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2編 文教施策の動向と展開
第8章 文化の振興
第5節 国語施策,著作権施策及び宗務行政の推進
2 著作権制度の整備



(1) 著作権思想の普及

著作権制度は,小説,絵画,音楽などの創作者や,実演家,レコード製作者,放送事業者等を保護するための権利(著作権,著作隣接権)を定め,我が国の文化の―層の創造と発展に寄与することを目的としている。

著作権制度についての国民の理解は,着実に社会の各方面に定着しつつあると考えられるが,著作権制度は文化創造の基盤としても重要なものであり,より―層の理解を求めていく必要がある。このため,文化庁では,各種の講習会を開催しているほか,@)著作権情報センター(著作権思想の普及活動,著作権制度に関する調査研究を目的とする公益法人)とも協力しつつ,著作権に関する資料(著作権法の解説ビデオやパンフレット等)の作成,頒布を行うなど,各種の啓発活動による著作権思想の普及に努めている。


(2) 今後の課題

現行著作権法は,昭和46年1月に施行され,既に20年余を経過しているが,この間,著作物の新しい利用手段や伝達手段等の開発,普及が急速に進んでいる。これらに伴って生起した新たな課題や,国際的な課題となっている事柄に対応するため,順次,著作権審議会の審議を経て,逐次法改正を行い,著作権制度の整備改善に努めてきているが,今後とも,次のような問題に対して的確に対応する必要がある。


1) 私的録音,録画問題

個人的に又は家庭内で使用することを目的とする著作物の録音,録画については,私的使用のための複製として,著作権者等の許諾を得る必要はないとされている(著作権法第30条)。しかし,録音,録画機器の著しい発達,普及に伴い,私的録音,録画が容易にかつ頻繁に行われ,高品質な複製物が多量に作成されることにより,著作権者等の経済的利益が脅かされているのではないかとの指摘がなされているところである。

著作権審議会は,この問題について昭和62年8月から検討を行ってきたが,平成3年12月にその検討結果をまとめ,公表した。

同報告書では,著作権者等の経済的利益を保護するため,著作権者等に―種の補償措置(いわゆる「報酬請求権制度」)を講ずることが適切であり,補償金額等については関係者間の協議で解決されることが望ましい旨の提言がなされている。

文化庁としては,この制度について速やかに立法措置を講ずる予定である。


2) 映画の二次的利用に係る実演家,監督等の権利の問題

ビデオや衛星放送の発達に伴って,劇場用映画等の二次的な利用の機会が増加しているが,映画監督等の著作者及び実演家は,著作権法上権利が制限されており,契約等に別段の定めがない限り,映画の二次的利用に際しては追加報酬等は受けられないこととなっている。

著作権審議会は,平成4年3月,この問題について,映画の著作権の帰属問題等,権利関係の見直しは,社会的に広範な影響を及ぼすおそれがあり,また,諸外国の制度との調和にも留意する必要があること等から,当面は契約等による解決を図っていくことが適切との考え方を示した。これを受けて,文化庁としては,同年5月,学識経験者,映画製作者,実演家及び映画監督等から構成される協議の場を設置した。


3) マルチメディアに関する著作権問題

近年,情報のデジタル処理技術の発達に伴い,「電子出版」と呼ばれるCD-ROM等の記録媒体による各種の情報の伝達や,マルチメディアと呼ばれる映像,言語,音響,プログラム等の多様な情報を複合した伝達媒体あるいはその利用手段等が目覚ましい発展を遂げつつある。このようなメディアの発達によって,今後,著作物等の多様な利用方法が開発,推進されることにかんがみ,著作者等の権利を保護しつつ,―方では著作物等の円滑な利用に配慮する観点から,多様な側面からの検討が必要であると考えられる。

このような事情を踏まえて,著作権審議会においては,平成4年6月,新たにマルチメディア小委員会を設置した。


4) 写真の著作物の保護期間の問題

写真の著作物の保護期間は,現行法上公表後50年(未公表のままであれば,創作後50年)と定められており,文芸,美術等の著作物とは取扱いが異なっているが,先進国では死後50年以上とするのが大勢となっている。著作権審議会は,平成4年3月,このような国際的動向を踏まえ,将来的には,写真の著作物の保護期間についても,文芸,美術等の著作物と同様の取扱いとするのが適当であるとしつつ,写真の著作物に関しては,著作者名の表示方法の整備等が従来からの課題であり,関係団体においてこの点についてのルールづくりの努力が必要であるとともに,映画の著作物の保護期間との均衡等についても配慮することが必要であるとの考え方を示した。

同審議会では,今後,写真の著作物の保護期間の延長を図る方向で条件整備等を進めながら,その進捗状況に応じ,具体的な立法措置について判断を行うのが適当であると提言している。


5) 録音物の再生演奏に係る著作権問題

著作権法附則第14条は,経過措置として,当分の間,市販のCD等適法に録音された音楽の著作物の再生演奏については,―定の条件の下,著作権者の許諾を得なくても自由に行いうるという,旧著作権法の取扱いを存続することとしている。これは,旧法の制度を現行法において―挙に廃止することの社会的影響を考慮したものである。

著作権審議会は,平成4年3月,附則第14条は,経過的措置であって将来廃止されるべきことが予定されていたものであり,また,著作権関係条約上の観点からも,廃止されることが適当であること,さらに,有線音楽放送の発達,普及に伴って,附則第14条の廃止による社会的影響は軽減してきていることを指摘した。

しかし,附則第14条の廃止による社会的影響は,なお,広範囲にわたることも予想されるところであるので,同審議会では,関係者による環境整備が行われることを条件に,将来,法律改正を行うことを適当としつつも,具体的な法改正の時期等については,同審議会において判断を行うのが適当であると提言している。


6) 文献複写に係る集中的権利処理機構の問題

文献複写機器の発達,普及に伴い,著作物の複写,複製が頻繁に行われている。複写を行うときは著作権法上認められている場合(著作権法第30条等)を除き,著作権者の許諾が必要であるが,個々の著作権者ごとに許諾を得ることは煩瑣であり,実際は無許諾で複写が行われ,その結果,著作権者の利益に影響を与えている。

著作権審議会は,昭和51年9月,この問題を解決するためには,複写に関する集中的権利処理機構の存在が必要とする報告書を取りまとめており,関係者により検討が進められていたが,平成3年9月「日本複写権センター」が設立され,現在,企業との複写利用契約を進めている。

同センターは今後,順次,企業以外にも契約の対象を広げていく予定である。


7) 出版者の保護に関する問題

文献複写機器の発達,普及に伴う複写,複製は,出版者の利益にも影響を与えているが,出版物の複写利用に関し,現行著作権法上,出版者は独自の権利を認められていない。このため,著作権審議会は,出版者の法的保護の問題について,平成2年6月,出版物の複写利用者に対しーC報酬を請求することができる権利を出版者に認めることが適当であるとする報告書を取りまとめた。

出版者に新たな権利を付与することに対しては利用者側から異論もあり,この問題については,なお,各方面の―層の理解を得ることが必要とされている。


8) コンピュータ創作物に係る著作権問題

近年におけるコンピュータのハードウェア,ソフトウェアの両面にわたる開発,普及は目覚ましく,著作物等の作成過程において,コンピュータが利用されることも多くなってきている。このため,コンピュータを用いて作成される「コンピュータ創作物」に関する著作権問題について,著作権審議会は,目下検討を行っている。

検討内容は,コンピュータ創作物(コンピュータ,グラフィックス,機械翻訳,自動作曲等)の現状及び今後の発展動向のほが,コンピュータ創作物の著作物性,著作者の同定,著作権の帰属の問題等である。


9) コンピュータ,プログラムに係る著作権問題

コンピュータ,プログラムが著作物として保護されることについては,昭和60年の著作権法改正において明確化されたところであるが,プログラム関連の産業は近年急速に発展したものであり,プログラムに係る著作権法の解釈,運用については様々な問題が予想される。このため,文化庁においては,昭和62年8月に,「コンピュータ,プログラムに係る著作権問題に関する調査研究協力者会議」(座長,北川善太郎京都大学教授)を発足させ,保護されるプログラムの範囲,プログラムの著作者の確定,プログラムの委託開発等における法律問題に関して調査研究を行っている。

平成4年3月には,「コンピュータ,ソフトウェアと法人著作について」(報告書)を公表し,法人著作の成立の要件の解釈や著作権の帰属等について取扱いの指針を示している。


10) 著作権制度の国際的調和に関する問題

昭和61年9月から開始されたガット,ウルグアイ,ラウンドでは,知的所有権の保護の欠如や不備に起因して生ずる貿易上の問題を解決するため,新たに「知的所有権の貿易的側面」(TRIP)を交渉分野のーっとして加え,レコード,レンタルやコンピュータ,プログラム等に関する著作権を含む知的所有権の保護について,既存の関係条約を補強,補完する目的で新しいルールづくりが検討されている。平成3年12月には,ガットのドンケル事務局長により,TRIPを含む全交渉分野にわたる包括合意案が公表されたが,未だ合意には至っていない。

また,世界知的所有権機関(WIPO)においても,時代の変化に即した著作権保護の内容の見直しのため,ベルヌ条約の議定書制定に向けての検討を行う会合が平成3年11月から開催されている。

このような国際的な動きに対して,我が国としても世界的に適切な著作権保護が図られるよう積極的に対応していく必要がある。


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