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1部   新しい大学像を求めて-進む高等教育の改革-
第2章   大学が変わり始めた
第1節   大学で何を学ぶか
1   大学の授業がどう変わったか


学術研究や技術革新の進展、国際化・情報化の進展等社会の急速な変化の中で、大学教育には、これら社会の急速な変化に対応し、各方面で活躍し得る人材の養成、時代の変化や学術の新たな展開に対応し得る能力の育成が求められている。さらに、近年の大学進学率の上昇等に伴う学生の多様化や、生涯学習に対するニーズの高まりとあいまって、各大学の教育機能の強化に向けた教育内容、教育方法等の改革を積極的に進めることが大きな課題となっている。

文部省が平成7年に民間の調査機関に委託して実施した調査( P.31参照)においては、大学教育全般に対する学部学生の要望事項として、「カリキュラムの改善・充実」が最も多く挙げられるなど、学生の側からも大学における授業の改善に対する要望が強い。現在、各大学においては、第1章に述べた制度改正等を受けて、それぞれの大学の教育理念に基づき、以下のような改革が進められている。


(1) 4年一貫したカリキュラム編成への取組

大学のカリキュラムは、4年間(又は6年間)にわたる各授業科目が、体系的かつ有機的に結び付き、全体として一層効果を高め合うような形で編成されることが望ましい。しかしながら、これまで、大学設置基準において一般教育科目、専門教育科目等の科目区分が設けられ、それぞれ取得すべき単位数も詳細に規定されていたこともあり、各大学では、各授業科目を科目区分ごとに明確に切り離し、担当教員も含めて互いに独立した形で編成・実施することが多かった。このため、大学教育が前半の一般教育課程と後半の専門教育課程とに分断され、両者の間に必ずしも十分な連携が確保されない状況も生じていた。これに対して、「学問を通じ、学生に広い知識を身に付けさせるとともに、ものを見る目や自主的・総合的に考える力を養う」という教養教育の理念・目標が生かされないばかりか、一般教育科目の内容が高等学校の授業の繰り返しになっており、大学入学直後の学生の学習意欲を減退させることにもつながっているなどの指摘もなされてきた。

このような状況を改善するため、大学審議会の答申に基づき、平成3年に大学設置基準が改正され、一般教育、専門教育等の授業科目区分が廃止されるとともに、「教育課程の編成に当たっては、大学は、学部等の専攻に係る専門の学芸を教授するとともに、幅広く深い教養及び総合的な判断力を培い、豊かな人間性を涵養するよう適切に配慮しなければならない。」との規定が付け加えられた。この後、各大学のカリキュラム改革が急速に進んでおり、とりわけ、教養教育と専門教育の内容の有機的な連携を通じて、高い知性と総合的な判断力、豊かな人間性を合わせ持った人材を養成することを目指した、4年(6年)一貫したカリキュラムを編成する大学が増加してきている。

平成3年の大学設置基準改正後、既にカリキュラム改革を実施した大学は、平成6年度現在375大学であり、実施予定の大学を含めると、458大学(全体の約83%)となっている(図1-2-1)。

4年(6年)一貫した体系的なカリキュラムを実施するための具体的な取組は各大学様々であるが、一般的なものとしては、1,2年生時から積極的に専攻分野に係る授業科目に触れさせ、学生の知的好奇心にこたえようとするものや、専攻分野に係る一定の基礎的教育を終えた上で、専攻分野の学問の成果と人間や社会とのかかわりについて多様な視点から理解させることを目的とした授業科目を開設し、教養教育の内容を専門教育との有機的な関連を配慮したものとする例などが挙げられる。

1-2-1 各大学におけるカリキュラム改革の実施状況


(2) 新しい授業科目の開設

カリキュラム改革の動きは、授業科目の内容にも及んでいる。大きな特色としては、まず、従来の学問領域にとらわれない総合的な内容を持つ科目の増加が挙げられる。平成6年度現在、260大学において総合的な科目が設定されているが、これは平成4年度の約2.5倍に当たる。具体的な授業科目としては、「文化と交流」「環境と人間」「自然の認識」など現代的な多様なテーマに対応した科目や、「人間教育科目」等の科目区分により、バランスのとれた知性と人間性を養成することを目的とした科目を設置する例が挙げられる。

これらは学術研究の進展に伴い、学際的な研究を要する分野が拡大するとともに、複雑化する現代社会の諸問題に適切に対応していくためには、従来の学問領域にとらわれない幅広い知識を身に付ける必要が生じていること等に対応するものとして注目される。

また、特定のテーマについて少人数で質疑・応答・討論などを行うセミナー形式の授業や、学外の専門家も活用して最先端の研究成果を専門外の学生にも分かりやすく解説することを目的とした授業、専門教育の導入に当たり専攻分野の全体像を大づかみに把握させたり、当該分野における今日的課題を認識させるための科目など特色ある多様な科目が開設される例が増加している。

さらに、ボランティア活動を取り入れた授業科目も増加してきている。平成5年度においては、63大学がボランティア活動を取り入れた授業科目を開設しているが、その内容は、ボランティア活動そのものを授業として位置付けるものから、授業の中に福祉実習や介護実習として取り入れているものまで多様である。


(3) 外国語教育の充実

社会のあらゆるレベルでグローバル化が進む中にあって、今後、個々人のレベルで、異文化を理解し、相互に尊重し合うことのできる関係を構築していくことが重要であり、その土台となる外国語教育の充実が求められている。

大学においては、外国語教育に力を入れる例が増加しており、平成6年度までに、全大学の過半数に当たる305大学において外国語教育に係る改革が行われている。その具体的な内容としては、llやビデオの利用が最も多く69.2%、次いで「会話」「作文」「速読」など目的に応じたクラス分けを実施しているものが61.6%、1クラス20人以下の少人数クラス制を導入しているものが54.1%、能力別クラスを導入しているものが35.4%となっている。中には、目的別・能力別・少人数クラス制を実施し、かつ、llやビデオを利用する例や、通常よりも外国語授業時間数を増加したコースの設定、近隣のアジア諸国の言語をはじめ外国語に関する多様な授業科目の開設などの意欲的な試みも見られる。

少人数クラスによる外国語の授業(東京外国語大学)


(4) 情報処理教育の推進

マルチメディアの普及などを通じ、今後社会の一層の高度情報化が進んでいく中で、大学教育においても情報処理・活用能力の育成が必要不可欠なものとなりつつある。

情報処理に関する教育を強化する大学は急激に増加しており、平成6年度においては、全体の約4割に当たる218大学が情報処理教育を全学生に対して必修化している。情報処理教育専用の教室を設けている大学は440大学で、全体の約8割に上っている。

また、大学や学部によっては、学生一人当たり一台のコンピュータを整備し、学生が24時間を通じていつでも利用できるよう開放しているところもある。そのような大学では、学生に、必要な文献等の検索をコンピュータを通じて行わせたり、学内の情報ネットワークを開放してレポートの提出や事務連絡を電子メールにより行わせたりするなど、実践的な情報処理能力の育成に努める試みも見られる。


(5) 多様な履修機会の提供

学生に幅広く多様な授業科目を履修する機会を提供する試みとして、他大学と協定を締結して、大学間で単位の互換等が行われるようになってきた。平成5年度において、単位互換のための協定を結んでいる大学は全体の約半数の253大学に上っており、昭和63年度からほぼ倍増している。また、放送大学や外国の大学との間でも単位互換が活発に行われており、放送大学では、平成5年度において他の大学から約5,200名の学生を受け入れている。

地域的に大規模に実施している事例としては、平成6年度からスタートした「京都・大学センター」の単位互換制度が挙げられる。これは、京都にある31の大学及び短期大学が協定を結び、主として参加大学の学生に広く授業を開放し、単位を認定するもので、科目開設大学の特色を生かした授業や、複数大学に所属する教員によるリレー講義を行うなど様々な工夫がなされている。

さらに、平成3年の大学設置基準の改正により、大学以外の教育施設等における一定の学修を当該大学における授業科目の履修とみなして単位を与えることができるようになった。これを受けて、学生が専修学校の専門課程で学習したり、実用英語検定などの文部大臣認定技能審査に合格した場合に単位を認定する試みも見られるようになっている。


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