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1編 スポーツと健康
第2部 健康教育の充実
第1章 健康教育の充実
第3節 戦後の健康教育の歩み


 戦後,学校教育法において,健康・安全で幸福な生活のために必要な習慣を養い,心身の調和的発達を図ることを学校教育の目標の一つとして掲げた。これにより,感染症を中心とする疾病や傷害の予防と処置によって学習の条件を整えるという戦前の学校衛生の考え方を改め,積極的に健康の保持増進を図ることそのものを教育の目標とすることとなった。そして,この新しい方向の下,健康教育は,学校保健,学校安全及び学校給食のそれぞれの分野で施策の拡充が図られ,児童生徒の健康の保持増進,体位の向上,さらには国民の食生活の改善等に成果を上げてきた。


1 学校保健の歩み

 学校保健は,健康な生活に必要な知識や能力の育成を目指して教科保健教育と,健康診断,環境衛生の改善などの保健管理とに分けられる。そして,次に見るように,保健教育については数次にわたる学習指導要領の改訂により,また,保健管理については学校保健法の制定及び昭和47年の保健体育審議会答申を受けた諸施策等により改善・充実を図ってきた。


(1) 保健教育の歩み

 学校保健のうち,保健教育については,戦後初めて策定した昭和22年の学習指導要領一般編(試案)においてその重要性を示し,教科「体育」においてこれを指導することとした。さらに,昭和24年には中学校,高等学校について教科「体育」を「保健体育」と改めたほか,昭和26年には学習指導要領一般編(試案)の改訂において,小学校の保健教育については,「ある特定の時間を設けて指導するよりも,教科の学習や教科以外の活動のすべてを含め,あらゆる機会をとらえ,あらゆる活動を通じて行われることが望ましい」とし,新しい保健教育の在り方を示した。こうして,保健教育の基本的な方向が昭和20年代に確立した。昭和30年以降も,小学校,中学校,高等学校の学習指導要領を数次にわたって改訂し,社会の変化に対応しつつ内容の一層の充実を図った。昭和33年の改訂においては,小学校では体育に「保健に関する知識」の領域を新設し保健学習を明確に位置付けたほか,中学校では保健体育科の内容を「保健分野」,「体育分野」に大別した。

 また,昭和52年から53年の学習指導要領改訂において,小学校では児童の身近な生活における健康・安全の問題の理解,中学校では生活における健康問題の基本的事項の理解,高等学校では健康の総合的な認識と集団の健康の理解に重点を置いて内容の改善を行った。

 さらに,平成元年の改訂においては,臨時教育審議会答申(昭和61年4月)や教育課程審議会答申(昭和62年12月)で,児童生徒が社会の変化に対応し自主的に健康で安全な生活を実践することのできる能力と態度を育成することを重視する必要があると指摘されたことを踏まえ,小・中・高等学校を通じて心の健康及び生活行動と健康とのかかわりに関する内容を充実した。


(2) 保健管理の歩み

 戦後,学校教育法で「学校においては,学生・生徒・児童及び幼児並びに職員の健康増進を図るための健康診断やその他保健に必要な措置を講じなければならない。」と定め,保健管理を学校教育活動の中に位置付けた。

 学校では,これに基づく学校身体検査規定による身体検査や,戦前からあった学校伝染病予防規定による伝染病の予防が行われていたが,体系的な保健管理を行うには十分でなかったため,昭和33年に至り学校保健法を制定した。同法においては,学校環境衛生の維持改善を図ること,健康診断や健康相談の実施,都道府県教育委員会に学校保健技師を置き,学校に学校医,学校歯科医,学校薬剤師を置くこと,保健室の設置,要保護及び準要保護児童生徒の一定の医療費に対する地方公共団体の援助及び国の補助などについて定めた。

 こうして,単なる体格検査ではない健康診断を児童生徒及び教職員を対象として一定の項目,方法によって実施することとなった。そして,この実施項目,方法などの基準については,その後社会環境や疾病構造の変化に対応して改訂を行ってきており,特に昭和48年には前年の保健体育審議会の答申に基づき「心臓」や「尿」を児童生徒の必須検査項目に追加した。

学校環境衛生については,学校保健法において「学校においては,換気,採光,照明及び保温を適切に行い,清潔を保つなど環境衛生に努め,必要に応じてその改善を図らなければならない。」と規定した。その後,昭和39年には具体的な検査の内容,方法,結果の適否の判断に関する基準として,照度,照明環境,飲料水管理,水泳プールの管理等について保健体育審議会が答申を行った。

 また,昭和53年には,保健体育審議会の昭和47年の答申を受け,環境衛生検査の実施が学校保健法において明示され,計画的にこれを実施しなければならないこと,検査の項目と事後措置及び日常における環境衛生について規定が設けられた。学校保健の分野で大きな役割を果たしてきた団体としては,日本学校保健会がある。同会は,学校医及び学校歯科医を中心として戦前に組織された日本学校衛生会を母体とし,これに学校薬剤師を加えて,昭和29年に財団法人として設立された。この会は,毎年,全国学校保健研究大会を文部省等と共催で開催するなど活動を続けてきたが,昭和47年の保健体育審議会の答申において,学校保健に関する重要問題について,調査,研究,指導の役割を持つ学校保健センター的な機関の設置が提言された。これを踏まえ,文部省では,同会においてその機能を果たすことができるよう,昭和48年度以降,毎年補助を行っている。同会では,その時々の課題に対応して委員会を設け,調査研究等の事業を行い,また,その成果として「喫煙・飲酒・薬物乱用防止に関する保健指導の手引」,「エイズ問題を含む性に関する指導推進事業報告書」等を刊行し,学校等に配布している。

 戦前の学校においては,感染症対策を中心とする学校衛生の担い手として学校看護婦が置かれていた。そして,昭和16年には,児童の養護をつかさどるという,教育的側面のよりより明確な職務を担当する者として学校看護婦に代わり養護訓導が置かれることとなった。この養護訓導が昭和22年制度の学校教育法に規定された養護教諭の前身である。その後,健康教育の必要性が高まるにつれ,養護教諭の役割は,ますます重要になってきている。

 このため,昭和47年には,保健体育審議会がその答申「児童生徒等の健康の保持増進に関する施策について」において,養護教諭は,1)専門的立場からすべての児童生徒の健康及び環境衛生の実態を的確に把握する,2)疾病や情緒障害,体力,栄養に関する問題等心身の健康に問題を持つ児童生徒の個別の指導に当たる,3)健康な児童生徒についても健康の増進に関する指導に当たる,4)一般教員の行う日常の教育活動にも積極的に協力する,などその職務を明確にし,児童生徒の健康の積極的な保持増進を目指す上での極めて重要な役割を持つことを指摘している。

 公立義務教育諸学校における養護教諭については,その役割の重要性にかんがみ,公立義務教育諸学校の学級編制及び教職員定数の標準に関する法律(以下,義務標準法という。)により配置の改善を行っており,平成3年度に完成した第5次教職員定数改善計画により,現在ではほぼ全校への配置が実現している。また,公立高等学校についても,公立義務教育諸学校と同様にほぼ全校配置となっている。

 規則の改正により設置を定め,養護教諭同様,戦前の学校衛生に代わり,積極的に児童生徒の健康の保持増進を図る学校保健における役割を明確にした。また,学校薬剤師については,1年後の昭和29年に,同法施行規則の改正により,その設置を定めた。

 その後,昭和33年に学校保健法が制定されるに及び,学校医,学校歯科医,学校薬剤師の設置が法律に規定されるとともに,同法施行規則において,それぞれの職務の準則が具体的に示された。

 また,学校医,学校歯科医,学校薬剤師については,配置を確保するため,昭和35年度以来地方交付税において報酬を手当てしており,その引上げに努めてきている。


2 学校安全の歩み

 学校安全は,児童生徒が安全について必要な事柄を理解し,これらを日常生活に適用し,常に安全な行動がとれる能力の育成を目指して特別活動や各教科,道徳など学校の教育活動全体を通して行う安全教育と,児童生徒の学校生活が安全に営まれるための施設・設備の安全点検などの安全管理から成る。


(1) 安全教育の歩み

 このうち,安全教育については,昭和22年の「学校体育指導要綱」において,小学校低学年では「病気の予防」,「傷害の防止」を設け,同高学年及び中学校では,これらに「看護法(消毒法を含む)及び救急処置」を加え,安全が教育内容に取り入れられた。

 交通安全指導については,昭和30年の交通事故急増を背景に「交通事故防止について」(文部事務次官通達)によって各学校における交通安全教育の徹底を求めて以後,繰り返し通達を行っている。また,昭和42年には「交通安全指導の手びき」を作成した。なお,昭和47年には「小学校安全指導の手引」を,昭和50年には「中学校安全指導の手引」を作成し,生活安全と交通安全にわたり指導の充実を図った。さらに,特殊法人日本学校安全会(その後統合され,現在は日本体育・学校健康センター)では昭和39年度から機関紙「学校安全」等を出版しているほか,昭和47年度からは更に災害事例集を刊行するなど,学校安全の普及充実を図っている。


(2) 安全管理の歩み

 一方,安全管理については,日常的な施設・設備の安全点検が重要であり,これに関しては,昭和53年の学校保健法改正により,安全点検の計画を策定,実施すること,施設・設備を必要に応じて修繕する等の危険防止対策をとることについて定めた。

 学校における児童生徒の負傷疾病の応急処置は,戦前からの慣行として学校が行い,応急処置以後の医療費についてはそのほとんどが保護者の負担で処理されていた。ところが,戦後,教育現場において集団的災害が相次いで発生し,被災児童生徒の救済問題が社会的関心を呼び起こすに至った。こうした状況の下,学校の管理下における児童生徒の災害については,学校教育が円滑に行われるよう,加害者の故意・過失の有無にかかわらず,これを救済するための団体を各県が設立するようになった。また,救済制度を運営するため国が学校安全会を創設するよう,全国的規模の運動が展開された。こうした動きを背景に,昭和34年に日本学校安全会法が制定され,翌年,特殊法人日本学校安全会(現日本体育・学校健康センター)が設立された。同会は,児童生徒の保護者及び学校の設置者が分担して支払う共済掛金と国庫補助によって賄う互助共済制度として,災害共済給付制度を開始した。給付水準については,同制度の創設以来,逐次改善を行っている。特に昭和52年には,学校事故に関連する訴訟が増加し,学校教育活動が消極的になる傾向が見られたことや,学校関係者からの給付水準改善の強い要望などを背景に,衆議院文教委員会に「学校災害に関する小委員会」が設けられ,学校災害の救済制度の充実について審議が行われた。小委員会の報告の趣旨を踏まえ,昭和53年3月,日本学校安全会法が改正され,災害共済給付制度の抜本的改善が行われた。その内容は,死亡見舞金及び廃疾見舞金(昭和57年から障害見舞金と改称)の大幅引上げ(死亡見舞金300万円→1,200万円,廃疾見舞金の最高額400万円→1,500万円),給付経費への国庫補助金の導入,学校の設置者の損害賠償責任の軽減のための免責の特約制度の新設等である。また,その後も死亡見舞金,障害見舞金の改善に努めてきている。


3 学校給食の歩み

 戦後の学校給食は,昭和29年の学校給食法制定により制度化された。同法では,学校給食の目標,経費の負担区分,国の補助などの事項にわたり,学校給食の普及充実に関する国の方針が明確にされた。その後,給食実施対象の拡大を求める声が強まったことに対応して,昭和31年に学校給食法の一部が改正され,同法の対象範囲が中学校にも拡大されたほか,「夜間課程を置く高等学校における学校給食に関する法律」が制定された。翌年には「盲学校,聾学校及び養護学校の幼稚部及び高等部における学校給食に関する法律」が制定された。また,学校給食の施設・設備及び食物の栄養内容など給食実施にかかわる具体的事項については,「学校給食実施基準」を昭和29年に示した。

 さらに,給食実施校数の増大に対応するため,給食物資の供給組織であった財団法人日本学校給食会(昭和25年設立)の機能を整備し,物資の適正円滑な供給を図ることが必要となった。そこで,昭和30年に「日本学校給食会法」が制定され,新たに特殊法人日本学校給食会(その後統合され,現在は日本体育・学校健康センター)が設立され,学校給食の効率的実施が進められることとなった。

 これらの法律の整備を受けて,学校給食施設・設備の助成,準要保護児童生徒等の学校給食費の援助,学校給食物資供給体制の整備,学校栄養職員の県費負担教職員制度化等の施策を推進した結果,学校給食の実施率は,順調に伸びてきている。また,昭和51年には米飯給食を導入するなど,食事内容の充実にも努めてきている。

 公立義務教育諸学校における学校栄養職員については,昭和39年度から,国が配置促進を援助することとし,市町村に対し給与の2分の1を補助することとした。その後,実際に配置を行う市町村の財政力の違いなどから学校栄養職員の配置状況に著しい不均衡が生じた。このような事情を背景に,昭和49年に学校給食法が改正され,学校栄養職員の位置付けが明確にされた。これに併せ,学校栄養職員の適正な配置を進めることを通じて学校給食の一層の充実を図るため,義務標準法が改正され,学校栄養職員の定数の標準が定められた。これとともに市町村立学校職員給与負担法が改正され,学校栄養職員が校長,教諭等と同様,県費負担教職員として位置付けられるとともに,義務教育費国庫負担法においてその給与費等の2分の1を国が負担することとなり,円滑な配置が図られることとなった。

 学校栄養職員の職務については,昭和49年に「学校栄養職員の服務内容の準則(案)」を示したが,これを更に明確にするため,昭和61年には1)学校給食に関する基本計画への参画,2)栄養管理,3)学校給食指導,4)衛生管理,5)検査,6)物資管理,7)調査研究所等の具体的な内容を通知した。

 これらの措置により,学校教育の一環として実施される学校給食に携わる学校栄養職員の役割等を明確にした。また,その定数については,義務標準法の定めるところにより,計画的に改善を図ってきている。


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