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1編 スポーツと健康
第2部 健康教育の充実
第1章 健康教育の充実
第2節 近年の社会環境の変化と健康教育の必要性



1 社会環境の変化による児童生徒の体格及び健康への影響

 戦後の我が国の急速な経済発展は,国民所得の増大をもたらし,生活水準を向上させた。そして,食生活の改善によって,児童生徒の身長,体重など体格は著しく向上した。また,医療技術の進歩と公衆衛生の普及は,食生活の改善とあいまって,戦前から被患率の高かった結核やトラコーマなどの感染症を急減させた。

 一方,その間,都市化,情報化,核家族化,少子化等が進み,児童生徒を取り巻く生活環境・生活様式が大きく変貌してきている。

都市化,情報化の進展は,遊び場や自然との触れ合いの機会の減少による児童生徒の日常生活における身体的活動の低下や精神的負担の増大をもたらすなど,児童生徒の心身の健全な発達に大きな影響を与えている。

 また,核家族化,少子化などの家庭環境の変化は,世代間交流や異年齢間による切磋琢磨の機会の減少等をもたらしており,健康な生活を送るための基本的生活習慣の確立に影響を及ぼしている。


2 児童生徒の健康状態
(1) 体格と体力の変化

 こうした,生活環境・生活様式の変化による児童生徒の体格への影響は,「学校保健統計調査」に顕著に表われている。

 我が国における児童生徒の体格の測定値に関する調査は,明治33年に「学生生徒身体検査規定」により始められて以来,今日の指定統計第15号「学校保健統計調査」に至るまで91年にも及ぶ長い歴史を持ち,世界にまれな貴重な資料である。

 本調査結果によると,男女とも全体として身長・体重・胸囲・座高のいずれもが増えてきており,幾つかの学年で過去最高となっている (表1-2-1) 。親の世代である30年前(昭和36年)と比較すると,特に男子の中学3年で差が著しく,身長が9.3cm高く,体重が9.1kg重くなっている (図1-2-1 ,2) 。なお,座高についてはあまり伸びていないことから,身長の伸びは足の長さの伸びによっていることが分かる。

1-2-1  年齢別 身長・体重・胸囲・座高の全国平均値

1-2-1  身長の男女別推移

1-2-2  体重の男女別推移

 「国民栄養調査」(厚生省実施)によって,エネルギーとたん白質の食品群別摂取構成の推移を見ると,動物性食品の増加等顕著な変化が見られる。このような食生活の変化及び生活活動の変化を背景に児童生徒の体格が向上したと考えられる。

 一方、児童生徒の体力について見てみると、敏捷性、瞬発力、筋力、持久力,柔軟性の五つの体力の要素を点数化して合計した体力診断テストでは,一部の例外を除き,体力が緩やかな低下傾向を示していることが分かる (図1-2-3) 。この背景には,都市化,情報化等による生活環境,生活様式の変化,具体的には運動不足などの要因があるものと考えられる。このため,文部省では第1部第2章第5節で記述した通り,青少年のスポーツ振興方策の充実に努めている。

1-2-3  体力診断テスト合計点(10年間推移)


(2) 疾病構造の変化

 食生活や生活行動の変化は,著しい疾病構造の変化をもたらしたと指摘されている。特に戦前被患率の高かった結核,トラコーマなどの感染症は,著しい減少を見せている (表1-2-2) 。今日の結核の被患率は,以前に比べると格段に減少しているほか,トラコーマについても,今日では被患率がほとんどゼロの状態になっている。

 一方,これらの感染症に代わり,う歯(むし歯),近視,鼻いん頭炎,肥満傾向などが児童生徒等の間で重要な問題となってきている (表1-2-2)

 う歯の被患率は,終戦後間もない40年前(昭和26年度)においては,4〜5割であったが,30年前(昭和36年度)になると食生活の変化等に伴い8割前後に急増し,10年前(昭和56年度)には95%前後に達した。しかし,ここ数年においてはむし歯予防の普及等により,う歯の被患率はやや減少傾向にある。

 視力については,近年,その低下が目立っており,裸眼視力1.0未満の者の割合は,小・中・高等学校を通じて著しく増加している。

 鼻いん頭炎及び肥満傾向児(学校医から肥満と判定された者)の割合は,おおむね増加傾向にあり,特に小学校における肥満傾向児は,10年前と比べ2倍近い割合となっている。

1-2-2 主な疾病・異常の推移


3 健康状況の変化と健康教育

 こうした児童生徒の健康状況の変化に伴い,感染症等に対する疾病対策としての健康教育ではなく,疾病異常の早期発見はもちろんのこと,複雑・多様化している心身の健康問題に幅広く,かつ,より積極的に取り組み,児童生徒の心身の健康の保持増進を図っていくための健康教育が必要になっている。

 殊に,近年,喫煙・飲酒・薬物乱用や中絶・エイズなど性にかかわる問題が重要になっており,これらへの積極的な取組が求められている。心身の健康の増進を図っていくためには,若年期から健康づくりに配慮して食生活,生活行動等のライフスタイルを維持・改善することが重要である。そのためには,児童生徒に,科学的な心身の知識について理解させるとともに,人生の基盤となる健康についての認識を深め,実際の生活に生かす教育・指導が重要である。また,長寿社会の進展に伴い,生涯の各時期を通じた国民の健康の確保が重要な課題となっている今日においては,学齢期において自ら健康を保持増進する能力を培うとともに,人生80年時代のライフサイクルに即して,生涯にわたり健康・安全で幸福な生活を送ることができるような健康教育を推進していくことが必要不可欠となっている。


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