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1部   新しい大学像を求めて-進む高等教育の改革-
第2章   大学が変わり始めた
第2節   大学院に何を期待するか
1   高度の教育研究拠点を目指す



(1) 大学院の重要性が高まる

大学院は、基礎研究を中心として学術研究を推進するとともに、研究者の養成及び高度の専門的能力を有する人材の養成という役割を担っている。

平成7年度における我が国の大学院の状況は、国立では98大学のすべての大学に、また公立では52大学のうち31大学、私立では415大学のうち256大学に大学院が置かれており、国公私全体では565大学のうち約7割の385大学に大学院が置かれている(1-2-10 )。

学生数については、平成7年5月現在では国公私全体で15万3,423人が大学院に在籍しており、国立には9万7,704人、公立には6,555人、私立には4万9,164人で、国立が全体の3分の2を占めている(1-2-11 )。

在学者数の推移を見ると、昭和50年から昭和60年では4万8,464人から6万9,688人と約1.4倍の伸びであるのに対し、最近の10年間の伸びは約2.0倍と大きく、今後更に大学院学生は増える傾向にある(1-2-12 )。

しかし、大学院の規模について学生数を指標として国際比較すると、学部学生に対する大学院学生の比率は、日本が5.5%に対し、アメリカ15.4%、イギリス37.2%、フランス18.3%となっている。人口千人当たりの大学院学生数では、日本は1.0人に対し、アメリカ7.6人、イギリス3.3人、フランス3.3人であり、ともに各国に比べてまだ少ない状況にある(1-2-13 )。

大学院に対する期待は、近年の学術研究の進展や急速な技術革新、社会・経済の高度化・複雑化、国際化、情報化等の変化等に伴いますます大きなものとなっている。これらの時代の要請にこたえ学術研究の新しい流れを創造していくためには、大学院の質・量両面にわたる飛躍的な整備充実が最大の課題となっている。

このため、各大学院がそれぞれの目的に即し、多様な形で教育研究の一層の高度化・活性化が図られるよう、課程の目的、組織編制、教育方法・形態等について大学院制度の弾力化が図られている。また、時代の要請にこたえ得る大学院として、先端的、学際的分野を中心とした研究科等が新設されてきている。

また、技術革新や産業構造の変化に伴う職業構造の変化の中で、豊かな創造性や専門的な知識・能力を必要とする職業に対する需要が高まるとともに、個々の職業に求められる能力についても高度化・専門化が進むことが見込まれ、このような人材養成の場としての大学院に大きな期待が寄せられている。今後、大学院においては、高度な専門的能力を有する職業人の積極的な養成に努めるとともに、社会人が、職業生活の途上で、知識のレベルアップを図ったり、新たな分野の知識を身に付けたりするための リフレッシュ教育 【用語解説】の機能の強化を図る必要がある。

1-2-10 大学院を置く大学(平成7年5月1日現在)

1-2-11 大学院在学者の状況(平成7年5月1日現在)

1-2-12 大学在学者の推移(各年5月1日現在)

1-2-13 学部学生に対する大学院学生の比率等(国際比較)


(2) 進む制度の弾力化

大学院制度の弾力化に関する主な内容は、

1) 博士課程の目的として、従来の大学等の研究者の養成だけでなく、社会の多様な方面で活躍し得る高度専門職業人の養成が付加されたこと、
2) 有職者等に配慮して専ら夜間において教育を行う夜間大学院の設置が可能となったこと、
3) 特に優れた業績を挙げた学生については修業年限の短縮が可能となったこと、
4) 修士課程において、教育研究上有益と認めるときは、1年に限り他の大学等において研究指導を受けることができるようになったこと、
5) 研究者として優れた資質を有する者には、早期から大学院教育を実施する道を開く趣旨で、大学3年次修了時点から修士課程へ進学することができるようになったこと、
6) 学部を卒業し、大学又は研究所等において2年以上研究に従事した者については、修士課程を修了していなくても博士後期課程への入学資格を認めることもできるようになったこと、
7) 高度専門職業人の養成を主目的とする修士課程における修士論文の取扱いについては、教育方法との関連を考慮しながら、大学院の判断で修士論文免除の特例をとることが可能となったこと、
8) 広く社会に人材を求めることにより、その優れた知識及び経験を大学院の教育研究に導入するため、専攻分野について特に優れた知識及び経験を有し、教育研究上の高度の能力があると認められる者にも大学院の教員資格が認められるようになったこと

などである。

このうち、入学資格や修業年限の弾力化についてその適用状況を見ると、大学院を修業年限(修士2年、博士5年)未満で修了した者は、平成4年度において博士91人、修士19人であり、学部3年次修了後大学院に進学した者は、6年度において161人である。また、学部卒業後、2年以上の研究歴によって修士課程を経ずに博士後期課程に入学した者は、6年度において174人となっている。

また、平成3年に、課程制大学院の趣旨を踏まえ、学位授与の円滑化を図るとともに学術研究の進展に適切に対応し得るよう、学位規則が改正された。これにより、従来、学位規則上、例えば「文学博士」「理学修士」のように専攻分野ごとに定められていた博士及び修士の種類が廃止され、すべて「博士」又は「修士」に統一され、各大学院の判断により適切な専攻分野を付記することとなった。4年度における学位授与数は、修士が約3万3千件、博士が約1万2千件となっている。


<リフレッシュ教育>

大学・大学院などの高等教育機関が職業人を対象として、職業上の知識・技術のリフレッシュや新たな修得のために行う教育。リフレッシュ教育は、リカレント教育に含まれるものであるが、

1) 主な対象として職業人を想定していること、
2) 内容も主に職業上の知識・技術を想定していること、
3) 実施機関が高等教育機関であること

など、ターゲットが絞られたものとなっている。


(3) 多様な形態の大学院

大学院の組織形態は、

1) 従来からの一般的な形態である学部の教育研究組織を母体とする一般研究科・専攻のほかに、
2) 学部横断的なあるいは学際的な教育研究を行う研究科(独立研究科・専攻)、
3) 学部を置かない大学院のみの大学(独立大学院)、
4) 複数の大学が連携して組織する研究科(連合大学院など)、
5) 学外の研究所等と連携する研究科(連携大学院)など

多様な形態がある(1-2-14 )。

独立研究科・専攻は、平成7年度現在、東北大学地球環境科学研究科、杏林大学国際協力研究科など65研究科218専攻となっている。7年度においては名古屋大学多元数理科学研究科、東京農工大学生物システム応用科学研究科、東北大学環境修復生物工学専攻(農学研究科)、広島大学教育文化専攻(国際協力研究科)、同志社大学総合政策科学研究科、静岡県立大学環境物質科学専攻(生活健康科学研究科)、東海大学医科学専攻(医学研究科)などが新設されている。

また、学術研究の動向等により適切に対応するため、高度で先端的、学際的分野を対象とした学部を置かない大学院のみの大学として、総合研究大学院大学、北陸先端科学技術大学院大学及び奈良先端科学技術大学院大学、国際大学が設置されている。

総合研究大学院大学は、高エネルギー物理学研究所や岡崎国立共同研究機構など11大学共同利用機関を基盤とした後期3年のみの博士課程で、学術研究の先導的分野に対応できる研究者等の養成を目的に昭和63年度に設置された。北陸先端科学技術大学院大学は、情報科学と材料科学の先端科学技術分野での研究者・技術者の養成を目的として平成2年度に設置され、先端的研究開発拠点を目指して整備が進む石川県の「いしかわサイエンスパーク」の中核を担っている。奈良先端科学技術大学院大学は、情報科学とバイオサイエンスの先端科学技術分野での研究者・技術者養成を目的として平成3年度に「関西文化学術研究都市」の中核として奈良県に設置された。

連合大学院は複数の大学が連携して教育研究を行うもので、現在、農学分野で6研究科、獣医学分野で2研究科が設置されている。

連携大学院は埼玉大学と理化学研究所、筑波大学と筑波地区の国立試験研究機関や民間研究所、電気通信大学とkdd研究所、東京大学と国立科学博物館、東京芸術大学と東京国立文化財研究所、大阪大学と蛋白工学研究所、佐賀大学と工業技術院などで実施されている。連携する大学や研究所は、学生に対する指導方法、研究員の派遣方法などの具体的な内容を定めた協定書等を相互に結んでいる。これにより、教育研究内容の広がりと深化や、研究者の交流の促進が図られ、新たな教育形態による社会に開かれた大学院として注目されている。

1-2-14 多様な形態の大学院

北陸先端科学技術大学院大学


(4) 大学院の充実及び学生に対する支援

大学院における教育研究の高度化を重点的に推進するため、国・公・私を通じて卓越した教育研究実績が期待される大学院や新しい試みに積極的に取り組んでいる大学院に対して次のような特別の予算措置が講じられている。

大学院を中心とする教育研究の高度化を重点的に推進することを目的に、共同研究、研究交流、ティーチング・アシスタント、国際交流など教育研究活動を支援するため、高度化推進特別経費が平成4年度から措置された。7年度においては99億8,100万円が措置されている。また、大学院における教育研究条件の飛躍的充実を図ることを目的に、優れた教育研究実績をあげている大学院研究科に対して、学問領域及び教育内容・方法の特性に応じ必要とされる高度の教育用設備の整備を図るため、大学院最先端設備費が昭和62年度から措置された。平成7年度においては63億4,300万円が措置されている。

学生に対する支援については、優れた大学院学生が安心して進学できる環境の整備のため、

1) 日本学術振興会特別研究員制度(独創的・先端的な学術研究の推進を担う優秀な若手研究者の養成・確保の観点から、研究奨励金として、博士課程修了者(PD)に28万2千円(月額)、博士課程在学者(DC)に19万5千円(月額)を支給するとともに、150万円以内の研究費を交付する)(1-2-151-2-16 )、
2) 日本育英会育英奨学事業(修士課程8万1千円(月額)、博士課程11万2千円(月額)を貸与する)(1-2-3 )、
3) ティーチング・アシスタント(TA)の制度が設けられている(金額はいずれも平成7年度の予算額)。

後述の調査結果でも、奨学金など経済的支援の充実を求める声が強いこと( P.59参照)を踏まえ、今後ともこれらの支援策を充実する必要がある。

ティーチング・アシスタントによる授業風景(東京大学)

1-2-15 日本学術振興会特別研究員の総採用者数の推移

1-2-16 日本学術振興会特別研究員制度の予算額推移

1-2-3 日本育英会育英奨学事業(大学院)


(5) 留学生の受入れ

21世紀初頭における10万人の留学生の受入れを目途に、現在、留学生受入れのための施策「留学生受入れ10万人計画」が推進されている。そこでは、大学院における留学生の受入れを3万人と想定しているが、平成6年5月現在、1万7,740人の留学生が大学院で学んでいる(1-2-17 )。大学院における留学生受入れ体制の整備は、我が国の国際的地位の向上に伴う国際社会への貢献として、教育の国際交流を一層促進するためにも、重要課題となっている。

留学生に対する教育・研究指導に当たっては、留学生の特性に配慮した指導が必要であり、大学によっては、日本語教育の充実、外国語による指導の導入、論文作成の使用言語の配慮など積極的に留学生を受け入れるための取組が行われている。また、留学生を多く受け入れている研究科に教員を措置するなど、留学生に対する教育・研究指導体制の充実が図られている。

1-2-17 大学院留学生数と学部留学生数の推移(各年度5月1日現在)


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