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1部   新しい大学像を求めて-進む高等教育の改革-
第4章   大学改革を更に進めるために
第1節   多様化する学生にどう対応するか(新しい大学像の構築)
2   教育研究内容や組織編制の再検討



(1) 大学の個性化と大学教育の理念の再検討

大学の大衆化に伴い、より多様な能力や学習歴を持つ学生が増加する。また、大学進学の目的や将来の進路について、明確な意識を持たない学生も、更に増えることが予想される。したがって、高等学校の教育課程の多様化が一層進むことも念頭に置き、従来以上に、ガイダンスの実施、緩やかな進路形成の方法などを考えなければならない。一方、学問の進展に応じて各専門分野では教えるべき内容が高度化し、増加している。学部を一応の完成教育と考えるとしても、各大学の理念・目的に照らしてその教育内容を基礎的な部分に精選することや、大学院との関連で教育内容を見直すことを検討していくことも求められる。

さらに、教育内容の高度化、過密化が指摘される一方で、学生の高等学校での履修歴の多様化に伴い、大学における補習教育の必要性も生じている。また、特定の分野において卓越した才能を有する者に、早期に大学レベルの教育に触れる機会を提供していくことも課題となっている。平成9年度からは、新しい多様化した高等学校教育課程の下で学習した学生が入学することも考慮すれば、初等中等教育との連携を踏まえた、一層きめ細かな工夫が必要となろう。また、国際化、情報化社会に対応し得る基礎的能力としての、異文化コミュニケーションや情報教育の一層の充実も課題である。

このような多様な要請に対応していくためには、各大学は、それぞれの理念・目的を明確にし、個性化、多様化を進めることが重要である。どのような学生を受け入れ、どのような教養教育、専門教育を行うのか、どのような能力を身に付けて卒業させるのか、各大学において、検討を深めていくことが求められる。その結果、大学が、それぞれの特色に応じ、幾つかのタイプに分かれていくことも予想される。

その際、高等教育全体の中での学部教育の在り方についても、再検討する必要がある。多様化する学生のニーズに対応しつつ、高等教育にふさわしい内容や水準を確保し、さらには、我が国の学術研究や指導的人材の育成を担う教育システムとして、その卓越性をいかに発展させていくかが、今後の最も重要な課題の一つである。大学像の多様化に伴い、各々の大学像に応じて各大学における教育と研究の一体化やその在り方についても、改めて検討していくことが望まれる。


(2) 学部・学科の編制、教育内容・方法の見直し

学問分野や社会の変化に対応して学部・学科の組織の見直しも迫られている。伝統的な学問体系に応じた学部・学科が主流ではあるにしても、情報、人間、環境など分野横断的な学部・学科が増加している。変化の激しい時代には、それぞれの専門分野の知識や学問の仕方を身に付けるだけでなく、学際的、総合的なものの見方を身に付けることが、大切になってきている。特に、学生の立場からすると、高校を卒業したばかりの者に、大学入学段階で、専門分化した学科を選択させることには無理がある場合もあろう。そのような場合には、幅広い学習を行う中で、学生が自分の専攻を見いだしていけるよう配慮することが望まれる。学部全体で学生を募集し、段階的に専攻を絞ったり、途中で専攻や進路の変更を希望する場合は、移動をしやすくするような工夫も望まれる。

教育内容・方法の見直しについては、それぞれの大学で、あるいは専門分野ごとに、それぞれの専門分野における基礎とは何かということについて十分議論することや、シラバスの作成と改善、標準的なカリキュラムの開発などについて検討を深めることが求められている。また、学部・学科を越えた共通授業の実施や、異なる分野の教員や学生との交流の場の確保も重要である。授業においても、双方向的なもの、少人数のもの、自ら考えさせたり、実体験を伴うものなどの工夫をより一層充実させていくことが望ましい。

また、 セメスター制 【用語解説】の活用、社会人の生活に適した昼夜開講制の採用や科目等履修生の対象授業科目の拡大等のほか、他の高等教育機関等における学習の成果を含めた適切な成績評価や、多様な情報機器・教育メディアの活用などについても、一層の普及と工夫が課題となっている。


(3) 教養を培う教育の充実

教養を培う教育の重要性は、改めて繰り返すまでもないが、社会が複雑化し、新たな学術研究の成果が従来以上に様々な社会的、倫理的な問題をはらむようになってきている中で、その重要性はますます高まっている。

平成3年に大学設置基準が改正され、一般教育科目、専門教育科目等の区分が廃止された趣旨は、4年(6年)間の学部教育全体を通じ、専門的知識・技術を身に付けるとともに、幅広く深い教養及び総合的な判断力を培い、豊かな人間性を涵養(かんよう)するための教育を可能にすることであった。その後、各大学においては、その趣旨を踏まえ、第2章第1節で述べたとおり、様々な工夫・改善が行われてきているが、3年の大学審議会答申において、「本審議会としては、一般教育等の理念・目標は極めて重要であるとの認識に立ち、それぞれの大学において、授業科目の枠組みにこだわることなく、この理念・目標の実現のための真剣な努力・工夫がなされることを期待するとともに、この点についての大学人の見識を信ずるものである。」と述べられていることを想起し、それぞれの教育理念・目標に応じた教養教育の実現に向け、全学的な検討とカリキュラム改革への取組を不断に進める必要がある。


(4) 高等教育研究体制の充実と教員の教育能力の向上

大学や大学院の教育研究内容や指導方法についての改善の取組も重要である。このためには各大学での取組のほか、大学間や専門分野ごとにカリキュラムの在り方や指導方法について研究開発することが求められる。このような試みは、日本では最近ようやく始まったばかりであり、高等教育についての組織的、継続的な研究体制を確立することが今後の課題である。

特に、大学教員の教育能力の向上への取組(ファカルティ・ディベロップメント)は、大学における教育機能を充実する上で避けて通れない課題である。大学がいかに多様化しても学生に対する教育は大学の重要な使命である。このような取組を普及させるとともに、積極的な支援を行うことが必要である。


<セメスター制>

学年を複数の学期に分け、各学期ごとに授業を完結させる制度のこと。米国では、2学期制をセメスター、3学期制をトライメスター等と区別して使用されるが、我が国では一括してセメスターと称されることが多い。セメスター制の採用により、短期間の集中的な学習による履修効果の向上、授業科目数の増加による選択の幅の拡大等が期待できる。また、学期単位で授業が完結することから、留学生の受入れ等をより円滑に行うことができる。


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