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1部   新しい大学像を求めて-進む高等教育の改革-
第2章   大学が変わり始めた
第1節   大学で何を学ぶか
3   大学入試の改善はどのように進められているか


大学入学者選抜については、学歴偏重、有名校偏重の社会的風潮や、高等教育の量的普及を背景に、高等学校以下の教育全体に大きな影響を及ぼしており、国民的な関心事となっている。

大学入学者選抜方法の改善については各大学の努力により、これまで様々な工夫・改善が積み重ねられてきている。


(1) 大学審議会報告と入試改善の取組

大学審議会においては、「大学入学者選抜の在り方は、高等教育のみならず、高等学校以下の教育全体にも大きな影響を及ぼすものであり、常に最善の方途を見出すべく、不断の努力を傾注すべき重要な課題である」との認識の下に、中長期的な観点から幅広い検討を行った。その結果に基づき、平成5年9月、「大学入試の改善に関する審議のまとめ」を文部大臣に報告した。この報告は、大学入試の具体的な改善方策として、「大学入試センター試験の利活用の促進」、「各大学における特色ある多様な入学者選抜の実現」、「推薦入学の改善」など多岐にわたる提言を行っている。

大学入学者の選抜は、大学教育を受けるにふさわしい能力・適性等を多面的に判定し、公正かつ妥当な方法で実施するとともに、入学者の選抜のために高等学校の教育を乱すことのないよう配慮する必要がある。

このような観点から、各大学の目的、特色や、専門分野等の特性に応じ、評価尺度を多元化・複数化し、受験生の能力・適性等を多面的に判定する方向で大学入試の改善が進められている。


(2) 大学入試センター試験の利活用の促進

大学入試センター試験の前身である共通第1次学力試験が昭和54年度に導入されるまでの入試では、ともすれば1回の学力検査に頼って合否を決定する傾向が見られた。また、各大学が独自に入試を行ってきたこともあって、高等学校教育の程度や範囲を超えた難問奇問の出題が少なくなかった。共通第1次学力試験については、難問奇問を排した良質な出題により、高等学校教育の基礎的な達成度を判定することが可能になったことなどについて評価された反面、一律に5教科利用を原則としたことなどにより、いわゆる大学の序列化等が顕在化したことなどの問題点も指摘された。

このような経緯や臨時教育審議会の答申を受けて、平成2年度入試から、共通第1次学力試験に代えて、大学入試センター試験が実施されている。

大学入試センター試験は、良質な試験問題を確保しつつ、共通第1次学力試験が全受験生に一律に5教科を課していたのと違って、1教科を課すこともできるなど、選抜に利用する教科・科目やその配点は、各大学が自由に定めることになっている(ア・ラ・カルト方式)。これは各大学が、それぞれの判断と創意工夫に基づき、多様な利活用をすることによって、画一的な入試ではなく、個性的で特色ある入試を実現するとともに、総得点による単純な比較を排して、大学の序列化やいわゆる輪切りを助長しないことをねらいとしたものである。

また、国公私立大学を通じた入試改善を進めていくため、大学入試センター試験は、国公立大学のみならず、私立大学も利用することができるようになっており、大学入試センター試験を利用する私立大学は、毎年着実に増加している(平成8年度入試では122の私立大学が利用する予定)(1-2-1 )。

1-2-1 大学入試センター試験利用大学・学部数の推移


(3) 各大学における特色ある多様な入学者選抜の実現

各大学の入学者選抜においては、それぞれの大学・学部の目的、特色や、専門分野等の特性に応じ、評価尺度を多元化・複数化し、受験生の能力・適性等を多面的に判定する方向で、工夫改善に努めることが重要である。このような観点から、近年、学力検査だけでなく、面接、小論文、実技検査等を実施する大学や、推薦入学、帰国子女・社会人等を対象とする特別選抜を導入する大学が多くなってきている。

また、専門高校の卒業生を対象とした特別な選抜方法が平成8年度入試から新設されることを受けて、各大学ではその導入に向けて検討が進められている。

さらに、大学入試センター試験のほかは学力検査を課さず、面接や小論文だけで選抜を行う大学が増えつつある。ある大学の医学部では、知力に偏重した入試ではなく、知・徳・体を身に付けた医師としての資質を持った学生の選抜を目的に、大学が独自に作成した調査書にボランティア活動やスポーツ活動等を記載させ、入学志願者の高校時代の学力以外の種々の活動を評価する選抜を実施している。

また、国公立大学の受験機会の複数化を図るため、昭和62年度入試から「連続方式」(個別の大学がa日程又はb日程のいずれかの日程により、試験を1回実施する方式)が導入された。平成元年度入試からは、この方式に加えて「分離・分割方式」(個別の大学が学部の定員を分割し、試験を2回実施する方式)も併用されている(1-2-2 )。受験生の選択の機会の拡大や多様な選抜方法の導入を促進する観点から、国立大学は平成9年度入試から、また、公立大学は平成11年度入試から、原則として「分離・分割方式」に統一することとしている。

1-2-2 国立大学の受験機会の複数化の方式(平成8年度の日程)

○ユニークな入学者選抜の例
○ユニークな入学者選抜の例

選抜方法→次の1)、2)で20名程度、3)、4)

1) 大学入試センター試験の数学、理科の高得点者
2) 大学入試センター試験の国語、社会、外国語の高得点者
3) 小論文の高得点者
4) 出身学校長から提出された調査書及び大学の指定調査書により評価し、その評点の高い者

大学の指定調査書の記載内容

(1) 教科外活動(学校内での活動→部活動等)
(2) 教科外活動(学外団体等での活動→ボランティア活動等)
(3) 大会・競技・展覧会での活動(文科系)
(4) 大会・競技・展覧会での活動(理科系)
(5) 生徒会での活動
(6) 資格・免許等(英語検定、将棋2段など)

(4) 推薦入学の改善

推薦入学は、大学入試の多様化を進める上でも有意義な制度である。しかしながら、近年、一部の大学においては、

1) 非常に早い時期に、
2) 一般選抜と同程度の学力検査を課し、
3) 入学定員の大半を推薦入学者で占める

など、推薦入学を、単により多くの学生を早期に確保する手段として利用する例が見られ、高等学校教育への悪影響が憂慮される状況にある。

大学審議会報告では、推薦入学の具体的な改善方策として、

1) 学力検査の免除を徹底し、
2) 受付開始時期を11月以降など一定の時期以降とし、
3) 入学定員に占める推薦入学者の割合は大学については3割、短期大学については5割を超えないことを目安にする

との提言がなされた。

各大学では、本報告の趣旨を尊重し、推薦入学について、提言に沿った改善が行われるよう期待したい。


(5) 進路情報の提供

受験生の進路選択がややもすると偏差値偏重に陥り、不本意入学や大学の序列化の問題が指摘される中で、個々の大学の教育・研究内容等に関する情報や入試に関する情報等、受験生の進路選択に役立つための大学に関する適切な情報が十分提供されることが求められている。

大学入試センターにおいては、nttのキャプテン通信網を通じて、大学・学部の教育研究等の情報を高等学校等に提供する事業( ハートシステム 【用語解説】)等を昭和63年度から開始し、平成4年度からは編入学情報を、5年度からは大学改革に関する情報を新たに提供している。

一方、各大学においても、大学説明会の実施、学部紹介用のビデオやパンフレットの作成、テレホンサービスの実施など、情報提供の推進を積極的に行っている。


<ハートシステム>

大学入試センターが、全国の大学の教育研究等の情報を収集・データベース化し、NTTのキャプテン通信網を通じて、高等学校等に提供する事業。個々の大学の情報の入手はもとより、大学間を横断的に検索し、受験生の志望する学部・学科等が全国のどの大学に設置されているかなどの情報も即時に知ることができるシステム(Higher Education ARTiculation support system)。情報提供の内容は、

1) 志望大学の選択、
2) 大学案内、
3) heart速報、
4) 入試案内、
5) 編入学情報
の五つのメニューで構成。

(6) 新教育課程への対応

平成6年4月から新しい高等学校学習指導要領が実施されていることに伴い、9年度の大学入学者選抜から新学習指導要領に即した学力検査を実施する必要がある。高等学校の履修教科・科目の多様化に対応するため、大学入試センター試験の出題教科・科目については、現行の5教科18科目から6教科34科目に増やすこととしている。

平成9年度からの各大学の学力検査等においては、新学習指導要領が重視する自ら学ぶ意欲や思考力、判断力、表現力等の適切な評価が求められている。

学生は大学をどう見ているか

文部省は平成7年に民間の調査機関に委託して、「大学改革の今後の課題についての調査研究」を実施した。この結果から、学部学生の大学に対する要望、授業への出席時間などについて紹介する。

1 大学を選んだ観点:専攻したい学問の教育・研究の水準、が上位に(1-2-3 )

どのような観点から今の大学を選んだか、最も重視したものから3番目に重視したものまでの回答を求めたところ、最も重視したものとして「入試の難易度が自分にふさわしい」(21.8%)と並び「専攻したい学問の教育・研究の水準」(19.3%)が上位に挙がっている。2番目、3番目に重視したものとして、「入試の難易度が自分にふさわしい」(2番目に重視17.4%、3番目に重視11.9%)のほか、「大学の所在地」、(2番目に重視17.4%、3番目に重視16.5%)が高くなっている。

1-2-3 大学を選んだ観点

2 授業への出席時間は平均19.3時間(1-2-2 )

1週間の授業への出席や実験・実習などの時間について見ると、平均して19.3時間である。分野別の平均時間を見ると、自然科学系22.3時間、人文科学系19.9時間、社会科学系15.8時間、になっている。

1-2-2 大学生の授業への出席時間

3 大学以外での学習状況:意欲的な大学生(1-2-4 )

大学の学習以外で専修学校・各種学校や通信教育などにおいて何か取り組んでいるもの、いわゆるダブルスクールの状況の有無について尋ねたところ、「やっていない」(58.5%)が過半数を占めるが、「現在、学習しているものがある」(13.1%)、「検討中」(19.2%)、「過去に学習したことがある」(8.6%)と続く。また、「現在、学習しているものがある」、「過去に学習したことがある」を合計すると、3年生では29.1%に達している。

1-2-4 大学以外での学習状況

4 授業・カリキュラムについての要望

大学の授業、カリキュラムに関し要望する事項についてそれぞれ三つまでの複数回答を求めた。

(1) 「役に立つ内容」を「わかりやすく」(1-2-5 )

大学の授業に望むこととしては、半数を超える学生が、「わかりやすく教えてほしい」(56.3%)や「役に立つような内容の授業にしてほしい」(53.1%)を挙げている。

分野別に見ると、「わかりやすく教えてほしい」は、自然科学系で最も高い(65.7%)。また、自然科学系では「高校で修学できなかった科目、理解できなかった科目を補うような授業をしてほしい」を挙げる割合が、他分野と比べ高い(17.0%)。

1-2-5 大学の授業に望むこと

(2) 依然強い専門教育・就職準備指向(1-2-6 )

カリキュラムについての要望は、回答の多いものから、「専門教育を充実してほしい」(36.3%)、「資格取得や職業に役立つカリキュラムにしてほしい」(35.3%)、「1、2年生からもっと専門教育を受講できる」(26.6%)、「卒業に必要な単位数を減らしてほしい」(25.6%)となった。「高校で学習が十分でなかった科目について補習授業をしてほしい」は自然科学系で高い(11.6%)。また、「資格取得や職業に役立つカリキュラムにしてほしい」は社会科学系で高い(41.2%)。

1-2-6 カリキュラムについての要望

5 学生は改革を求めている(1-2-7 )

現在通学する大学に対する満足度を20項目にわたって回答を求めた。

全体的な傾向としては、「どちらとも言えない」との回答が多いが、「非常に満足」と「やや満足」を満足とみなし、「やや不満」と「非常に不満」を不満とみなし、その評価の差で判断してみると、満足のポイントが高い項目として、「専門科目」(47.7%)、「保健体育科目」(46.0%)、「外国語科目」(36.0%)、「新学期にあるカリキュラムガイダンス(質と量)」(32.6%)、「ゼミ(演習)」(32.0%)、「一般教養科目」(31.7%)、などである。

不満のポイントが高いのは、「教員の授業方法(話し方、板書を含む)」(42.4%)、「就職向けや資格取得のための講座の開設」(39.3%)、「情報処理科目」(37.8%)、「教員の授業内容」(35.1%)、「教員との触れ合い」(34.7%)、「授業で使用する教科書・テキスト」(32.5%)、「他の学部や大学の科目の聴講・単位認定」(27.8%)、などとなっている。

1-2-7 大学に対する満足度

6 高校教育からの接続も課題(1-2-8 )

「高校で履修しない科目があり大学での授業についていくのに苦労するか」との問いに対し、「そう思う」との回答を見ると、自然科学系が39.8%と最も高く、次いで、社会科学系(31.0%)人文科学系(23.0%)、の順になっている。

1-2-8 高校教育からの接続

7 社会人学生:入学機会はあっても仕事との両立に課題(1-2-9 )

大学教育について社会人学生がどのように感じているか、複数回答を求めたところ、「社会人にも入学の機会は十分与えられている」(53.8%)との回答が多く、逆に、「仕事に支障なく授業・研究活動が行える」(7.8%)と答えた者は少ない。これは、既に大学に入学している社会人を対象に聞いた結果であることを考慮する必要があると考えられるが、開かれた大学づくりのためには、大学側の努力とともに、社会の側の理解も必要であることがうかがわれる。

1-2-9 社会人学生は大学をどう見ているか

以上のような調査結果から、大衆化したと言われる大学生も、勉学への意欲は強く、教育内容や方法について工夫がなされている面では、これらを正当に評価していることがうかがわれる。同時に、多くの学生は、大学教育の現状に決して満足していない。各大学における教育改革への今後の取組が期待される。

(注)この調査において用いられている「社会人学生」とは、社会人特別選抜(入試で大学が別途設置する社会人枠による選抜)により入学する学生、一般入試から入学する会社勤務(家事従事者を含む。)などの社会人経験を経た学生又は現在勤務中の学生、夜間学部の有職者学生(アルバイトは除く。)のことを指す。


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