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2編 文教施策の動向と展開
第3章 初等中等教育の改善・充実
第2節 教育内容・方法の改善
3 学校週5日制の実施


 文部省においては,幼稚園,小学校,中学校,高等学校並びに盲学校,聾学校及び養護学校において,平成4年度の2学期から毎月の第2土曜日を休業日とする学校週5日制を実施することとした。


(1) これまでの経緯

 文部省では,平成元年度から「社会の変化に対応した新しい学校運営等に関する調査研究」の一環として学校週5日制の調査研究に着手した。

 具体的には,平成元年の8月に,「社会の変化に対応した新しい学校運営等に関する調査研究協力者会議」(主査:幸田三郎共立女子大学長)を発足させるとともに,同年の12月には,検討に必要な実証的な資料を得るため,9都県に所在する68校の学校を調査研究協力校として指定し,平成2年度から月1回又は月2回の学校週5日制を試行して実践的な研究を行ってきた。

 そして,平成4年2月20日,協力者会議は,学校,家庭及び地域社会の教育全体の在り方を見直し,社会の変化に対応してこれからの時代に生きる子どもたちの望ましい人間形成を図る観点から,学校週5日制を段階的に導入することが適当であるとの審議のまとめを取りまとめた。

 文部省では,この提言に沿って,幼稚園,小学校,中学校,高等学校並びに盲学校,聾学校及び養護学校において,平成4年度の2学期から毎月の第2土曜日を休業日とする学校週5日制を実施することとし,平成4年3月23日付けで学校教育法施行規則を一部改正して各都道府県教育委員会等へ通達した。公立学校の休業田こついては,学校教育法施行規則で規定されており,今回の改正では,祝日や日曜日と並んで新たに「毎月の第2土曜日」を規定し,同年9月1日から施行することとした。


(2) 学校週5日制の導入の意義
1) 今日の教育をめぐる課題

 今日,我が国の社会は,情報化,国際化,価値観の多様化,高齢化など,様々な面で大きく変貌を続けている。子どもを含め,我々は,このような社会の変化の中で,一人一人が自らの生き方を考え,個性や創造性を発揮して生きていくことが求められている。これからの教育の在り方についても,このような考え方に立って,社会の変化に主体的に対応して生きていくことができる資質や能力の育成を重視する必要がある。

 一方,教育の現状をめぐっては,学校教育がともすれば知識の伝達に偏りがちで画一的,硬直的である,家庭や地域社会の教育力が低下し学校教育に過度に依存する傾向があるなど,その教育機能が十分発揮されていないとの指摘がある。また,現代の子どもには,無気力や引きこもりがちな子どもが増加しているとの指摘や地域社会において子どもの体験が極めて少なくなっているとの指摘があり,このような現状を改めることが求められている。


2) 学校週5日制の意義

 このような状況を踏まえたとき,これからの教育においては,子どもの望ましい人間形成にかかわる様々な課題を克服し,次代を担う子どもたちが心豊かに主体的,創造的に生きていくために必要な資質や能力を育成することを目指すことが求められる。

 このような教育を実現するためには,学校教育はもとより,家庭や地域社会の教育の在り方全体を見直す必要があり,学校週5日制の問題も,このような視点からとらえる必要がある。すなわち,学校週5日制の導入は,子どもの生活全体の中での家庭や地域社会における生活時間9比重を高め,学校,家庭及び地域社会の教育力を相互に高め合うことによって,子どもが自ら考え主体的に判断し行動できる資質や能力を身に付けるようにすることをねらいとしている。

 このように考えるとき,これからの学校教育においては,これまでの知識や技能を共通的に身に付けさせることを重視した教育から,子どもが自ら考え,主体的に判断し行動できる資質や能力の育成を重視する教育へと,その基調の転換を図る必要がある。平成元年に改訂した新学習指導要領も,このような考え方に立つものであり,今後,学校においては,自ら学ぶ意欲と主体的に考え判断し行動できる能力の伸長を基礎的・基本的な内容の中核をなすものとしてとらえ,子どもが自らの力によってそれらを獲得し,自己実現に役立つものとして身に付けるよう指導することが大切である。

 また,このようにして身に付けられた資質や能力は,家庭や地域社会において,子どもが月,由な時間を生かして,遊び,自然や社会,生活などにかかわる様々な体験をすることを通して,深められ根付いていくものと考えられる。それらは更に,学校教育の基盤となり,その教育効果を高めることにつながることになる。

 一方,今日の社会一般における週休2日制の普及拡大は,親や大人が家庭や地域社会において生活する時間の増加をもたらしている。このことによって,家庭において,子どもと親が共に過ごし,豊かな生活体験をしたり生き方を学んだりするなど親による子どもの教育が充実することや,地域社会において,大人の理解と協力によって,子どもの自然体験や社会体験などの機会と場が増加することが期待される。


(3) 学校週5日制の導入の時期と形態

 学校週5日制の導入は,教育問題にとどまらず,国民生活にも大きな影響を及ぼす問題でもあることから,教育水準の維持,子どもの学習負担,家庭や地域社会の受入れ体制など幅広い立場から総合的に検討する必要がある問題であり,またそれを進めるに当たっては,国民の理解を得ることも大切である。

 このような考え方に立って,調査研究協力校における研究成果,家庭や地域社会における受入体制の現状,国民世論の動向など,総合的に勘案しながら検討した結果,学校週5日制を円滑に定着させるためには段階的に導入することが適当であることから,平成4年度の2学期から毎月の第2土曜日を休業日とする学校週5日制を実施することとしたものである。


(4) 学校週5日制をめぐる諸課題とその対応

 学校週5日制の導入に当たっては,教育水準の維持や子どもの学習負担,休業日の子どもの受入体制,過度の学習塾通いや非行などの問題行動の増加などについて懸念する向きもある。これらのことについては,次のように考えられる。


1) 教育水準の維持と学習負担

 教育水準については,様々なとらえ方があるが,学力を単なる知識や技能の量などの問題としてとらえるのではなく,これからは,学校,家庭及び地域社会における学習や生活を通して,子どもが自ら考え,主体的に判断し行動するために必要な資質や能力として身に付けたものとして考えることが大切である。

 学校においては,このような新しい学力観に立って,指導内容の吟味や精選を図るとともに,体験的な学習や問題解決的な学習を重視したり,個に応じた指導を工夫するなど指導方法の一層の工夫改善を行い,教育水準の維持に努める必要がある。また,家庭や地域社会においても,子どもが主体的に自由な時間を有効に使えるようにするとともに,豊かな体験の機会や場が充実されるようにすることが大切である。

 子どもの学習負担については,基礎的・基本的な内容を指導するために必要とされる授業時数の確保と,月,週,日ごとの子どもの学習リズム,集中力や持続力の保持などの面から検討し,それらの調和が図られるようにする必要がある。このことについては,調査研究協力校の研究成果から,月1回の学校週5日制については,各教科等の標準授業時数を確保することを基本としつつ,学校において指導内容や指導方法を工夫することによって対応できるものと判断)れたものである。月2回以上の学校週5日制を実施する場合の子どもの学習負担の問題については,今後,調査研究協力校において実践的な研究を重ねていく必要がある課題であると考えている。


2) 休業日の子どもの受入体制

 学校週5日制の導入は,さきに述べたように,子どもの生活全体の時間の中で,家庭や地域社会において生活する時間の比重が大きくなるということである。家庭や地域社会においては,休業日となる土曜日に,学校に準ずるようなものを作るのではなく,自由な時間を子どもに与えることを原則として,その対応を考えることが大切である。

 すなわち,家庭や地域社会においては,一人一人の子どもが主体的に使うことができる時間を確保し,ゆとりのある生活の中で個性を発揮したり,豊かな感性や社会性,創造性を培ったりすることが期待されている。その際,家庭や地域社会を,自ら考え主体的に判断し行動できる資質や能力の育成を目指す学校教育の発展の場として,またそれを補完する場としてとらえ,学校教育で身に付いた資質や能力が家庭や地域社会における体験などを通して深められ,根付くよう配慮することが大切である。

 このような考え方に立って,家庭や地域社会においては,異年齢や同年齢の子ども同士の遊び,自然や社会,生活にかかわる体験の機会や場の拡充を図る必要がある。

 今後,家庭や地域社会の理解や協力を得て,関係行政機関,青少年団体,スポーツ・文化団体,PTA等が連携を図り,積極的な取組を進めることが大切である。

 なお,休業日となる土曜日においては,子どもは家庭や地域社会で主体的に生活することを基本とすることが適当であるが,幼稚園や小学校低学年の子どもや盲学校,聾学校及び養護学校等の子どもで保護者が希望するものなどに対しては,学校などにおいて,必要に応じて遊び,スポーツ,文化活動などを実施することも考慮する必要がある。このため,これに要する経費が地方交付税において措置されている。


3) 過度の学習塾通いや非行などの問題行動への対応

 学校週5日制は,学校,家庭及び地域社会を通して子どもの望ましい人間形成を図ることをねらいとしたものであるから,その導入が過度の学習塾通いにつながらないようにすることが大切である。このため,文部省では,PTA団体との懇談の場を設け,学校週5日制の導入の趣旨を説明するなどして保護者の理解と協力を求めるとともに,通商産業省の協力も得て,学習塾の団体との懇談の場を設け,理解と自粛を求めたところである。

 また,非行などの問題行動の原因は,学校,家庭及び社会のそれぞれの要因が複雑に絡み合っていることから,学校の休業日が増えることが直ちにその増加に結び付くものではないと思われるが,学校週5日制の導入が非行などの問題行動を誘発しないよう,家庭や地域社会をはじめ学校や教育委員会の関係者が,子どもの健全育成に一層努めることが求められる。文部省としても,子どもの健全育成について,今後とも引き続き指導助言や援助を行っていくこととしている。

 今後,全国すべての学校で学校週5日制を実施していくに当たって,あるいはいろいろな課題が生じることもあるかもしれないが,それらの課題について,子どもの立場に立つことを基本とし,学校と家庭や地域社会が力を合わせながら,一つ一つ適切な解決策を探っていくことが求められる。文部省としても,学校週5日制の円滑な定着に向け,引き続き,全省を挙げて努力していくこととしている。


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