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2編 文教施策の動向と展開
第3章 初等中等教育の改善・充実
第2節 教育内容・方法の改善
1 新学習指導要領の実施



(1) 新学習指導要領の基本的な考え方

 今日の科学技術の進歩や経済の発展は,豊かな社会を形成するとともに,情報化,国際化,価値観の多様化,核家族化,高齢化など,社会の各方面に大きな変化をもたらしている。しかも,このような社会の変化は,これまで経験したことのない程,今後ますます拡大し,加速化することが予想される。次代を担う子どもたちも,このような急激な社会の変化の中で生きていかなくてはならない。

 また,明治以降,我が国は欧米先進諸国に追い付くことを目指し,学校教育もその一環として,欧米先進諸国で作られた知識や技術などを体系的に教えることを中心にして進められてきたと言われる。このことは,国民の教育水準の向上に大きな役割を果たしたと評価されているが,一方では,未来を展望するとき,新しい文化を自らの手で創り出し,国際社会にも貢献するような教育の在り方が求められている。

 学校教育は,知識の伝達に偏り,画一化,硬直化しているなどの指摘があるが,これらは,これまでの教育の負の側面に対する端的な警鐘として受け止め,これらの点を是正していく必要がある。

 このような状況を踏まえるとき,これからの学校教育においては,子どもたちが社会の変化に対応して主体的,創造的に生きていくために必要な資質や能力を育成することが求められる。

 平成元年に改訂した学習指導要領も,このような考え方に立ち,社会の変化に自ら対応できる心豊かな人間の育成を図ることを基本的なねらいとし,次の方針に基づき各教科等の内容や授業時数等の改善を行った。


1) 心豊かな人間の育成

 教育活動全体を通じて,子どもの発達段階や各教科等の特性に応じ,豊かな心を持ち,たくましく生きる人間の育成を図ること。


2) 基礎・基本の重視と個性教育の推進

 国民として必要とされる基礎的・基本的な内容を重視し,個性を生かす教育を充実すること。


3) 自己教育力の育成

 社会の変化に主体的に対応できる能力の育成や創造性の基礎を培うことを重視するとともに,自ら学ぶ意欲を高めるようにすること。


4) 文化と伝統の尊重と国際理解の推進

 我が国の文化と伝統を尊重する態度の育成を重視するとともに,世界の文化や歴史についての理解を深め,国際社会に生きる日本人としての資質を養うこと。

 新学習指導要領は,幼稚園については平成2年度から,小学校については平成4年度から全面実施しており,中学校については平成5年度から全面実施し,高等学校については平成6年度から学年進行により実施することとしている。


(2) 新学習指導要領の趣旨の実現に向けた課題と施策
1) 授業の改善

 新学習指導要領の趣旨を実現するためには,各学校において,子どものよさや可能性を生かすことを根底に据え,自ら学ぶ意欲や思考力,判断力,表現力などの能力の育成を重視する新しい学力観に立って,積極的な学習指導を展開する必要がある。そのためには,教師が新学習指導要領の趣旨を十分に理解し,日常の授業の改善に努めることが重要である。

 文部省においては,このような観点に立って,これまで校長,教頭,教員や教育委員会の指導主事等を対象にした教育課程講習会を開催するとともに,教師用の指導資料を刊行するなどして新学習指導要領の趣旨の徹底を図ってきた。平成4年度においては,新学習指導要領を全面実施する小学校について,教育課程講習会に替え教育課程運営改善講座を実施し,実践例を発表するなどして具体的な授業の改善に向けた研究協議を行うこととしている。


2) 生活科の実施

 小学校では,平成4年度から,低学年の社会科と理科を廃止して,新たに生活科が実施されている。生活科は,子どもが,具体的な活動や体験を通して,自分と身近な社会や自然とのかかわりに関心を持ち,自分自身や自分の生活について考えるようにするとともに,その過程において生活上必要な習慣や技能を身に付け,自立への基礎を培うことをねらいとしている。生活科は,これまでの知識や技能の伝達に偏りがちな学校教育の在り方を改めようとする新学習指導要領の考え方を端的に表した教科として,その教育の成果が注目されている。

 文部省においては,新教科である生活科の趣旨の普及と定着を図るため,生活科実施推進事業を推進している。各都道府県においては,その事業として,生活科実施推進会議を設けて地域の実態に応じた生活科の円滑な実施方策についての検討を行うとともに,生活科実施推進協力校において生活科の公開授業を行っているところである。


3) 中学校の選択履修の幅の拡大

 今回の学習指導要領の改訂においては,各学年の年間総授業時数は変更していないが,個々の教科等の授業時数については,教科によって下限及び上限の幅をもって授業時数を示すとともに,選択教科については,その種類を増加し,かつ,授業時数の増加を可能とするなど選択履修の幅の拡大を行った。選択履修の幅の拡大については,個性を生かす教育の充実を図る観点から行ったものであり,子どもの特性等に応じた多様な学習活動を展開できるようにするとともに,入学から卒業までの3年間を見通した上で具体化を図る必要がある。この措置は,平成3年度の第1学年から順次実施している。

 文部省においては,教育課程講習会等を通じて,その趣旨の徹底を図るとともに,カリキュラム編成,指導内容・方法等の望ましい在り方についての実践研究を行うため,平成3年度から7府県に調査研究を委嘱している。


4) 道徳教育の充実

 道徳教育については,今回の学習指導要領の改訂において,豊かな心を持ちたくましく生きる人間を育成する観点から,子どもの道徳性の発達に応じ内容の重点化などの改善を行い,その一層の充実を図ったところであり,平成2年度から新学習指導要領により実施している。

 文部省においては,その指導の一層の充実を図る観点から,各種の講習会を実施するとともに,指導資料を作成して各学校に配布している。


5) 国旗・国歌の指導

 今回の学習指導要領の改訂においては,国際化の進展を踏まえ,これからの国際社会に生きる子どもたちが国旗・国歌についての正しい認識を持ち,それを尊重する態度をしっかりと身に付けるようにすることが大切であるとの観点から,入学式や卒業式における国旗・国歌の取扱いを明確化した。この取扱いは,平成2年度から実施している。

 平成3年度卒業式及び平成4年度入学式の国旗掲揚及び国歌斉唱の実施状況については,2-3-1 ,2 のとおりである。なお,一部に国旗掲揚や国歌斉唱が行われなかった学校もあったが,新学習指導要領の趣旨が十分に理解され,国旗掲揚や国歌斉唱が各学校で適切に実施されることが望まれる。

2-3-1  平成3年度卒業式における国旗掲揚,国歌斉唱の状況

2-3-2 平成4年度入学式における国旗掲揚,国歌斉唱の状況


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