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2編 文教施策の動向と展開
第3章 初等中等教育の改善・充実
第5節 高等学校教育の改革
2 高等学校入学者選抜方法等の改善



(1) 高等学校入学者選抜の改善

 高等学校の入学者選抜をめぐっては,いわゆる偏差値問題や過度の受験競争による人間形成のひずみなどの問題が指摘されるとともに,高等学校の多様化に対応して,選抜方法の多様化・選抜尺度の多元化などが課題となっている。

 文部省では,昭和59年に検討会議を発足させて入学者選抜の在り方について検討を行い,同年,関係省令を改正して,公立高等学校の学力検査は,同一時期に同一問題により実施するとしていたそれまでの取扱いを改め,必ずしもその必要はないこととする等の改訂を行った。また,それと同時に,各都道府県に対し,公立高等学校の入学者選抜について通知を発し,公立高等学校における受験機会の複数化,学力検査の実施方法及びその結果の利用方法,調査書の各教科の学習成績以外の記録の利用,推薦入学・面接の活用などについて選抜方法の多様化,選抜尺度の多元化などの観点から具体的な改善方策を示した。

 これらを受け,各都道府県や高等学校においては,地域や生徒の実態などに応じて次第に改善が図られてきているが,改革の影響の大きさなどから,必ずしも十分に改善が進んでいない面があり,また,都道府県により改善状況に差異も見られる。今回の中央教育審議会答申においては,高等学校教育の改革を推進するためには,受験競争を緩和することが不可欠との視点に立ち,改めて選抜方法の多様化や選抜尺度の多元化を推進する観点から,受験機会の複数化,学校,学科間の特色に応じた教科配分の工夫,課外活動の評価などの改善方策が提言されている。そのほか,入学者選抜の在り方に関する国公私立を通じた関係者の協議の場の設定,国私立中学校の入学試験の改善,入学者選抜における合否判定の基準等の明確化,進路指導の一層の改善・充実等についても提言されている。

 各都道府県においては,答申の趣旨を踏まえ,引き続き各学校・学科の特色に応じて選抜方法を生徒の多様な能力を積極的に評価するための選抜尺度の多元化を推進するよう工夫を行うとともに,国公私立の高等学校及び中学校等の関係者による定期的協議の場の設定による国公私立を通じた入学者選抜の改善などについても適切に対応していくことが望まれている。

 なお,答申では,各学校・学科などの特色に応じた選抜方法の工夫,学力検査や調査書の取扱いの見直しなどについても提言している。これらについては,先述した高等学校教育の改革の推進に関する会議入試部会において更に専門的な検討を行い,平成4年8月,第2次報告として,「中間まとめ」を公表した。

第2次報告の内容の概要は次のとおりである。


1) 公立高等学校入学者選抜の改善方策
 ア 各学校・学科・コースごとの特色に応じた多様な選抜を行うとともに,同一の学校・学科等の中でも入学定員を区分して複数の尺度に基づく異なる選抜方法を実施することも積極的に検討する。
 イ 受験機会の複数化による多段階の入学者選抜を一層積極的に検討する。推薦入学については,専門学科等だけでなく普通科においても,教育上の特色づくりと並行して活用する。
 ウ 合否判定の際の調査書と学力検査の成績の比重の置き方については,各学校・学科,あるいは定員の一部ごとに異なる方式で行うことも工夫する。さらに,学力検査を実施しない選抜,あるいは調査書の比重を大幅に軽減し合否判定の単なる参考資料とする選抜や調査書を用いない選抜を行う道も開かれるべきである。
 エ 学力検査の問題作成については,中学校の新しい教育課程の趣旨を踏まえ,工夫改善を図る。また,各学校・学科等,あるいは定員の一部ごとに実施教科数を増減したり,教科の配点の比重を変えたりする。
 オ 調査書については,中学校生徒指導要録の改訂の趣旨に留意するとともに,中学校の選択履修の幅の拡大にも配慮する。スポーツ活動,文化活動,社会活動,ボランティア活動なども適切に評価する。

2) 私立高等学校入学者選抜の改善方策

 私立高等学校についても公立高等学校と同様の観点から,入学者選抜の改善が図られるよう配慮していく必要がある。また,各都道府県における高等学校入学者選抜の改善について,国・公・私立の高等学校及び中学校の関係者が定期的に協議する場を設け,選抜方法や出題内容の改善について共通理解を図る必要がある。


(2) 保護者の転勤に伴う転入学者等の受入れの推進

 近年,経済活動の広域化や国際化の進展に伴い,全国的規模で転勤する者や海外から帰国する者が増加する中で,高校生を持つ保護者の転勤に伴う子どもの転入学の困難さが社会的にも大きな問題となっている。

 保護者の転勤に伴う高等学校生徒の転入学について文部省では,昭和59年3月,各都道府県教育委員会等に対して通知を発し,保護者の転勤に伴う高等学校生徒の転入学等について,可能な限り弾力的な取扱いをするよう指導するとともに,転学の許可等の弾力的取扱いに関する学校教育法施行規則の改正などを行ってきた。

 文部省では,平成2年度にはこの問題の一層の改善を図るため,有識者等からなる「保護者の転勤に伴う転入学者等の受入れの推進に関する調査研究協力者会議」を発足させた。同会議では,転入学等の円滑な実施を図るための方策について審議が進められてきたが,平成3年7月に報告をまとめ様々な提言がなされた。報告では,保護者の転勤等に伴う転入学者等の受入れを推進するための具体的方策として次のことが提言されている。


1) 転入学等の受入機会の拡大

 学校においては,少なくとも各学期ごとの転入学試験等の実施を原則とするよう努めるとともに,できる限り随時の受入れについても配慮していくことが望ましい。各都道府県においても,学期ごと等に統一的な転入学等の試験日の設定や随時の受入れの促進について配慮すべきであり,4月当初の受入れについては特段の配慮が望まれる。また,学校ごとの出願期間や試験日をずらして受験機会の複数化を図ったり,学区等について弾力的な定めや運用を行うことなどについて配慮していくべきである。


2) 転入学等に係る受験手続等の簡素化,弾力化

転入学等に係る提出書類については,願書以外の書類は最小限にとどめたり,学校によっては,試験実施後における提出を認めたりするなどの措置も検討されるべきである。また,企業等においても,可能な限り,転勤の内示を早めに行ったり,転入学がしやすい時期に転勤の時期を合わせるなどの配慮が望まれる。


3) 転入学者等のための特別定員枠の設定

 転入学者等の受入れ枠の設定については,特に,校長の裁量による弾力的受入れについて,各都道府県が基準を示す等によりその促進を図っていく必要があると考えられる。また,転入学者等の受入れの機会を確保するためには,あらかじめ各学校において特別定員枠を設けることが適切であり,その一層の拡大が図られる必要がある。


4) 転入学等に関する情報提供の充実

 転入学等に関する全国的な情報提供体制の整備を図るため,国においてコンピュータによるデータベースを構築し,全国の高等学校の転入学等の情報を一元化し,各都道府県教育委員会や学校等が端末により容易に必要な情報を検索できるようなシステムを確立することが適切である。また,各都道府県の実情等に応じ,適切な相談窓口を設置するとともに,各学校においても,転入学等に関する担当者を定め,外部からの相談に適切に対応できるような体制を整える必要がある。

 上記報告を受けて文部省では,各都道府県教育委員会,都道府県知事等に対して通知により,提言内容の具体化に取り組むよう要請を行った。

 また,全国の高等学校の転入学等の情報の一元化については,平成4年2月より国立教育会館のコンピュータと全国の都道府県教育委員会,私立学校担当部局等の端末機とをパソコン通信で接続した「高等学校転入学情報等提供システム」を稼動させ,全国の高等学校の学校概要情報や転入学者等の受入れに関する情報の提供を行っている。転入学等に関する情報の入手を希望する者は,学校を通し又は直接,各都道府県の教育委員会や私立学校担当部局の転入学情報提供窓口,国立教育会館に対して,電話や文書で照会して必要な情報を入手できる。

 これまで転入学を希望する生徒や保護者は,ほとんど独力で時間を掛けて転入学情報を収集していたが,本システムの稼動により,必要な転入学情報を組織的にしかも短時間で容易に入手できるようになった。

 このシステムを通じて入手できる情報の内容は,次のようなものである (表2-3-5)

2-3-5  高等学校転入学情報等提供システムの情報内容


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