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1編 スポーツと健康
第2部 健康教育の充実
第2章 健康教育の充実のための施策の展開
第3節 学校安全の充実


 健康・安全で幸福な生活のために必要な習慣を養い,心身の調和的発達を図ることは,学校教育の重要な目標となっている。このため,安全な生活を営むのに必要な事柄について理解させるとともに,安全な行動ができるような態度や能力を身に付けさせることが大切である。具体的には,児童生徒が事故の原因をよく理解し,日常生活の中に潜む危険をわきまえて,的確な判断の下に,適切に対処したり,事故や災害が起こった際に適切な行動がとれるような能力を身に付けさせる必要がある。

 一方,学校における事故発生件数は依然として多く,児童生徒の交通事故による死傷者も少なくないことから,学校における安全指導の重要性がますます高まっている。


1 児童生徒の事故の状況
(1) 学校における事故

 学校の管理下における児童生徒等の災害の推移を見ると,負傷・疾病件数は年々増加してきたが,昭和60年代に入ってからはほぼ横ばいの傾向にある。死亡件数は年間200〜300件の間を推移してきたが,昭和63年以降は減少してきている。障害件数は昭和50年代に入って急増したが,昭和56年をピークに減少傾向にある (図1-2-5)

 平成3年度の死亡の状況について,死因別に見ると,急性心不全等にまた,障害種別の状況については,歯の障害が約46%,眼の障害が約16%となっている。

 これらの負傷発生の状況を学校種別に分類すると,小学校では休憩時間が,中学校・高等学校においては課外指導の時間が最も多くなっている。

1-2-5  学校における事故


(2) 交通事故

 道路交通事故死者数を見ると,総数では,昭和45年には1万6,765人であったが,それ以降減少し,昭和54年には8,466人まで低下した。しかし,近年増加傾向に転じ,平成3年には1万1,105人と昭和63年以降4年連続して1万人を突破し,昭和45年前後の第1次交通戦争に続く第2次交通戦争とも言われている (図1-2-6) 。特に,平成4年に入ってからは,4月末現在で前年同時期に比べて1割以上も多く,昭和49年以降最悪のペースになっている。このような中にあって,小・中学校の児童生徒の死者数はおおむね減少傾向にあり,平成3年の小学生の死者は171人,中学生は72人となっている (表1-2-4) 。一方,高校生については483人と依然として多く,うち約7割が二輪車乗車中である (図1-2-7)

1-2-6  交通事故死者数の推移

1-2-4  校種別死者数の推移

1-2-7  高校生の状態別死者数の構成率(平成3年中)


2 安全指導の充実

 文部省においては,学校における安全教育の改善,充実に資するため,「小学校安全指導の手引」(昭和58年改訂),「中学校安全指導の手引」(昭和59年改訂)を作成し,趣旨の徹底を図るとともに,新学習指導要領を踏まえ,順次改訂作業を進めている。また,安全教育を各学校で担当する教員を対象に「交通安全教育指導者養成講座(中央研修会及び都道府県研修会)」等の研修会や研究協議会等を通じ,教員に対して,その指導計画及び効果的な指導方法について研修の機会を提供し,指導力の向上を図るとともに,教材・教員の整備を進めている。


3 交通安全教育の充実
(1) 交通安全に関する指導の充実

 学校における交通安全教育は,安全教育の一環として,学級活動・ホームルーム活動や学校行事などの特別活動を中心に行われており,交通社会の一員としての責任を自覚し,交通安全意識と交通マナーの向上に努め,自己の安全のみならず,他の人々や社会の安全に貢献できる健全な社会人の育成を目指している。

 文部省においては,新学習指導要領において,中学校及び高等学校の教科「保健体育」の指導内容として交通安全に関する事項を充実した。また,学校・家庭・地域が一体となって取り組む交通安全教育推進地域事業や,教員等を対象とする二輪車の実技指導を含めた「交通安全教育指導者養成講座」を実施している。さらに,(財)日本交通安全教育普及協会に調査研究を委嘱し,その研究成果に基づき「高等学校交通安全指導の手引」(昭和63年改訂),「自転車に関する安全指導の手引」(昭和60年改訂),「高等学校における課外の交通安全指導の手引」(昭和62年改訂)及び「高等学校における二輪車に関する安全指導の手引」(昭和63年作成)等を作成・配布することなどにより,交通安全教育の推進と児童生徒の交通事故の防止を図っている。


(2) 高校生の二輪車事故防止対策の充実

 高校生の二輪車乗車中の事故は,特に昭和40年代より大きな問題とされてきた。そのため,地域の実情に即した現実的な対応として「免許を取らない」,「二輪車を買わない」,「二輪車に乗らない」のいわゆる三ない運動が昭和40年代半ばごろから地域や学校において行われてきた。

 文部省においては,このような三ない運動の実施の有無にかかわらず,各高等学校において計画的に交通安全教育を行うよう,各種研修会等において指導してきた。また,第3次交通安全基本計画(昭和56〜60年度)の実施に伴い,昭和56年6月,「交通安全の確保と交通安全教育の徹底について」体育局長通知を発した。さらに,若者の二輪車事故の増加に対する交通対策本部決定「二輪車の事故防止に関する総合対策について」(平成元年7月)を踏まえ,生徒の実態や地域の実情に応じて,二輪車の安全運転を推進する機関・団体等のと連携しながら,安全運転等の指導を行うなど,安全運転に関する意識の高揚と実践力の向上を図るよう指導してきている。こうした施策を受け,地域や学校においては,その実情に応じ,二輪車事故防止のための総合的な方策が検討されるようになってきた。

 さらに,文部省では,二輪車に乗車する高校生に対し,学校教育活動として行う交通安全教育の効果的な在り方を実技指導を含めて検討する「高校生の二輪車運転に関する指導の在り方についての調査研究」を平成2年度から実施している。


4 応急処置研修の充実

 近年の交通事故の増加,急性心不全等による突然死の問題の深刻化に伴い,傷害や急病の際の応急処置の知識や技能について国民が十分理解しておく必要性が広く指摘されている。このため,高等学校の新学習指導要領では教科「保健体育」科目「保健」において「応急処置」を新たに項目として取り上げることにした。また,これに伴い,新学習指導要領の本格実施までの3年間(平成3〜5年)で,公立の高等学校の教科「保健体育」の担当教諭全員に,心肺蘇生法等の応急処置の技能等を習得させるための実践的な研修である「応急処置研修事業」を平成3年度から実施している。


5 防災教育の充実

 災害は,暴風,豪雨,豪雪,洪水,高潮,地震,津波,火山噴火などの自然災害や,火事,ガス爆発等の人為災害などその原因,形態とも様々である。また,我が国は,その地理的位置,地形条件等から地震,台風,火山噴火など自然災害が発生しやすい国であると言われており,防災教育が極めて重要である。

 防災とは,災害対策基本法(昭和36年制定)において,災害を未然に防止し,災害が発生した場合における被害の拡大を防ぎ,及び災害の復旧を図ることを言うものとされている。災害に対する施策は,施設・設備の整備や避難地,避難路の整備等のいわゆるハード面の対策と,防災計画の策定や避難訓練の実施等のいわゆるソフト面の対策の両面から総合的に推進すべきものである。

 特に,学校は,心身ともに成長発達過程にある児童生徒を多数収容しているので,平素から避難施設の点検整備に努めるとともに,災害発生時には迅速かつ円滑な避難行動が行えるようにしておく必要がある。

 学校における緊急時の安全指導については,かねてから「地震などの緊急時に起こる様々な危険とその際の安全な行動の仕方について理解させ,状況に応じて安全に行動できるようにすること」をねらいとして,体を通じて計画的組織的に行うよう指導している。


6 災害共済給付の改善

 災害共済給付制度は,日本体育・学校健康センターと学校の設置者との間の契約に基づき,学校の管理下における児童生徒の災害について,その保護者等に対して医療費,障害見舞金,死亡見舞金の支給を行い,もって学校教育の円滑な実施に資するものである (図1-2-8)

1-2-8  災害共済給付制度への加入状況(平成3年度)

 なお,給付水準は,昭和53年の大幅改訂以後も数次にわたり改善しており,死亡見舞金は昭和61年から1,400万円,障害見舞金の最高額は昭和63年から1,890万円となっていた。さらに,平成4年度においては,死亡見舞金(1,400万円→1,700万円)及びそれと対応する障害見舞金(第1級1,890万円→2,290万円〜14級40万円→49万円)の引上げを行った。


7 日本体育・学校健康センターの学校安全普及事業

 日本体育・学校健康センターにおいては,各都道府県ごとに学校安全に関する研究学校を指定している。また,同センターは,全国の市町村のうち数地域を交通安全教育推進地域に指定し,家庭や地域との連携の下に関係機関・団体等の協力を得て,安全な道路交通環境の確立の促進及び児童生徒等の安全意識の高揚と実践力の向上を目指した活動を積極的に推進している。


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