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2編 文教施策の動向と展開
第3章 初等中等教育の改善・充実
第5節 高等学校教育の改革
1 高等学校教育の改革の推進



(1) 高等学校教育の改革の背景

 昭和23年に新しい教育制度の下に創設された我が国の高等学校は,高度成長期を通じて量的な拡大を続け,その教育は,我が国の成長と発展に大きく寄与してきた。今日では進学率は95%に達し,生徒の能力・適性,興味・関心,進路等は極めて多様化している。しかし,下方で,現在の高等学校教育は,そのような生徒の実態に十分に対応したものとはなっておらず,画一的な教育課程,大学進学準備に偏った教育,偏差値に過度に依存した進路指導,不本意入学や高校中退などの問題が指摘されている。

 このような高等学校教育をめぐる問題の改善を目指し,文部省では,これまでも教育課程の基準の弾力化,単位制高等学校の制度の創設などの施策を講じてきており,また,各都道府県でも,特色ある教育課程を編成する高等学校や新しいタイプの高等学校を設置するなどの取組を進めている。

 しかし,なお高等学校教育の現状は,生徒の多様なニーズに対応したものとなっておらず,ともすれば運用において画一的な面が依然見られるとの指摘がなされている。平成3年4月に出された第14期中央教育審議会の答申においても,高等学校教育の一層の多様化・個性化のための様々な改革提言が行われており,その趣旨を踏まえ,高等学校教育の改革のための施策を適切かつ効果的に進めていくことが課題となっている。


(2) 高等学校教育の多様化・個性化のための国の施策

高等学校教育の多様化・個性化を図るため,文部省においては近年次のような施策を講じてきた。


1) 高等学校における教育課程の基準の多様化・弾力化

 平成元年3月に公示された新しい高等学校学習指導要領においては,各学校の創意工夫により生徒の能力・適性等に応じた適切な教育を行うことを一層可能にするとの観点から,多様な教科・科目の設定や授業形態の弾力化等による生徒の選択の機会の拡大,各学年の課程の修了認定の弾力化などの改善を行った。

新学習指導要領は,平成6年度から学年進行で実施される。


2) 高等学校に関する制度の多様化・弾力化

 高等学校に関する制度の多様化・弾力化の推進のための施策として,まず,単位制高等学校の制度を創設した。単位制高等学校は,臨時教育審議会の答申を受け,生涯学習の観点から,だれでもいつでも必要に応じて高等学校教育が受けられるよう,学年制の枠を外し,弾力的な学習が可能となるよう種々工夫が凝らされた新しいタイプの高等学校で,昭和63年度より,定時制・通信制課程について制度化されている。

 また,生徒の勤務形態の多様化などを踏まえ,昭和63年には,学校教育法が改正され,高等学校の定時制・通信制課程の修業年限が「4年以上」から「3年以上」に弾力化された。そのほか,臨時教育審議会答申を踏まえて,後期中等教育を活性化し,高等教育への多様な道を開く観点から,昭和60年,一定要件を備えた修業年限3年以上の専修学校高等課程卒業者に対し大学入学資格が付与されることとされた。


3) 高校生留学の制度の創設,帰国生徒の入学・編入学機会の拡大

 国際化の進展に伴い,外国の高等学校への留学を希望する高校生や外国から帰国する生徒が増加していることを踏まえ,昭和63年には,高等学校における留学の制度(休学又は退学することなく外国の高等学校において教育を受け,国内の高等学校の単位として修得できる制度)を創設するとともに,帰国生徒の高等学校への入学・編入学機会を拡大するため,4月以外の時期にも我が国の高等学校への入学を許可することや各学年を通じ随時編入学を行うことなどを可能とする措置を講じた。


(3) 新しいタイプの高等学校

 各都道府県においては,以上のような多様化・弾力化された制度を活用し,生徒の多様なニーズにこたえることを目的とする新しいタイプの高等学校が設置されてきており,高い評価を得ている。その代表的な例を挙げると,2-3-4 のとおりである。これらの高等学校には,前述の単位制高等学校のほか,国際化や情報化に対応した教育を展開している高等学校や,大規模校の長所を生かして多様な科目を用意したり,学科間・学校間の連携,コース制の導入等により幅広い選択を可能としたりしている高等学校など様々なタイプのものがある。

 このうち,単位制高等学校は,平成4年度までに,22都道府県に公立31校,私立5校が設置されている。

 これらの新しいタイプの高等学校は,高等学校教育改革のパイロットスクールとして,他の学校の積極的取組を促進するものである。また,特色ある教育課程の編成等について工夫し,様々な特色ある高等学校づくりの取組が行われている学校も少なくないが,他方,すべての学校で高等学校教育の多様化・個性化の取組が十分行われているという状況には至っていない。

2-3-4  新しいタイプの高等学校の例


(4) 中央教育審議会答申と高等学校教育の改革

 このような状況の中で平成3年4月に第14期中央教育審議会がら「新しい時代に対応する教育の諸制度の改革について」答申が行われた。この答申では,生徒の選択の幅を拡大し,個性の伸長を図っていく観点に立ってこれからの高等学校教育について様々な改革提言を行っている。

 答申は,まず,これまでの我が国の高等学校教育が産業の成功に太いに貢献してきた一方で,受験競争の激化や画一的な教育,学校への不適応などの弊害をも招いていることを指摘し,子どもの心の抑圧を軽減することを改革の基本的な考え方として示している。そして,量的拡大から質的充実へ,形式的平等から実質的平等へ,偏差値偏重から個性尊重・人間性重視へそれぞれ転換していくことを改革の視点に据え,学校・学科制度,教育内容・方法等,支援措置などの広範な領域にわたって,種々の改革のための方策を提言している。

具体的には,

 ア 現在の普通科・職業学科に大別された学科制度を見直し,新たに普通科と職業学科を総合したような学科を設けること。
 イ 情報,厚生,観光学科の制度化など職業学科の再編成を行うこと。
 ウ 新しいタイプの高校の設置を奨励すること。
 工 単位制の活用を図り,全日制課程に無学年制の導入を行うこと。
 オ 普通高校と職業高校の相互履修を認めたり,専修学校の学習や技能審査の成果などを高校の単位として認めたりする方途を講ずること。
 力 学校・学科間の移動をしやすくすること。

などが提言されている。

 また,高等学校入学者選抜についても,選抜方法の多様化や選抜尺度の多元化を推進する観点から,種々の改善方策の提言が行われている。

 そのほか,中学校・高等学校の入学者選抜の在り方,教育課程の編成・実施については、公私立学校の関係者等が研究協議を行う場を設定するなどして,これらの改善を図っていくことが必要であることなども提言している。


(5) 高校教育改革推進会議における検討

 答申の提言については,その具体化に当たって,各都道府県等の努力により実施可能なもののほか,法令等の改正を要するもの,予算措置を要するもの,さらには,これらの措置をとるに際して,更に専門的,多角的な調査研究,検討が必要なものなど多岐にわたっている。文部省では,各都道府県教育委員会等に対し,平成3年6月7日付けで通知を発し,都道府県や学校等において直ちに実行に移していくことのできるものについてその推進を促したところである。制度改正等を必要とせず,各都道府県や学校の努力によって推進していくことのできる運用面での改善・工夫については,都道府県,学校それぞれの積極的な対応が期待される。

 また,文部省では,制度化を図るためには更に専門的な検討を行う必要のある事項について検討を行うため,平成3年6月に学識経験者等からなる「高等学校教育の改革の推進に関する会議」を発足させた。

 同会議には,専門部会として教育部会と入試部会が設けられ,検討が重ねられてきたが,平成4年6月には,教育部会の検討事項について第1次報告が公表された。この報告では,各高等学校において幅広く柔軟な教育が推進され,一人一人の生徒の個性を生かした主体的な学習が一層推進されるという観点から,「全日制課程における学年の区分によらない教育課程の編成・実施」,「学校間連携」,「専修学校における学習成果の単位認定」,「技能審査の成果の単位認定」については,最終的な結論を報告している。また,「総合的な新学科」については,今後幅広く関係各方面から意見を聞いた上で更に検討を進めるため,現段階での検討結果を「中間まとめ」として報告している。

 文部省では,この報告を受け,所要の制度改正に向けて作業を進めることとしている。

 第1次報告における各事項の内容の概要は次のとおりである。


1) 総合的な新学科について

 従来の普通科及び職業学科という枠にとらわれず,学校が幅広く総合的に選択科目群を開設し,生徒の個性を生かした主体的な選択による学習が可能となるような学科として,総合学科(仮称)を新設する。

 総合学科においては,独自の必修科目として,「産業社会と人間」(仮称)(地域の企業等への訪問,学校での基礎的な実習,社会人との交流等体験的な学習を重視),情報に関する基礎的科目,「課題研究」の3科目を設ける。

 また,専門教科・科目を30単位以上開設し,体系性や専門性などの点で関連のある科目を総合選択科目群としてまとめ,かつ,複数の選択科目群を開設し,生徒の多様な選択に対応できるようにする。なお,この総合選択科目群は,学習の分野を固定する小学科やコースとは異なるものである。


2) 全日制の課程における学年の区分によらない教育課程の編成・実施について

 現在,高等学校においては,学年制と単位制が併用されているが,多様な生徒の個に応じた教育課程の履修を促進し,生徒の選択の幅を拡大するという趣旨を徹底するため,全日制課程においても,単位制のみによる教育課程の編成・実施を可能にする。

 全日制単位制高校には,学期ごとの入学・卒業,過去に在学した高等学校において修得した単位の卒業必要単位数への加算などの特例措置を適用する。

 この高等学校では,できるだけ多様な教科・科目を開設し,生徒の選択の幅が拡大するよう配慮が求められる。


3) 学校間連携について

 選択学習の機会を拡大する観点から,生徒の多様な実態に対応した教科・科目の開設が困難な場合,他の高等学校の教科・科目を受講する機会を与え,当該学習の成果を自校の教科・科目の単位として認める。

 学校間連携による履修の範囲は,いずれの課程間,学科間においても認める。

 認定できる単位数は20単位以内とする。なお,専修学校における学習成果の認定,技能審査の成果の単位認定を合わせて行った場合も,合計20単位以内とする。


4) 専修学校における学習成果の単位認定について

 生徒の多様な実態に対応し,選択学習の機会を拡大する観点から,教育上有益と認められる専修学校における学習については,校長は生徒に自校の教育課程に位置付けられている科目の一部の履修として,専修学校で履修することを認め,その学習の成果を自校の科目の単位の一部として認める。

 連携する対象としては,専修学校の高等課程のほか,専門課程の教育の一環として高等学校の水準に合致させて高校生向けに特別に開設される講座も認める。

 この制度により認定される単位数分の合計は,20単位以内とする。


5) 技能審査の成果の単位認定について

 技能審査のうち,内容及び程度が高等学校学習指導要領に適合しているものについては,その技能審査に合格し資格を取得した場合には,その成果を当該技能審査とのかかわりの深い高等学校の教科・科目の増加単位として認める。

 この制度により認定できる単位数は,20単位以内とする。


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