSS)において、各国で伝統的に大学における学術研究が「公共財」として財政支援を受けている事実が報告されていることは、このことを示している( 第4章第3節1(1)参照 )。例えば、1993(平成5)年に議会に提出されたイギリスの科学技術白書においては、「学術研究の成果は、社会全体・国の経済全体のためのものであり、研究者あるいは研究費拠出者のみのものではない」ことが、国が学術研究の振興を図る根拠とされている。なお、「公共財」とは、経済学では、市場取引のみにゆだねていたのでは社会的に必要十分な供給がなされず(「市場の失敗」)、したがって、例えば政府が適切な財政支援を行うことにより、必要十分な供給が達成されるものをいう。

社会経済の発展における大学・学術研究の役割

経済成長の要因を経済学的に分析すると(「内生的成長理論」)、

1) 労働の量的増加及び
2) 資本の量的増加のみでは説明できない部分があり、
3) 「全要素生産性」(TFP:Total Factor Productivity)と呼ばれている。

tfpについては、我が国の経済白書(年次経済報告)を含め、各国の政府や研究者などによる測定も行われ、社会経済の発展にとっての戦略的重要性が広く認識されるに至っている。

このような観点から、教育が我が国の経済成長に大きく貢献していることについて、測定を含む実証の先駆的な試みを行った「日本の成長と教育」(昭和37年度教育白書)は、「教育は単に経済の発展に寄与するという観点だけでなく、かかる将来の社会に生活する人間像を目ざし、広い観点に立って教育の使命を考えることこそ必要」であるとしつつ、大学や学術研究の役割については、次のような分析を加えている。

○ 「単に物的資本の量と労働人口の量とを増すことによる生産の増加よりも、飛躍的な科学・技術水準の向上と、その広範な普及により、生産の増加が急速に伸びてきているのが、今日の技術革新による経済成長の実態」であり、「科学的創意、技術的熟練、労働者の資質、利用しうる資源を完全に活用しうる人間能力等」が鍵(かぎ)を握っているが、その開発は「教育の普及と高度化に依存することがきわめて大きい」。
○ 「高度の生産性をもつ設備・機械をつくりだす人々、またこれを操作する人々、さらにこれらの物的資本を労働力と有効に結びつける組織と経営力をもつ人々があって、はじめて現代の産業は高い生産力を伸ばし続けることができ」、このような「人間の能力の高度化が積極的に意図される」必要があるが、その「主役を果たすものこそ教育にほかならない」。
○ 「技術革新は高度の学術研究に基づくもので、開発研究、応用研究とともに、基礎研究の重要性をますます強め、高度の研究者の育成を根本において必要とし」、「生産技術の高度化は多数のすぐれた技術者・技能者の養成を強く求めている」ため、「高等教育機関において理工系部門を拡充することとその研究体制を充実すること」等が中心的課題であるが、「もちろんこのことは狭義の専門的知識や技術の習得のみを意味するのではなく、広い基礎学力と豊かな一般教養を修めた、進展する産業社会の科学者・技術者の養成でなければならない」。

したがって、社会経済の発展にとって、大学や学術研究は、いわば要(かなめ)の地位を占めるものと言えよう。特に、キャッチアップ型の発展戦略が過去のものとなり、資源・エネルギーの制約に加え、少子高齢化が急速に進む中、大学において、民間では十分な取組が期待できない基礎的・独創的な研究を推進するとともに、その成果を教育・人材養成に積極的に活用していくことが、我が国の未来を拓(ひら)く原動力となるのである。


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