ここからサイトの主なメニューです
前(節)へ  次(節)へ
1編 スポーツと健康
第2部 健康教育の充実
第2章 健康教育の充実のための施策の展開
第2節 学校保健の充実


 学校においては,健康に関する知識を理解させるとともに,健康な生活を営むために必要な能力や態度を育てることをねらいとして,「体育」,「保健体育」を中心とした教科及び特別活動等,学校教育活動全体を通じて保健教育を推進している。また,学校保健法に基づき,学校保健計画の策定,健康診断,健康相談,環境衛生の維持改善等,保健管理に関する施策を推進している。


1 保健教育の充実

 平成元年に改訂した新学習指導要領では,自他の生命を尊重し,生涯を通じて健康で安全な生活を送るための基礎を培う観点から,小・中・高等学校を通じて,健康・安全に関する基礎的・基本的な知識を理解させ,児童生徒が発達段階に応じて自主的に健康な生活を実践することができる能力と態度を育成することを重視して内容の充実を図った。これは,生涯学習社会において生涯を通じて健康で安全な生き方を主体的に学びながら生きていくことの重要性を基本的観点とした改訂である。

 新学習指導要領においては,健康の保持増進に関する指導については,従来から保健教育の中心となってきた「体育」,「保健体育」の時間はもとより,特別活動などにおいても十分行うよう努めることとしており,「特別活動」については,各内容における保健学習に関する活動内容を示している。例えば,学級活動・ホームルーム活動については,小学校では「健康で安全な生活態度の形成」,中学校では「健康で安全な生活態度や習慣の形成,性的な発達への適応」,高等学校では「健康で安全な生活態度の形成や習慣の確立」を掲げている。また,学校行事においては,健康安全・体育的行事として活動内容を例示して,各学校が地域や学校の実態に応じて適切な授業時数を設定して実施することとしている。


2 当面する健康問題に関する保健教育の充実
(1) エイズ予防に関する指導の充実

 エイズは近年,世界各国で爆発的に増加し,深刻な社会問題となってきている。

 我が国においても患者・感染者が増加しているのみならず,主な感染経路が異性間の性的接触になってきたことや,20歳代を中心とした若い世代にも広がりつつあることが指摘されており,今後の急激な蔓延を防ぐための予防対策が緊急の問題となっている。

 学校におけるエイズ予防の教育は,「保健体育」,「特別活動」,「道徳」を始めとする学校教育活動全体を通じて行うよう指導している。エイズの概念,感染経路,予防方法等について,正しい知識を習得させることによりエイズを予防する能力や態度を培うとともに,エイズに関する誤解や偏見を除き人権尊重の精神を育てることとしている。また,エイズが性行動に深く関連していることから,エイズ予防の教育は,性に関する指導の一環として実施するのが一層効果的であることに配慮する必要がある。

 エイズ予防の指導を推進するためには,指導資料の充実,教職員の研修の充実,指導方法の工夫改善などが必要である。具体的には,1)小・中・高等学校の教師用指導資料「エイズに関する指導の手引」の作成・配布,2)学校保健関係者を対象とする研修会等を利用したエイズ予防の指導に関する研修の実施,3)小・中・高等学校,さらには家庭や地域との連携を図った指導方法の実践的研究を行うための「エイズ問題を含む性に関する指導推進事業」の推進などの施策を推進してきている。

 また,エイズに関する近年の状況を踏まえ,指導資料の一層の充実を図るため,平成4年中に「エイズに関する指導の手引」を全面的に改訂し配布するとともに,新たに高校生用教材の作成・配布を行うこととしている。


(2) 性に関する指導の充実

 学校における性に関する指導は,発達段階に応じて科学的知識を与えるとともに,人間尊重と男女平等の精神に基づいた生き方を自ら身に付けていくための幅広い教育である。このような性に関する指導は,従来から,「保健体育」,「家庭」,「道徳」,「特別活動」などを中心に教育活動全体を通じて行うよう指導している。

 新学習指導要領においても,思春期の心身の発育・発達に関する内容や青年期の生き方と結婚に関する内容を一層充実させた。具体的には,小学校では教科「体育」で思春期の体つきの変化についての指導を行うこととした。中学校では教科「保健体育」で2次性徴,「道徳」で男女の人格尊重,「特別活動」で性的な発達への適応などを取り上げることになった。また,高等学校では教科「保健体育」で思春期,結婚と健の理解と協力などを取り上げることになっている。


(3) 喫煙・飲酒・薬物乱用防止に関する指導の推進

 昭和60年度から62年度にかけて「喫煙・飲酒・薬物乱用防止に関する保健指導の手引」(小・中・高等学校用)を作成・配布した。この手引においては,喫煙・飲酒・薬物乱用が本人及び他人に及ぼす影響を正しく認識させることによって,健康に影響を与える喫煙・飲酒・薬物乱用と健康のみでなく他人の健康をも守る気持ちを育て,生涯にわたって健康な生活を営む能力や態度を育てるような指導の推進を図っている。

 そして,新学習指導要領においても,生活行動と健康とのかかわりを重視する観点から,教科「保健体育」において,喫煙や飲酒,薬物乱用と健康との関係について理解させるよう充実を図っている。


(4) 学校歯科保健活動の推進

 乳歯から永久歯への転換期にあたる6歳から13歳の年齢期は,歯科保健上,極めて重要な時期であるので,学校における保健指導を一層充実し,歯科保健上望ましい習慣を身に付けさせるとともに,早期治療を励行させる必要がある。このため,昭和53年度から「むし歯予防推進指定昭和58年度から,学校,家庭,地域社会の連携による「むし歯予防推進事業」を実施している。さらに,平成3年度には,歯肉炎の増加傾向等を踏まえ,「小学校歯の保健指導の手引」(昭和53年刊)の改訂を行い,新たに歯周疾患の原因と予防について解説するとともに,従来の歯ブラシの持ち方や磨き方の記述を改め,歯の部位ごとに正しい磨き方を絵で説明した。


3 保健管理活動の充実
(1) 定期健康診断の在り方の見直し

 近年の児童生徒の健康問題の変化,集団検診技術の進歩等を背景に,昭和62年度より日本学校保健会に健康診断調査研究委員会を設け,学校における健康診断の在り方,内容についての見直しを検討してきた。平成3年11月に,当面対応することが望ましいと考えられる事項について同委員会より報告がなされたので,保健体育審議会学校保健分科審議会の意見を聴いた上で,1)尿糖検査の実施,2)心臓の疾病及び異常の有無を発見するために義務付けていた小学校第1学年のエックス線検査の任意化,3)視力検査の簡素化の他,聴力検査,胸郭の検査に関する内容について,学校保健法施行規則の改正(平成4年2月26日付け)を行った。


(2) 児童生徒の健康状態サーベイランス事業

 近年,小児科医などから,児童生徒の間で成人病の徴候,アレルギーなど新しい健康問題が生じていると指摘されている。このため,全国的,経年的な実態を把握するため,平成3年度から,サンプル校での定点観測により児童生徒の健康状態の情報を収集・解析する「児童生徒の健康状態サーベイランス事業」を実施している。


(3) 心の健康問題に関する相談活動の充実

 近年,心因性の頭痛や腹痛,不快感など種々の症状を訴えて保健室を訪れる児童生徒が増加しており,適切なカウンセリングとともに,心の健康に関する教育・保健指導などが必要となっている。このため,養護教諭の現職教育充実を目的として,昭和55年度から「養護教諭実技講習会」,昭和60年度から「ヘルスカウンセリング指導者養成講座」を開催している。また,平成元年度からは「新規採用養護教員研修」を実施し,養護教諭の資質の向上に努めている。

 さらに、平成2年度より実施している「保健室における相談活動に関する調査研究事業」の一環として行った「保健室利用者調査」によって,心の悩みを持って保健室を訪れる児童生徒が少なくないこと,したがって心の健康問題などに関する養護教諭の役割が一層重要になっていることが明らかになった (表1-2-3) 。これを受け,同事業において保健室における相談活動の進め方についての実践的な手引書を作成することとしている。

1-2-3  保健室利用者調査報告の概要


4 学校環境衛生活動の推進

 学校保健法では,学校の換気,採光,照明及び保温を適切に行い,清潔を保つなど環境衛生の維持に努めるとともにその改善を図らなければならないこととしている。

 また,学校保健法に基づいて行う学校環境衛生検査の方法,内容,事後措置等については,昭和39年に保健体育審議会が取りまとめた学校環境衛生の基準(飲料水・水泳プールの水質,教室の照明等の基準)が指針とされてきたが,科学技術の進展や学校を取り巻く環境の変化を踏まえ,平成4年6月,保健体育審議会での審議を経て改訂を行った。主な改訂点は,1)教室等において確保する照度を150ルクス以上から200ルクス以上に引き上げること,また,コンピュータを使用する場合には机上の照度を500〜1,000ルクス程度にすること,2)教室等の空気における一酸化炭素濃度の基準を100ppm以下から10ppm以下に引き上げること,3)飲料水,特に井戸水等の水質の定期検査を年1回から年2回に増やすこと,4)学校給食の保存食の保存期間を48時間以上から72時間以上に延長すること,5)水泳プールについては大腸菌群が検出されないこと,また,腰洗い槽の設置及び使用の義務を解除すること,6)排水の管理の項目を新設したこと,7)ごみ処理についてリサイクルの活用を促すなど,環境に関する配慮を求めたこと,などである。


5 学校保健に関する教職員及び組織の充実
(1) 養護教諭

 養護教諭は,1)児童生徒の保健及び環境衛生の実態を的確に把握して疾病や情緒障害,体力,栄養に関する問題等,心身の健康に問題を持つ児童生徒の個別の指導に当たること,2)健康な児童生徒に対しても健康の増進に関する指導に当たること,3)一般教員の行う日常の教育活動にも積極的に協力すること,などの役割を果たしている。

養護教諭は,現在ほぼ全校に配置されており,平成4年5月1日現在その数は約4万人である。

 なお,平成4年度においては,大規模な学校における養護教諭の職務の在り方について,指定校を設けて実践的な研究を行うこととし,公立小・中・高等学校の指定校に養護教諭の加配措置を行った。


(2) 学校医,学校歯科医,学校薬剤師の配置の促進

 学校医,学校歯科医及び学校薬剤師は,学校における健康診断,健康相談,環境衛生検査等にあたるほか,学校保健計画の策定に参画し,また,その実施が適切に行われるよう,校長を始めとして,保健主事,養護教諭等に対し,近視やむし歯の予防などのために必要な日常生活における留意事項を始めとし,その他の様々な疾病の予防,疾病が発見された場合の措置等について,それぞれの専門的立場から指導と助言を与え,保健活動の効果的な実施を促進する役割を担っている。

 このような職務の重要性にかんがみ,配置の促進を図るため,地方交付税における報酬単価の引上げに努めてきている。平成4年度においては,学校医,学校歯科医及び学校薬剤師の報酬単価については相当額(学校医及び学校歯科医は15万1千円→21万円,学校薬剤師は11万1千円→14万5千円)の引上げを行った。なお,平成3年度には学校医約8万5千人,学校歯科医約4万1千人,学校薬剤師約3万4千人がそれぞれ配置されている。


(3) 学校保健に関する組織の充実

 学校においては,学校保健関係職員が一体となって計画的,組織的に学校保健を推進する必要がある。このため,多くの学校において,健康の問題を研究協議し,それを推進するための学校保健委員会を設置している。

 学校保健委員会は,学校や地域の実情に応じて,校長,教頭,教務主任,保健主事,養護教諭,体育主任,安全主任,学校給食主任,保健教育担当教員,その他一般教員,及び学校医,学校歯科医,学校薬剤師等の学校側代表,そして家庭や保健所など地域の保健関係機関等の代表で組織されるのが通例である。

 学校保健委員会の重要性については,昭和47年の保健体育審議会答申においても指摘されており,今後,一層,学校保健委員会の設置が進み,学校保健活動が効果的に実施されることが期待されている。文部省においても,かねてより学校保健委員会を活用することを指導しており,平成4年2月に改訂した「小学校歯の保健指導の手引」においてもその活用方法を取り上げている。

 学校保健委員会の中心的役割を担うのが保健主事である。保健主事は昭和33年の学校教育法施行規則の改正により,大学及び幼稚園以外の学校に,特別の事情のある場合を除き設置することとした。保健主事は教諭をもって充てることとなっている。また,その職務は校長の監督を受けて学校保健委員会の運営に当たるとともに,養護教諭の協力のもとに学校保健計画の策定の中心となり,保健計画に基づく活動が組織的かつ円滑に展開されるようその調整に当たることである (図1-2-4)

1-2-4  学校保健委員会の構成例


6 学校保健に関する助成制度の充実

 児童生徒の健康の保持増進を図るため,次のような助成事業を実施している。


(1) 学校環境緑化促進事業(昭和48年度〜)

 大気汚染地域や市街化地域に所在する公立義務教育諸学校において植樹等を行い,学校環境の緑化を積極的に推進するために必要な経費について学校の設置者に対し補助している。


(2) へき地学校保健管理費補助(昭和34年度〜)

 へき地教育振興法により,へき地小・中学校のうち医療機関に恵まれない学校において,健康診断,健康相談,学校環境衛生検査等を行う際,市町村が医師,歯科医師,薬剤師を派遣するための経費について学校の設置者に対し補助している。


(3) へき地学校心臓検診事業(昭和60年度〜)

 心電図検診の円滑な実施が困難なへき地学校を対象に,その経費を学校の設置者に対し補助している。


(4) 降灰地域学校保健事業(昭和53年度〜、ただし特別健康診断は昭和60年度〜)

 降灰防除指定地域に所在する学校において、特別健康診断や降灰除去装置(プールクリーナー)の整備を行うために必要な経費について,学校の設置者に対し補助している。


(5) 要保護及び準要保護児童生徒援助費補助(医療費)(昭和33年度〜)

 学校保健法により,公立の義務教育諸学校の児童生徒が伝染性又は学習に支障を生じるおそれのある一定の疾病にかかり,学校において治療の指示を受けて治療をした場合に,経済的理由によって支払困難な当該児童生徒の医療費について都道府県・市町村に対して補助している。


前(節)へ  次(節)へ

ページの先頭へ   文部科学省ホームページのトップへ