ここからサイトの主なメニューです
前(節)へ  次(節)へ
1部   新しい大学像を求めて-進む高等教育の改革-
第2章   大学が変わり始めた
第1節   大学で何を学ぶか
2   授業の質を高めるための様々な工夫


大学教育の質の向上のためには、先に述べたようなカリキュラム編成の改善や多様な授業科目の設定等教育内容の充実と並んで、教員の教授方法の改善等授業の質を高めるための工夫が必要である。各大学では、現在、授業の質の向上に向けて、次のような様々な工夫が行われている。


(1) 授業計画(シラバス)の作成・公表

シラバスとは一般に授業計画を指す。従来、我が国の大学では、学生の授業科目選択に際しての「履修要項」等により授業科目の概要の紹介がなされることはあった。しかし、各授業科目のねらい、授業の概要、1回ごとの授業内容、教科書・参考書、成績評価の方法・基準等について具体的な記載がなされているような詳細な授業計画(シラバス)をあらかじめ作成し、公表する試みは一般に行われてこなかった。

近年の各大学における改革の進展の中で、授業の質を高めるための方策の一つとして、教員にシラバスの作成を求め、また、それらを取りまとめ、冊子とする大学が増えてきている。シラバス集を作成し、公表している大学は平成6年度現在176大学であり、4年度の80大学から大きく増加している。さらに、学生が必要な情報を速やかに受け取ることができるよう、シラバスをデータベース化し、図書館等に設置した端末機を通じて利用に供する試みも見られる。

シラバスを作成・公表することの効果として、まず、学生に授業の内容について事前によりよく認識させ、計画的・体系的な授業科目の選択、積極的な授業参加を促すことが期待される。また、教員に対しては、言わば授業の設計図であるシラバスを公にすることを通じ、自己の授業内容の一層の向上に向けての努力や体系的な教育指導の充実に向けての教員相互の連携・協力を促進することが期待される。

このように、シラバスの作成・公表は、授業の質の向上に向けて、学生・教員双方の取組を促す上で大きな役割を果たすことが期待されるものである。それが単なる資料の作成・公表にとどまることのないよう、今後、シラバスの内容の充実はもちろん、シラバスで指定された参考文献などの大学図書館における配備や、科目選択に当たっての十分なカリキュラム・ガイダンスの実施、さらには オフィス・アワー 【用語解説】の設定など、シラバスの有効活用に向けて各大学の一層積極的な取組が期待される。特にカリキュラム・ガイダンスについては、前述の調査によれば学部学生の25.8%が不満を感じており、その一層の充実が望まれる。

データベース化されたシラバスを検索する学生(群馬大学)


(2) 少人数教育の拡充

教員との質疑応答や、学生間の活発なディスカッションを通じ、学生の主体的な授業参加を促進し、教育効果を高めるため、少人数のクラス編成による教育を充実する大学が増加している。

学生の側からも少人数教育に対するニーズは高く、前述の調査結果においても、学部学生が大学の授業に望むこととして「少人数で学生個々に目の届くような指導をしてほしい」という項目に挙げている者が多い。

特に少人数教育の導入が進んでいるのは外国語教育であり、平成6年度現在、全体の約3割に当たる177大学において1クラス20人以下の編制での授業が実施されている。これは、平成4年度の実績の約2倍、昭和63年度の実績の約3倍の数である。

また、少人数クラスでの実験実習、ゼミ、卒論指導を実施する大学も着実に増加している。近年、学生が主体的に学び、課題を解決していく能力の養成を図るため、「基礎セミナー」等の名称により、少人数の学生が担当教員を囲み、特定のテーマについて質疑・応答・討論する対話形式の授業科目を開設する大学が増加している。


<オフィス・アワー>

授業内容等に関する学生の質問等に応じるための時間として、教員があらかじめ示す特定の時間帯(何曜日の何時から何時までなど)のこと。その時間帯であれば、学生は基本的に予約なしで研究室を訪問することができる。米国の大学において普及している制度であるが、近年、我が国においてもオフィス・アワーを設定し、シラバス等に明記する例が見られるようになっている。


(3) ファカルティ・ディベロップメントの実施

現在、大学進学率の高まりに伴い、大学に入学してくる学生の多様化が進むとともに、生涯学習機関としての大学に対する期待がこれまでになく高まっている。大学がこれらの多様なニーズにこたえ、より質の高い教育を提供していくためには、教員自身が教育者としての責任を自覚し、自己の教授能力の向上のための不断の努力を重ねていくことが必要である。現在のところ、教員の授業方法に対する学生の評価は必ずしも高くなく、前述の調査によれば、学部学生の42.4%が、話し方、板書を含む教員の授業方法に不満を感じている。

ファカルティ・ディベロップメントは、大学の教育機能の充実に向けた各種の活動において極めて重要な位置を占めるものである。しかし、現在のところ、我が国においては、このような教員団の組織的な授業内容・方法の改善のための取組はまだ緒に就いたばかりであり、先に述べたようなカリキュラムの再編、シラバスの作成等に比べ一般的なものとはなっていない。平成5年度現在、教員の研究会が開催されている大学は全体の約1割強に過ぎない。

しかし、大学によっては、教員がファカルティ・ディベロップメントのための自主的な研究会を開催し、その結果を冊子として公表しているほか、教員による相互の授業参観を実施し、当該授業における教員の態度や教材の提示方法等について教員間で検討を行うなどの例が見られる。さらに、「大学教育研究センター」等の組織を創設し、教育スタッフとしての力量を向上させるための手段・方法の研究開発、教員を対象とした研修、教授方法に係る個別相談などファカルティ・ディベロップメントを推進する大学も見られるようになっている。


(4) 多様なメディアの活用

近年の情報通信技術の急速な発展に伴い、大学の授業においても、各種の新しいメディア機器を利用する例が増えてきている。

平成6年度において、各大学の開講している授業科目のうち、コンピュータ、CD・LDプレーヤー、ビデオプロジェクター等の教育メディアを利用しているものの割合は、20%以下の大学、21〜50%の大学がともに約4割、51%以上の大学が約2割となっている。

今後、通信衛星を利用した遠隔授業の実施など、マルチメディア時代に対応した多様なメディアを活用した取組が各大学において一層進むことが予想される。


(5) 高等学校での学習内容に配慮した授業の実施

高等学校教育の改革が進む中で、教育課程の弾力化、選択科目の増加などにより、大学入学者の高等学校での科目の履修状況が多様化している。学生によっては、大学での専攻分野の基礎となる教科科目について、高等学校で履修していない場合もある。前述の調査では、学部学生の32.4%が高等学校で履修していない科目があり、大学の授業についていくのに苦労すると回答するなど、その後の大学教育が円滑に実施できないケースも生じている。

このため、学生が各自の専攻分野の教育を受けるのに必要かつ十分な基礎学力を修得することができるよう、学生の高等学校での履修状況等を踏まえた様々な配慮を行う大学が増加している。学生を高等学校での既修組と未修組とに分けた授業や学力に応じた補習授業、学力別クラス編制などが実施されている。平成6年度現在、全体の約4割に当たる240の大学において、高等学校での科目の履修状況への配慮が行われている。

今後、高等学校教育におけるカリキュラムの内容は一層多様化が進み、同時に大学に入学する学生も更に多様化することが予想される。このため、学生の教育に対しこのようなきめ細かい配慮を行い、大学教育の効果を高めていくことが更に重要になっていくものと考えられる。


(6) 外国語による授業の実施

国際化の進展の中で、大学等の我が国の高等教育機関で学ぶ外国人留学生が増加してきている。外国人留学生の積極的な受入れは、人材養成を通じた国際貢献のみならず、我が国と諸外国の大学間の協力、提携の一層の強化を通じて、大学の教育研究活動の活性化や国際化の推進にも役立つことが期待される。

文化的な多様性に富む留学生を数多く受け入れていくために、留学生向けの特別プログラムを開設して外国語による授業を実施するとともに、このようなプログラムへの日本人学生の参加を認める大学も見られるようになっている。また、一部の大学においては、通常の授業を、英語で、または英語と日本語の併用により実施する試みもなされている。外国語による授業の実施は、外国人留学生の学習をより容易にするだけでなく、日本人学生と外国人留学生の相互啓発、さらには、日本人学生が異文化を理解し、豊かな国際感覚を身に付けていく上でも有益なものと考えられる。このため、今後、各大学において一層の創意工夫が図られることが期待される。


(7) 学生による授業の評価

授業の内容・方法を不断に見直し、改善していくためには、教員自身による現状についての自己点検・評価とその結果のフィードバックは欠くことのできないものであるが、さらに、学生による授業の評価を実施し、その結果を授業に生かしていくことも重要である。

平成6年度現在、全体の約2割に当たる138大学において、学生による授業評価が取り入れられている。平成4年度には38大学に過ぎなかったことを考えると、急速な拡大ぶりがうかがえる。

学生による授業評価の具体的な評価項目は、大学によって異なるが、多くの大学では授業に対する期待の充足度、授業の内容の体系性や分かりやすくするための工夫、教材の使い方、教員の熱意、話し方などについて学生に評価を求めている。


前(節)へ  次(節)へ

ページの先頭へ   文部科学省ホームページのトップへ