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1部   生涯学習社会の課題と展望-進む多様化と高度化-
第3章   これからの生涯学習
第1節   多様化する学習ニーズにこたえる
1   多様で総合的な学習機会を提供する


現在の学習ニーズにこたえるためには、多様で総合的な学習機会が提供される必要があるが、学習の提供主体としては、学校や社会教育・文化・スポーツ施設、その他様々な機関・団体等が重要な役割を担っている。

したがって、これらを視野に入れた幅広い取組が必要であり、総合的な計画の整備のほか、行政部局間のみならず幅広い連携・協力のための体制づくりが求められる。

個別の学習機会の提供機関に関しては、平成8年4月24日、生涯学習審議会が「地域における生涯学習機会の充実方策について」としていくつかの提言を行っているが、主として次のようなことが考えられる。

1-3-1(その1) 学習方法別・「新しい学習課題」への取組の現状 表1-3-1(その2) 現在の学習方法別・今後取り組みたい「新しい学習課題」



(1) 高等教育機関

人々の生涯にわたる学習ニーズが高まっている中で、高度で体系的・専門的な学習機会の提供が求められている。このため、放送大学をはじめとする高等教育機関の役割は大きいものと考えられる。


1) 放送大学

人々の高度で体系的・専門的な学習ニーズにこたえていく上で高等教育機関の役割は大きいが、なかでも時間的・空間的制約無しに、だれでも学ぶことができる大学として、生涯学習の時代に大きな役割を果たすのが放送大学である。

放送大学は、テレビ・ラジオの放送を活用して高等教育を広く国民に提供することを目的とした大学であり、生涯学習体系の中での中核的な機関の一つと位置付けられている。その設置の趣旨にかんがみ、入学者選考に当たっては一般の大学のような入学試験を実施せず、また、多様な学習形態に対応できるよう学生種別を区分し、の3種類を設けている。放送大学は昭和58年に設置され、昭和60年4月から学生の受入れが行われ、年齢、職業等を異にする約6万2,000人の多様な人々が学んでおり、卒業生は、これまでに8,000人を超えている。

ア. 卒業を目的とする全科履修生、
イ. 1年間在学し、ある学習テーマを持って科目群を履修する選科履修生、
ウ. 1学期間在学し、希望する科目を履修する科目履修生、

現在、放送大学の放送対象地域は、東京タワー及び群馬県域送信所から送信されて電波が届く関東地域に限られているが、衛星放送を利用した放送対象地域の全国への拡大(全国化)の準備を進めている。また、放送大学の全国化のためには、放送対象地域の拡大に併せて面接授業、単位認定試験等を行う地上の学習拠点の整備を進める必要がある。

このため、放送授業に使用されているビデオ、オーディオテープを利用して放送大学の授業を行う 地域学習センター 【用語解説】の設置を進めている。当面、放送対象地域以外のすべての道府県に、この地域学習センターを設置することを目標に整備を進めているが、現在、31道府県の整備が完了し9県が未設置となっている。


2) 大学・短大等

大学・短大等においては、社会人のアクセスを容易にするための社会人特別選抜や夜間大学院、科目等履修生制度、研究生制度、さらには、大学への編入学制度等といった制度の活用が図られており、これらの制度によって学ぶ者の数も着実に増加している。

例えば、学部段階で科目等履修生を受け入れた大学は、平成4年の116大学に比べ、6年は358大学となっており、受入数も2,119人から1万56人と大幅に増加している。今後とも、これらの制度の一層の活用が期待される( 第2章第1節7 参照)。

また、公開講座の拡充も重要であり、今後は、特に高等教育機関としての特色を生かした内容・水準の講座の開設が求められる。さらに、成人向けのものばかりでなく、青少年に対し、最新の研究成果などを分かりやすく学習できる講座を設けたり、体験入学を実施するなどの青少年を対象とした取組の推進も期待される。さらに、大学等自身がこれらの取組についての情報を積極的に提供していくことも重要であり、この点でも地方自治体等との連携・協力が求められる。


<地域学習センター>

地域学習センターは、現在関東地域に限られている放送授業の視聴範囲を、放送衛星を利用して全国に拡大するための条件整備の一環として設けられている(平成8年度31か所)。全国放送開始までの間、地域学習センターでは、放送授業を収録したビデオ等を利用し、広く大学教育の機会を提供し、生涯学習に対する要望にこたえている。

一方、これらの取組を効果的・継続的に行うための学内の組織体制の整備も重要である。近年では、全学的な生涯学習推進のため中心となる機関の整備が進められている例が見られる。例えば、国立大学においては、平成7年度までに12大学、1短期大学に生涯学習教育研究センター等の名称での整備がなされ、8年度も新たに弘前大学、富山大学において設置がなされた。こうした取組は公私立大学においても進められており、名称、機能等は様々であるが、7年度時点で大学開放のための機関が6公立大学、64私立大学において整備されている。今後ともこのような体制整備が多くの大学等において進められることが期待される。

また、高等教育機関の持つ図書館、体育館・グラウンド等の多様な施設の開放を行うことも望まれる。さらに、ユニバーシティ・ミュージアムを整備し、展示や講演会等を通じ広く学習ニーズにこたえていくことも期待される。


3) 専門学校

専門学校は、社会の要請に即応した実践的な職業教育、専門的な技術教育等を行う高等教育機関の一形態であり、量的にも高等教育の一翼を担うとともに、高等教育の多様化を図る上でも重要な役割を果たしている。

平成6年に昼夜開講制、科目等履修生制度を導入し、8年にはそれぞれ56校、63校が実施しており、科目等履修生数は1,843人となっている。また、同じく6年には、他の専門学校や大学等における授業科目の履修を自校における選択科目の履修とみなすことができる制度を導入した。

今後、各専門学校がその自由で弾力的な制度の特色を生かし、高度化、複雑化する社会のニーズに的確に対応して、生涯学習社会において積極的な役割を果たすことが期待される。


(2) 小・中・高等学校

小・中・高等学校については、地域住民の身近な学習機会の場としての期待が高まっている。特に、高等学校においては、地域住民を対象とした開放講座等の充実を図ることが求められている。

また、これらの施設については、かなりの割合で何らかの開放は行われているものの、その開放の時間や日数等が様々であり、住民の学習ニーズの増大に対しては、必ずしもその需要を満たしているとは言えない状況がある。その一層の開放を図ることが求められる。

なお、施設開放については、開放時に事故が生じた場合、学校側が責任を問われるのではないかとの懸念があることが開放を妨げる要因となっているとの指摘もある。したがって、このような懸念を払拭し、開放事業の実施体制を確立するため、施設の管理責任の在り方を明確にするとともに、管理指導員の適切な配置や、地域住民の協力を得た委員会の整備などを行うことが求められる。

一方、現在児童生徒の減少によって生じている余裕教室の有効活用も今後一層重要な課題となる。さらには、施設開放を円滑に進めるため、あらかじめ学校建設の段階で開放に配慮した設計を行うことも重要である。

学校施設の開放は、地域住民が身近な場所で多様な学習を行う上で極めて有効であり、その促進が期待される。

高等学校の調理室を使用した調理講座


(3) 社会教育・文化・スポーツ施設

社会教育・文化・スポーツ施設については、地域社会に根ざした身近な施設であり、従来から地域住民の学習活動と密接なかかわりを持ってきた。これらの施設については既に一定の役割を果たしているところであるが、住民の学習活動の多様化の中でよりその活性化が求められている。

これを学習機会の提供の面で見ると、具体的には、職業に関する知識や技術の向上、市民意識・社会連帯意識に関する学習、あるいは介護等の生活技術にかかわる学習など、住民の学習ニーズを踏まえた取組が求められる。このためにも、総合的な計画の整備や施設間の連携等が重要である。

さらに、カルチャーセンターなど民間教育事業者も活発に事業を行っている。これらの施設は、地域住民の多様な学習ニーズにこたえ多種多様な学習機会を提供しており、地域住民の幅広い学習活動を支える基盤的な役割を担っている。

なお、特に公民館については、平成7年9月文部省通知により、民間営利教育事業者の施設利用が社会教育法上許容される旨の解釈が明確に示された。施設においては、民間教育事業者の利用を認めることが学習機会提供の充実につながることもある。こうした観点からの検討が一層求められる。

また、これらの施設の運営に当たっては、専門的職員の養成・確保やボランティアの受入れによる人的体制の整備が重要である。また、施設については、地域の実情に応じ、可能な限り、開館日や開館時間の弾力化等を図るほか、施設整備や事業運営に当たっては、子ども、高齢者、障害者、外国人といった学習者の特性への配慮が求められる。


(4) 各省庁や企業などが所管する研究・研修施設

各省庁や地方公共団体の首長部局が所管したり、企業が所有する施設の中には、本来、学習提供を目的としたものでは必ずしもないが、それが有する様々な学習資源を利用して、広く地域住民の学習活動にも寄与することが期待されるものが存在する。既に科学技術庁の研究機関が高等学校や高等専門学校の生徒を対象に「サイエンス・キャンプ」を実施したり、農林水産省の森林総合研究所が親子等を対象に「森林講座」・「森林教室」を実施しているなど、幾つかの事例がある。このような取組が今後とも一層進むことが望まれる。


(5) 学習機会充実のための留意点

なお、生涯学習という概念においては、先にも述べたとおり、学習者の自発的な意志に基づく活動が重視されるべきものである。行政機関としては、学習機会提供の充実に努めるに当たって、自主的な学習グループや個人に対する支援を通じ、住民の自発的な学習活動の展開をいかに図るかという点に配慮すべきと考えられる。

また、学習に要する経費の問題については、これまで、特に公的セクターがかかわる場合、無償ないし教材費程度の負担というのが一般的であった。しかしながら、学習ニーズの多様化・高度化が進む中で、学習活動の充実に要する経費もより増加していくことが予想される。

このような状況を考えれば、これまでのような経費負担のやり方を維持することは、逆に今後の学習機会の充実の制約になることも考えられる。学習の目的、内容、あるいは学習者の属性等の差異を考慮しつつ、適切な負担の在り方を検討すべきであろう。

また、これは、すべての公的セクターに属する学習機関に共通した問題であるとの認識が必要である。例えば、公開講座を行う国公立大学、講座・学級を開設・運営する地方自治体等がそれぞれの立場で取り組むべき課題と考える。


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